干潟星雲と三裂星雲

いて座の干潟星雲と三裂星雲 M8 M20

いて座に位置する干潟星雲(M8)と三裂星雲(M20)付近は、夏の天の川のハイライト星域です。 M8、M20共に明るく、口径3センチ程度の双眼鏡でも良く見えます。 口径の大きな天体望遠鏡で観望すれば、星雲の濃淡までわかり、興味が尽きません。 天体写真の被写体としても人気があり、私自身、夏の天の川のシーズンになると、何度でも撮りたくなる対象です。

干潟星雲と三裂星雲の撮影には、口径55ミリの小型屈折望遠鏡「ビクセン FL55SS」を用いました。 FL55SSはコンパクトな天体望遠鏡ですが、天体撮影用のフラットナーレンズやレデューサーレンズが用意されており、 本格的な天体撮影が楽しめる鏡筒です。 今回はフラットナーHD for FL55SSとレデューサーHD 5.5を使用し、 焦点距離237ミリ(F4.3)で撮影しました。

撮影に使用した冷却CMOSカメラは、ソニー製のIMX571カラーCMOSセンサーが用いられたZWO ASI2600MC Proです。 撮影時は、カメラのゲインを0に設定し、600秒露光で撮影しました。 露光時間を長く設定したので、高輝度部分が飽和するかどうか心配でしたが、 M8の中心部も白飛びせず、カメラのダイナミックレンジの広さを感じました。

ASI2600MC Proに用いられているCMOSセンサーは、APS-Cサイズですので、35ミリフルサイズに換算すると、 360ミリ程度の画角になります。 APS-Cサイズの冷却CMOSカメラは、35ミリフルサイズと比べて画角は狭くなるものの、 センサーが光学系の良像範囲に収まり、周辺減光も緩和されるのがメリットです。

ASI2600MC Proのピクセルサイズは3.75μmと、 ニコンD810A(4.88μm)よりも小さいので、得られた画像の解像感が高く、星雲のディテールが良く表現できていました。 また、モノクロセンサ搭載の冷却CMOSカメラと比べ、LRGB毎の撮影が不要なのも楽でした。 カラーセンサーの冷却CMOSカメラは、夜が短く、気温の高い夏場の天体撮影に向いていると感じました。


Imaging information

撮影光学系:ビクセン FL55SS、フラットナーHD for FL55SS、レデューサーHD5.5 使用

撮影カメラ:ZWO ASI2600MC Pro 冷却CMOSカメラ

赤道儀:ビクセン AP-WM赤道儀にてオートガイド追尾撮影

カメラの設定:センサー温度 -10℃、ゲイン 0、オフセット 50、1×1ビニング

露出時間:600秒×8コマ

画像処理ソフト:PixInsight、PhotoshopCC 2020

撮影場所:奈良県五條市大塔村、2021年撮影