天文や星空の基礎知識
星空や宇宙にまつわる話題は広く、宇宙誕生を探る科学から古代から伝わる神話へと様々です。 そんな話題を全て覚えるのは大変ですが、星を見るときちょっと知っておくと便利な天文の基礎知識があります。 このページでは、天文の雑学とも呼べる話題を綴っています。
星座の数と起源は?
全天の星座の数は88個で、世界共通です。 これは、1928年に国際天文学連合が定めました。 これでどの天体も必ずどれか一つの星座に属するようになりました。
星座の起源は、メソポタミア文明の頃と言われています。 古代バビロニアの頃に作られた粘土板には、さそり座などの星座が刻まれていました。 この後、星座はギリシアへと渡り、プトレマイオスが48の星座としてまとめました。
その後大航海時代に入ると、小さな星座がたくさん作られるようになり、星座の数が増えていきます。 個人が自分の権力を誇示するためにも星座は作られいたようで、星空は混乱状態になってしまいました。 これでは天体観測の障害になりますので、天文学連合が88星座と定めたわけです。
星の日周運動とは?
地球が自転しているため、夜空で輝く星は動いて見えます。 地球の自転速度は、毎時1660キロ程度ととても速い速度で地軸を中心にして回っています。 ジェット機より速く回っているわけです。
地球に住む私たちが星を見ると、星は東から昇って西に沈んでいくように見えます。 こうした回転運動のことを、日周運動と呼んでいます。 地球が自転軸を中心に回転しているので、星も北極と南極を中心に回転しているように見えます。 この二つの点を、「天の北極」「天の南極」と呼んでいます。
星は一日に天球を一周しますから、1時間に15度の角度で回転していることになります。
見える星座が季節でなぜ違う?
地球が太陽の周りを公転しているからです。 公転速度は、時速約10万キロ。想像もできないほどのハイスピードですね。
星空は、太陽の光が当たらない夜側でしか見えません。 地球は太陽の周りを公転していますから、地球の位置によって、夜になる向きが変わってくるのがわかります。 この夜の向きにある星座しか見えないというわけです。
地球は一年をかけて太陽の周りを一周しますから、一年経つと見える星座が一巡します。 1年後の同時刻に星空を見上げると、1年前と同じ星座が広がっているというわけです。 このような星座の1年の動きを、年周運動と呼ぶことがあります。
星が何等星ってどういうこと?
星の明るさはそれぞれ異なっているので、その明るさの尺土として等級を用いています。 ギリシアの天文学者ヒッパルコスは、星の明るさを1等級から6等級の段階で表しました。 最も明るい星が1等星。肉眼で見える最も暗い星を6等星と定めました。
天体望遠鏡が開発されて、6等星よりもずっと暗い星が観察できるようになりました。 それと共に、星の明るさを正確に測定できるようになったので、もっと広くより細かく星の明るさを表せるようになりました。 1等星より明るい星は、0等星、マイナス1等星とマイナスになっていきます。 逆に6等星より暗い星は、7等星、8等星と数字が増えていきます。
1等級と6等級では、光の量が約100倍違います。 1等級違うと約2.5の明るさの差があります。 例えば、こと座のベガは0等星です。1等星のおとめ座のスピカよりも、約2.5倍明るく輝いていることになります。
絶対等級って何?
地球から夜空で輝く星までの距離は、星によって違っています。 そのため、地球から見える明るさを示す「等級」という尺度は、星の本当の明るさと言えません。 そこで本当の明るさを比べるために、星をある距離(32.6光年)に置いたときの明るさを絶対等級と呼んでいます。
例えば、夜空で最も明るく輝く恒星のシリウスはマイナス1.5等星ですが、絶対等級にすると1.5等星になってしまいます。 一方、はくちょう座の一等星デネブは、遠くで輝いているため、絶対等級で表すとマイナス7.2等星となります。 こうして絶対等級を調べてみると、見かけの明るさが本当の星の明るさではないことがわかります。
星の色が違うのはなぜ?
星空をよく観察すると、星によって色が微妙に異なっていることがわかります。 オリオン座のベテルギウスはオレンジ色に、リゲルは青白色に見えると思います。
これは星の表面の温度が異なるためです。 表面温度が高い星は青白く、温度が低い星は赤っぽく輝きます。
なぜ温度が高いと青白い光を発するかと言えば、温度が高くなると星を構成する原子の動きが激しくなり、振動数が増すからです。 もともと光は波の性質を持っています。 波長の短い光(振動数の高い波)は青白く、波長が長くなると赤っぽくなります。 つまり、星が高温だと振動数が高いので、出てくる光も青っぽくなると言うわけです。
変光星や二重星って何?
変光星はその名の通り、周期的に明るさが変わる星です。 明るさが変わる原因は様々で、星自体が膨張したりして変光する星を「脈動変光星」と呼んでいます。 この脈動変光星の代表として有名なのが、くじら座のミラです。 ミラは明るいときは2等星前後ですが、暗くなると肉眼では見えなくなるほど明るさが変わります。
この脈動変光星の他にも、二つの星が回転しながら見かけ上の明るさが変わる「食変光星」など、 いろいろな種類の変光星があります。定期的に観測してみると面白いかもしれません。
二つの星が接近して見える星を二重星と呼んでいます。 二重星には、たまたま地球から近づいて見えるだけの見かけの二重星と、 実際に接近している二重星があります。
赤経と赤緯とは?
地図上で特定の場所を示す場合には、東経135度、北緯35度というように、経度と緯度を使って表します。 同様に星の位置を表すのに使うのが、赤経と赤緯というわけです。
地上から見える星々は、天球という架空の丸い天井に張り付いていると考えます。 この天球に地球儀と同じように経度と緯度の線を引いたものが、赤経と赤緯になります。
赤緯は、地球儀の緯度のようなもので、天の赤道を0度とし、それから天の北極方向に動くとプラスに、 天の南極方向に動くとマイナスになります。 赤経は、春分点という基準点を0時として、そこから東回りに15度増えるごとに1時間増えていきます。 つまり赤緯とは天球の一周360度を24時間で割ったものといえます。
分かりづらいかもしれませんが、慣れるとそれほど難しいことではありません。 この赤経と赤緯を使うと、全ての天体の位置を表すことが出来ます。
惑星は星座を移動する
夜空で輝く恒星は、ほとんど位置を変えないので、星座の形は変化することはありません。 しかし、星空をよく観察すると、その星座の中を移動していく星があります。 惑星です。
惑星は地球と同じように太陽の周りを公転しているので、その時の地球との位置関係によって、 見える方向が変わってきます。 そのため、見かけ上、星座の中を少しずつ移動していくように見えます。 と言っても、そんなに大きく動きませんので、一日や二日後ならほぼ同じ位置に見えています。 地球から遠い星ほどその移動量は少なくなります。
また、内惑星(水星や金星)は、太陽の近くにいつも位置しているので、 日の出前や日の入り前の僅かな時間しかみることができません。 外惑星(地球より外側の惑星)と違って、内惑星は真夜中には見ることができないのです。
一番星は何?
夕焼けの中の帰り道、西の空を見るとひときわ明るく輝く星に気づくことがあります。 この明るい一番星は、たいていの場合、金星です。 金星はマイナス4等級と、太陽と月に次いで明るいのでよく目立ちます。
この夕方の空に見える金星のことを「宵の明星」と呼んでいます。 また、明け方の東の空に見えるときは、「明けの明星」と言います。
金星は時によって、夕暮れの西空に見える時期と、明け方の西空に見えるときがありますので、 一番星がいつも金星とは限りません。 ひょっとしたら、あなたが見た一番星は、木星かも知れません。 明るい一番星を見つけたときは、星座アプリなどを使って確かめてみてはいかがでしょう。
金星が満ち欠けするってほんと?
月が満ち欠けするのはよく知られていますが、金星や水星も満ち欠けしています。 と言っても、肉眼ではわからず、天体望遠鏡を使って拡大して見てはじめてわかります。
惑星は自ら輝いているのではなく、太陽の光を反射して光っています。 惑星は太陽の周りを回っているので、その位置によって、光りを浴びる部分が変わってきます。 これを地球から観察すると、満ち欠けして見えるというわけです。
特に内惑星の水星や金星は満ち欠けの度合いが大きく、月のように移り変わります。 火星も、よく観察すると満ち欠けしているのがわかります。 地球から遠い木星や土星になると、満ち欠けはほとんどわからず、いつもほぼ同じ姿を見せてくれます。
水星の観察は難しい
太陽のすぐ近くを回っている水星は、いつも太陽の近くにいるので、なかなか観測するチャンスがありません。 そのため、探査機が1970年代に初めて到着するまで、水星のことはよくわかっていませんでした。
探査機が送ってきた画像を見ると、水星の表面は月のようなクレーターで覆われています。 大気はほとんどなく、太陽からの強烈な熱を浴び続けています。 そのため、昼間は400度を超える灼熱の世界となり、夜は大気による保温が行われないので、マイナス200度近い極寒の世界です。 とてつもない過酷な環境ですね。
水星の大きさは、地球の5分の2程度。 冥王星が惑星から外されて以来、太陽系で最も小さい惑星です。 公転周期は88日と短いにも関わらず、自転周期は176日と非常に長くなっています。 水星にもし立ったら、日の出から日の入りよりも一年の方が短いわけです。
地球にだけ生命が誕生したのはなぜ?
生命が育まれるために最も必要なものは、水です。 その豊かな水をたたえているから、地球は生命があふれています。
太陽系を見渡してみると、地球は絶妙の位置で太陽の周りを公転していることがわかります。 水星や金星の位置だと、太陽に近すぎて水は蒸発してしまいます。 火星軌道だと今度は遠すぎて、水は液体として存在できなかったでしょう。
また、太陽系最大の惑星である木星が地球の外を公転しているのも地球にとっては好都合です。 宇宙には岩石でできた小惑星やゴミが存在しています。 それが地球に落ちてきたら、生命絶滅の危機があります。 しかし、木星がその強い重力でそうしたゴミを集め、地球に落ちる危険性を下げてくれています。
月の存在も忘れてはなりません。 地球のサイズに比べると、月は大きな衛星ですが、この月の引力のお陰で海に満ち引きが生じ、 生命を作り出しています。 これらのことを考慮すると、地球が生まれたのは奇跡とも言えるかもしれません。
世界初の人工衛星は?
スプートニク1号が世界初の人工衛星です。 ソビエト連邦が1957年10月4日に打ち上げ成功した人工衛星です。
現在の人工衛星と比べるとスプートニク1号の構造は単純でした。 アルミニウムの球体からできた本体は、58センチほどの大きさで、重さは84キロほどしかありませんでした。 特に観測機器などは積んでおらず、衛星を軌道上に載せたことを知らせるための、ラジオ信号を送る装置がつけられているだけでした。
しかし、この小さなスプートニク1号の打ち上げ成功は、世界の考え方を一新しました。 世界各国でスプートニク・クライシスという現象が起こったほどです。 現在、私たちが便利に暮らせているのも、こうした人工衛星の成功がなければ成り立たないものです。 なお、スプートニク1号は、打ち上げから約90日後に大気圏突入し、燃え尽きました。
世界初の宇宙飛行士は誰?
ソビエト連邦のユーリィ・ガガーリン氏です。 1961年4月12日にソビエト連邦が、ガガーリン氏による発の有人宇宙ロケット発射に成功したと報道しました。
初の人工衛星が打ち上げられて以来、ソ連とアメリカは、どちらが先に有人宇宙ロケット発射できるかを争ってきました。 当時、ソ連のロケットはパワフルでしたが、アメリカには人を打ち上げるほどの推進力があるロケットはありませんでした。 どちらも犬や猫を使って、ロケット発射を繰り返し、実験を行っていました。
ソビエト連邦は秘密主義でロケット開発を行っていましたから、アメリカはニュース発表までガガーリン氏が宇宙に飛び立ったことを 知りませんでした。きっとニュースを聞いたアメリカは、驚きと悔しさで一杯だったでしょう。
なお、ガガーリン氏の成功した約1ヶ月後に、アメリカは有人ロケット発射を成功させます。 アメリカ初の宇宙飛行士は、アラン・シェパード氏でした。