予算で選ぶ天体望遠鏡
星空に興味を持ち始めたら、誰しも一度は「天体望遠鏡が欲しい病」になります。 初めはスペックをインターネット上で調べる程度ですが、だんだんと病は進行します。 望遠鏡販売店に出かけて店員を質問攻め、カタログスペックは全て記憶しているとなると末期症状です。 天体望遠鏡を買うしか病気を治す方法はありません。
といっても天体望遠鏡の種類は多く、それこそ星の数ほどあります。 そこで、いろいろな方からいただいた質問を元に、天体望遠鏡の選ぶポイントを予算別にまとめました。
予算5万円コース
5万円と言えば、小学生や中学生でもお小遣いやお年玉を貯めれば、実現できる予算です。 ここでは中学生の気持ちになって、天体望遠鏡を探してみましょう。
やっぱり双眼鏡はいい
いきなり天体望遠鏡ではない双眼鏡の登場ですが、よい双眼鏡は一生使えるものです。安物買いの銭失いに なりたくなければ、5万円で思い切って高級双眼鏡を買うのがお勧めです。 それに星空を身近に楽しむなら、双眼鏡ほど楽しいアイテムはありません。都会だと活躍の場が狭くなりますが、 満天の星空をクルーズするなら双眼鏡は是非とも用意しておきたいアイテムです。
5万円の予算があれば、マニアにも人気のあるニコンやフジノンといった信頼のおけるブランド双眼鏡を購入できます。 具体的には、ニコンのアクションEX8x40CFが2万前半。フジノンの7x50MT−SXが3万円半ばです。 こうした双眼鏡はずっしり重いので、余った予算で双眼鏡を支える三脚を買うのもよいでしょう。 もう少し予算に余裕があるなら、フィールドフラットナーが入ったフジノン10x50FMT−SX等が お勧めです。
ビクセンポルタも買える
初心者に人気のビクセンポルタシリーズも5万円あれば購入できます。 お勧めは口径8センチのタイプ。ポルタは最近ポルタIIになり、ミニポルタという廉価版が登場しました。 ミニポルタの方が安いですが、できれば架台がしっかりしたポルタIIがお勧めです。 天体望遠鏡を支える架台がグラグラ揺れていては、高倍率で月を観察しているときにイライラしてしまいます。
自動導入架台が買えてしまう
自動導入というのは、コンピューター制御されたモーターを使って、自動で主な天体視野に入れてくれる機能です。 最近ではこうした機能が付いた架台を、5万円前後で買えてしまいます。エレクトロニクス進化のたまものですね。
この自動導入望遠鏡で人気があるのは、ミードETX-80ATという機種です。販売価格はちょうど5万円程度です。 経緯台式という架台に濃いブルー色の天体望遠鏡が載っていて、なかなかしゃれた天体望遠鏡です。 天体望遠鏡の口径自体は8センチでなかなかのもの。ただし望遠鏡の明るさが明るいため、色収差は 大きく出てしまいます。惑星や月を見るならポルタの方がすっきり見えます。星雲や星団を手軽に見たい人向けです。
天体写真が撮りたいなら
中学生ぐらいになると、デジカメなどを使って写真を撮りたくなります。私も中学生の時は、自転車に カメラを積んで、近くの山で星の写真を撮っていました。新しいことにチャレンジしたくなる年頃ですよね。
5万円の予算だと、写真撮影に使える高性能天体望遠鏡は無理です。持っているデジタルカメラとカメラレンズを使って、星空を撮ることを考えましょう。 そうなると必要になるのが、星を追いかける装置「赤道儀(せきどうぎ)」です。 赤道儀と言っても大型のものは高いですから、カメラとレンズが載るタイプを選びましょう。 こういった赤道儀は「ポータブル赤道儀」略して「ポタ赤」と呼ばれています。
天体望遠鏡老舗メーカーのタカハシからは、TG−SDスカイポートという小さな赤道儀が販売されています。 三脚が別に必要ですが、この大きさなら旅行バックに簡単に忍ばせていけるでしょう。
ビクセンからは、三脚やキャリングバックまで付属した、GP2ガイドパックが販売されています。 こちらは6万円強と少し予算オーバーですが、この手のタイプの中で人気があります。 ビクセンGP2赤道儀の極軸を流用した機種ですから、強度も十分でガイド精度は高いポタ赤です。
最近同じビクセンからポラリエというコンパクトな簡易赤道儀が発売されました。こちらは赤道儀とは思えない形状をしていて、 カメラバックの中に簡単に収納してどこにでも持って行けそうです。価格はちょうど5万円ほど。 まだ発売されたばかりで使い勝手はわかりませんが、新しい可能性を秘めたポータブル赤道儀と言えます。
ポタ赤の定番と呼ばれているのが、ケンコーのスカイメモRです。これまでに何回もモデルチェンジを 繰り返してきた人気モデルです。精度や強度は問題ありませんが、本体が7万円弱と高くて少し予算オーバーです。 こちらも本体とは別に、丈夫な三脚が必要となってしまいます。
どかんと大口径で眺める宇宙
中学生の頃は大人への憧れもあって、大きな天体望遠鏡で星空を眺めてみたいなぁと思うものです。 でも天体望遠鏡の値段は、口径が大きくなるとグンと高くなってしまい予算オーバーです。
しかし観望専用に開発されたドブソニアンなら、予算5万円でも口径20センチのモデルが 買えてしまいます。ドブソニアンとは、アメリカのドブソンさんが作った望遠鏡で、簡単な台に 望遠鏡が載っただけのシンプルな天体望遠鏡です。アメリカンな星空ウォッチングスタイルですね。
予算5万円で購入できるドブソニアンは、国際光器が販売しているマゼランWHITEY DOB20
センチモデルです。20センチが5万円以下ということで、人気があるドブソニアンです。
口径20センチでF6という無理のないスペックが功を奏して、見え味も良いモデルです。
※現在販売休止のようです。
こうした大口径ドブソニアンは、星空の綺麗なところで使ってこそ真価を発揮します。 都会にお住まいだともったいない望遠鏡です。また大きさも相当ありますから、それらの点を 確認してから購入するのがよいでしょう。
5万円あれば
あらためて考えてみると、5万円あれば初心者用の機種がいろいろ買えることがわかります。 お父さんの一ヶ月の小遣い+αで、天体観測の世界が広がります。コストパフォーマンスが 優れているのが、この値段帯の特徴ですね。
予算20万円コース
大学生になればバイトに明け暮れる毎日です。アルバイトの時給も不景気で下がる一方ですが、 20万円くらいならなんとか貯められるでしょう。20万円持って天体望遠鏡販売店に突撃です。
20万円あるといろいろ買える
20万円の予算があると、各メーカーの中級と呼ばれる機種がターゲットになってきます。 天体望遠鏡メーカーも力を入れている価格帯なので、目移りするほどの機種があります。 天体望遠鏡と架台を組み合わせれば、自分だけのオリジナルセットもできてしまいます。 逆に言えば、買う前に天体望遠鏡を買って何を見たいか、何をしたいか等を、事前にしっかり考えておく必要があります。
ドカーンと大口径で宇宙の世界
満天の星空の下で、大きな望遠鏡を振り回していろいろな天体を観察する、というのは天文ファンの憧れです。 こうしたことを実現してくれるのが、ドブソニアンという観望専用の天体望遠鏡です。 アメリカンな星空ウォッチングスタイルですね。
20万円も予算があれば、大口径の30センチモデルが買えます。 国際光器が販売しているマゼランWHITEY DOBの30センチモデルは10万円前後です。 予算の半分ぐらいお釣りがくるので、これで高性能アイピースを買いましょう。 アイピースがないと観望できませんから、余ったお金で飲みに行かないように注意です。
笠井トレーディングが発売している、GINJI-250Dは25センチのドブソニアンです。 価格は9万円前後ですから、こちらもアイピースなどのアクセサリーを購入する余裕が十分あります。 25センチと口径がホワイトドブに比べて少し小さい分、取り回しがしやすいでしょう。 なお、25〜30センチドブソニアンは相当大きいですから、一度は実物を見ておきたいところです。 家に段ボールが届くとその大きさにびっくりしますよ。
ビクセンの望遠鏡セットは無難な選択
赤道儀と鏡筒をセットにした、天体望遠鏡セットが各社から販売されています。 中でもビクセンはラインナップが豊富で、20万円前後のモデルがたくさんあります。 この予算内なら、GP2やGPD2赤道儀とセットになった機種が対象です。
アクロマートの屈折望遠鏡なら口径10センチ程度、反射望遠鏡なら20センチまでのモデルが20万円前後で購入できます。 口径8センチのアクロマート屈折とGP2赤道儀のセットなら、10万円以下で購入することができます。 このセットにはモーターや極軸望遠鏡が含まれていないので、余った予算でそれらを購入すれば、ちょうどよいでしょう。
天体写真を今後本格的に撮ろうと思っているなら、赤道儀は強度の高いGPD2タイプがよいでしょう。 こちらとEDレンズを使った8センチ屈折望遠鏡とのセットは、実売で21万円前後と予算オーバーですが、長く使えるモデルです。 なお、赤道儀を今回初めて購入する場合は、販売店などで実機を確認しておくのをお勧めします。 実機を触れば、使いこなせるかどうかわかると思います。
ケンコーのスカイエクスプローラーで本格天体写真
昔から定評ある天体写真撮影の望遠鏡と言えば、高橋製作所の製品です。 しかし、タカハシの望遠鏡は非常に高価で、予算20万円でもなかなか厳しいものがあります。 そんなときに考えたいのが、ケンコーのスカイエクスプローラーシリーズです。
ケンコーのスカイエクスプローラーSII赤道儀は、自動導入機能が付いた赤道儀で天体写真ファンにも人気があるモデルです。 極軸望遠鏡の設定が事前に必要など、日本製の赤道儀とは違って作りに雑な面がありますが、 モーターにはパワフルなステッピングモーターが使われていて実用的な赤道儀です。 自分で調整できる方には魅力的な機材です。
赤道儀本体の価格は、実勢価格で12万円強。ED80センチ屈折望遠鏡とのセットが17万円前後で販売されています。 これなら予算20万円の方にぴったりです。なお、スカイエクスプローラーSIIの上位モデルとして、Sky Explorer EQ6PRO赤道儀もあります。
※2012年にスカイエクスプローラー赤道儀は値上げされました。
ハイテク機能で宇宙散歩
自動導入機能を使って、天体を次々と観望したいなら、ハイテク装備満載の経緯台式赤道儀がよいでしょう。 代表的な機種として、ミード社のLT-20ACFがあります。
この望遠鏡セットに付いてくる鏡筒は、口径20センチのシュミットカセグレン式です。 20センチの口径があれば、惑星や月だけでなく、春の銀河の観望も楽しめます。 オートスターというコントローラーを使えば、望遠鏡が自動的に目標天体を捉えてくれるハイテク望遠鏡です (※アライメントという作業は必要です)
ややこしいことは嫌だけど、星空は望遠鏡で観察したいという人にお勧めです。 販売価格は実売でおよそ17万円前後。他にも液晶モニターが取り付けられた、高級バージョンも用意されています。
ところで、機種によっては自動導入時のモーター音が非常に大きいことがあるので、事前に確認しておきましょう。 マンションのベランダで夜中に使うと、近所迷惑になるかもしれません。
望遠鏡販売店のオリジナルセットはお買い得
天体望遠鏡の販売店には、望遠鏡と架台で異なるメーカーを組み合わせたオリジナルセットが販売されています。 こうしたセットは魅力的で、別々に買うよりも割安になっていることが多いものです。 このようなセット販売を狙ってみてもよいでしょう。
例えば、20センチクラスのシュミカセとビクセンの赤道儀セットがよく販売されています。 20センチあれば、銀河や星団の観望を楽しめます。 また、赤道儀を持っておけば、今後望遠レンズや天体望遠鏡を使った撮影を楽しめるというわけです。
こうしたオリジナルセットは、販売店のホームページで紹介されています。 店舗に訪れれば、実機に触りながら店員さんに使い方を尋ねられるのも魅力でしょう。
予算20万円は目的をしっかりと
20万円の予算があると、ここに上げた以外にも様々な機種が予算内になってきます。 決して安い買い物ではありませんから、目的意識を持って、長く付き合える製品を購入してはいかがでしょうか。