ミザール 天体望遠鏡の特徴
使用者から見た天体望遠鏡各メーカーの特徴を書いたページです。 作者の見解や印象も多分に入っていますので、軽い気持ちで読んでいただければ幸いです。
ミザール 天体望遠鏡
ミザール 天体望遠鏡は、株式会社ミザールテックが製造・販売している天体望遠鏡の名称で、 「MIZAR」のロゴマークでよく知られています。
昔、株式会社ミザールテックは、日野金属産業株式会社という名称でした。 昭和30年頃から一般向けの天体望遠鏡を製造して、1980年代には、 天体望遠鏡メーカーとして人気を博していました。
ミザール望遠鏡は、高度成長時代の頃は天文ファンに人気があり、ベストセラー機を次々に世に送り出していました。 特に10センチの反射赤道儀のミザールH-100型は、発売当時とても人気があったと聞いています。 その後もカイザー型屈折望遠鏡シリーズや、ミザールCX150という望遠鏡を発売して、 日本の天体望遠鏡メーカーの確固たる地位を築きました。
私自身も右上のミザールLX-130SLという反射赤道儀を、長い期間、愛用していました。 私がこの天体望遠鏡を購入した頃は、ミザールはビクセンと熾烈な販売競争の真っ最中でした。 ちょうど夜空にハレー彗星がやって来た頃でした。
ミザールとビクセンの熾烈なシェア争い
ハレー彗星が来る少し前、株式会社ビクセンは、エレクトロニクスを上手く赤道儀に取り入れた、 マイコンスカイセンサー(モータードライブコントローラー)を発表します。 赤道儀の自動導入化の始まりです。
それに負けじとミザールが開発したのが、私の使っていたミザールRV-85赤道儀です。 当時としては画期的な、光学式エンコーダーを搭載したコントローラーCC-01を、オプションで選ぶことができました。
しかし残念なことに、このミザールのコントローラーCC-01は、価格が10万円以上と高価だったため、 ユーザーからの支持を得られませんでした。 実際、私も購入できず、結局、2万円ほどの通常タイプのモータードライブをずっと愛用していました。 一方、ビクセンは、ブラック色のスカイセンサー2を44,800円という価格で発売して、 望遠鏡市場のシェアをどんどん広げていきます。
当時、ハレー彗星の再帰ブームで、天体望遠鏡業界が注目されていただけに、 この商品開発の差は一消費者の目から見ても大きなものでした。 ミザールは、せっかくのシェア拡大のチャンスを逃した格好になったと思います。
ミザール望遠鏡のその後
ハレー彗星が来て望遠鏡特需で市場が沸いていた頃、私は中学生でした。 それまで私は、口径の小さなビクセン望遠鏡を使っていましたが、 ハレー彗星の回帰を機に、なんとか新しい機種を購入したいと数年計画で機種を探していました。 そして最後に目に止まったのが、ミザール望遠鏡でした。
この頃のミザールとビクセンは、中学生の私の目から見ても、ライバル関係にあるようにみえました。 どちらも同じ位の価格帯で、同じようなスペックの望遠鏡を次々に発売していたので、 購入する直前まで、どちらのメーカーの製品にしようかと悩んだのを覚えています。
もちろん、ミザールやビクセン以外のメーカーも天体望遠鏡を製造販売していました。 今でも人気の高い高橋製作所からは、とても魅力的な天体望遠鏡も販売されていましたが、 これらは非常に高価で、中学生では全く手が届かない価格帯の夢の望遠鏡でした。
同じようなスペックで、同じ販売層に向けて商品を開発していると、 商品開発やマーケティングの適切なスケジュール管理が最終的な業績に直結します。 ハレー彗星回帰という一大ブームに合わせて、安価なスカイセンサーを供給したビクセンに比べ、 ミザールは全てが後手に回ってしまったと思います。
次世代赤道儀と自ら名付けたミザールRV-85赤道儀ですが、発売開始が遅れてしまって、販売数は伸びなかったようです。 ハレー彗星が去ってしらばくすると、RVシリーズの製造は中止され、 ラインナップに残ったのは、一つ前のモデルのAR赤道儀のみになってしまいました。 私はハレー彗星が去ってからもRV-85赤道儀を使い続けていたので、なんだかやりきれない気持ちになりました。
ミザールは、この後、SDレンズを使用した高性能屈折望遠鏡や、高精度なEX型赤道儀を発表しました。 しかし、ハレーブームも去り、市場受けはあまりよくなかったようです。
今ではミザール望遠鏡は、大口径のアクロマート望遠鏡やパーツを安価に供給し、ある程度の人気を得ています。 もちろん天体望遠鏡セットも販売されていますが、どちらかというと初心者用の機種ばかりです。 元ユーザーとして、ミザール望遠鏡には頑張って欲しいところです。 ミザール望遠鏡が、昔のように望遠鏡市場をまた沸かしてくれることを願っています。