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デジスコとデジカメ

デジスコというのは造語で、デジカメと望遠鏡(スコープ)を使って撮影することを指しています。 天体望遠鏡とデジカメを使って、月や星を撮影するのもデジスコの一種に入るかもしれませんが、 一般的デジスコと言えば、フィールドスコープとコンパクトデジカメを使って、野鳥などを撮影する 手法のことを表しています。

ここでは、そのようなデジスコの手法や、デジスコ撮影に使うデジカメについて簡単に説明しています。 こうしたデジスコ撮影の知識は、天体望遠鏡を使った月などの撮影にも生かせます。


デジスコの撮影方法

フィールドスコープ デジスコの撮影方法は、天体写真の世界の言葉で表すと、コリメート撮影方法になります。 コリメート撮影方法とは、対物レンズでできた像を接眼レンズで拡大し、その拡大像を撮影する方法です。 例えば人間が望遠鏡で月を見ているとします。 その眼の代わりにデジカメのレンズを、接眼レンズにくっつけて撮影する方法です。

このデジスコ撮影のメリットは、手軽に超望遠の世界で撮影できることです。 普通のデジタル一眼レフカメラのカメラレンズの場合、焦点距離はせいぜい600ミリ止まりです。 しかし、このデジスコ撮影方法を用いると、2,000ミリを超える世界を容易に楽しめます。

それにデジスコ撮影は、撮影機材の価格の面でも有利です。 例えばキヤノンの超望遠レンズ、キャノンEF600mmF4Lレンズを購入するとなると、100万円近い出費が必要です。 しかしデジスコであれば、フィールドスコープとアタッチメントを購入すれば撮影を楽しめます。 5分の1程度の出費で、超望遠の世界を楽しめるというわけです。


デジスコ撮影に使うデジカメ

デジスコ撮影の様子 デジスコ撮影には、まずデジタルカメラが必要です。 風景や星空の写真を綺麗に撮る場合は、デジタル一眼レフカメラがよく使われていますが、 デジスコ撮影の場合は、コンパクトデジカメの方が有利に働きます。 これはなぜでしょうか。

一眼レフデジカメとコンパクトデジカメの大きな違いは、デジカメボディ本体に付いたレンズが取り外せるかどうかです。 一眼レフデジカメを天体望遠鏡やフィールドスコープに取り付ける場合には、 カメラレンズを外して、カメラボディ本体を直接繋ぎます。 しかし、コンパクトデジカメにはレンズが固定されているので、その方法は使えません。 一般の写真を撮るように、レンズでそのスコープの接眼レンズを覗かせる格好になります。

このコンパクトデジカメに取り付けられているレンズが、デジスコ撮影では大きな役割を果たしてくれます。

通常、超望遠の撮影となるとF値が暗くなるので、早いシャッターが切れません。 しかし、接眼レンズにコンパクトデジカメのレンズを当てて撮影すると、 二つのレンズが組み合わさって、F値(レンズの明るさ)がぐっと明るくなります。 場合によっては、F2.8前後まで明るくなります。焦点距離2,000ミリでF2.8とは凄いスペックですよね。

もちろん、この場合のF値は合成F値ですので、解像度が上がるわけではありません。 しかしながら、F値が明るいので、速いシャッターを切ることができます。 これは、動く被写体を撮るときには、何物にも代えられないメリットとなります。 そのため、フィールドスコープを使ったデジスコ撮影には、 コンパクトデジカメがよく使われています。


デジスコで撮影した野鳥

デジスコで撮影した野鳥 右の画像は、コンパクトデジカメと上のフィールドスコープを使ってデジスコ撮影した野鳥の写真です。

撮影時の距離は20メートルほど離れていましたが、デジカメとスコープを使えば、このように小さな鳥をクローズアップ撮影できます。 撮影自体もそれほど難しくはなく、フィールドスコープで野鳥を観察してから、デジカメを取り付けて撮影するだけです。 ピントのずれも僅かであれば、コンパクトデジカメのAF機能が補正してくれます。

デジスコ撮影のメリットは、遠く離れたところから小さな被写体を撮影できることです。 被写体に近づく必要がありません。 驚かせたら逃げてしまう野鳥や動物の撮影に、大変適した撮影方法と言えるでしょう。


デジタル一眼レフカメラを使ったデジスコ

コーワプロミナーレンズ 最近のデジタル一眼レフカメラは、以前のモデルと比べて、高感度ノイズが著しく少なくなりました。 ISO1600やISO3200どころか、ISO6400でも一般撮影に常用できるほどです。

以前はISO感度を上げるとノイズが一気に増えるため、合成F値が使えないデジタル一眼レフカメラは、デジスコには使いにくいデジカメでした。 しかし、最近ではデジタル一眼レフカメラも、デジスコ撮影用の機材として、再び注目されるようになっています。

通常、フィールドスコープや天体望遠鏡にデジタル一眼レフカメラのボディを取り付け、 2,000ミリ前後の拡大率を得ようとすると、F値は16〜22程度になります。 ISO感度が低い場合、周りがよほど明るい撮影条件でなければ、速いシャッターを切れません。 これがデジタル一眼レフカメラがデジスコに不向きだった理由です。

ところが前述のように、ISO3200でも撮影できるようになると話が変わってきます。 ISO3200は、昼間の一般撮影に使われるISO100よりも5段感度が高くなります。 ここまで感度が高ければ、F値がある程度暗くなった場合でも速いシャッターを切ることが可能になります。 デジタル一眼レフカメラを使ったデジスコ撮影が注目されている理由です。

デジタル一眼レフカメラを使った場合のメリットは、抜けの良い画像を得られることです。 これは、コンパクトデジカメのように、カメラに取り付けられたレンズを使用しないです。 また、デジタイル一眼レフカメラに搭載された多彩なモードを使えば、 より表現力のある写真が撮れる可能性があります。


デジボーグ BORG望遠鏡を使ったデジスコ

デジボーグに使うBORG 望遠鏡メーカーのボーグは、軽い鏡筒と多種多様なパーツが魅力のブランドです。 以前は望遠鏡のパーツを中心に販売していたボーグですが、最近はこの自由度を生かして、 デジボーグという野鳥撮影パーツを販売しています。 デジスコファンに、天体望遠鏡の性能をアピールをしています。

具体的な撮影方法は、天体望遠鏡にテレコンバーターと呼ばれるコンバーションレンズを取り付け、 その後ろにデジタル一眼レフカメラを取り付けます。 この方法の場合は、フィールドスコープと異なりて、野鳥などを見て楽しむことはほとんどできませんが、 プリズムなどを介さないので、よりクリアな写真を撮ることができます。

デジボーグ撮影は、高い光学性能を持つ天体望遠鏡の長所を生かしたデジスコ撮影方法です。 最近では、野鳥の撮影だけでなく、鉄道撮影の分野でもデジボーグは注目されています。 デジボーグは基本的にはマニュアルフォーカスなので、動く鉄道の撮影には難しいと思われますが、 容易に超望遠撮影を楽しめるのが魅力のようです。 星空撮影のために生まれた天体望遠鏡が、今後どこまでデジスコの世界に浸透するか楽しみです。

デジスコの参考書
デジタルカメラ野鳥撮影術 プロに学ぶ作例・機材・テクニック

ミラーレス一眼カメラや、デジタル一眼レフカメラを使って、 野鳥をデジスコ撮影する際の機材選びやコツをまとめた書籍です。 デジスコを使って野鳥を撮影してみたいと思っている方には、お勧めできる本だと思います。

書籍の機材のページには、BORG望遠鏡やコーワのスポッティングスコープが登場しています。 マウント変換リングについても述べられているので、 機材について知りたい方の参考にもなると思います。

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