色に関する基礎知識

デジタル画像を運用するなら、色彩に関する知識はできるだけ知っておきたいところです。 それがよりよい作品作りへときっと繋がるはずです。このページでは、基本的な色の仕組みなどを色彩検定で培った知識の 範囲で簡単にまとめています。


色の生じる原理

虹の色 色は一体何であろう、というのは古代からの疑問でした。暗闇では色はわかりませんから、光がなければ色は存在しないことは 容易に分かります。しかしそれが科学的に実証されるには、17世紀のニュートンの実験まで待たなければなりませんでした。

ニュートンが行った「白色光の分光」の実験はあまりにも有名です。太陽の光をスリットに通して、その光をプリズムに当てて 光のスペクトルを得ました。いわゆる虹の色です。スペクトルは赤・橙・黄・緑・青・藍・菫に分かれ、太陽の光はこれらの色を含んでいる ということを科学的に実証しました。ここから「色とは光である」という結論にたどり着きます。

太陽の光の色は無色透明ですので、白色光と呼ばれます。蛍光灯の色も無色透明ですから白色光です。電球の色がオレンジ色なのは、 長波長の色が他の色に比べて強いためです。こうした光を発する色のことを、光源色と呼びます。


物体色の原理

太陽や蛍光灯は無色透明で、白熱灯は橙色であることがわかりました。それでは物体の色とはなんでしょうか。

色は光ですから、光源色であっても物体色であっても色の源は太陽や蛍光灯の光であることに変わりありません。 ただし光源色場合には、光自体が目に入ってきて認識されます。しかし物体色の場合には、一旦光が物体に当たって一部の光が吸収され、 その残りの光が反射してきます。この残りの光が私たちの目に入ってきて、「この物体は赤色だ」という具合に認識されます。

ということは、光は物体に当たると必ずその一部が吸収されるということになります。どんな物体も光を吸収し、色を私たちに見せてくれます。 そして吸収されなかった残りの光だけが物体表面から反射し、それが目に差し込んできて物体の色と私たちは認識します。 結局のところ物体の色とは、反射が多いと明る色になり、反射が少なく吸収が多いと暗い色になります。 この割合が波長ごとにことなるので、物体は様々な色を私たちに見せてくれます。

色の種類

上は色の種類を表にしたものです。光源色の自然光とは太陽のことで、人工光とは照明やネオンのことです。 物体色の表面色が私たちがよく目にする物の色のことです。透過色とは、ワインやステンドガラスの色のことです。

その他、光が屈折したり錯乱したりすることで色を見せてくれることがあります。青空が青いのは、波長の短い光が空気中の微粒子に当たって 錯乱したためです。満月の時に薄曇りだと、月の回りに光の環が見えることがあります。これは光の回折によって起こる現象です。 光は粒子と波という特性を持っていますから、それに合わせて見える色が変わることがあるということです。


色光の三原色と色料の三原色

カラーテレビが色を再現できるのはなぜでしょうか。カラーテレビや液晶ディスプレイには、蛍光体という発光体が入っています。 この蛍光体には赤い蛍光体、緑の蛍光体、青い蛍光体があります。この3つの組み合わせですべての色を表現しているわけです。 この3つの色を、色光の三原色と呼んでいます。

色光と色料の三原色

左がその色光の三原色です。この色光の三原色は、混ぜれば混ぜるほど光の強度が増します。カラーディスプレイでは、すべての 蛍光体を最大強度で発光させて白色を作り出しているのです。

右側が印刷機のインクに用いられている「色料の三原色」です。こちらはシアン、マゼンダ、イエローの三色からなり、混ぜれば 混ぜるほど色が暗くなります。こうしたことを減法混色といいます。一方、色光の三原色では加法混色となります。

この上の図は色を操作する上でとても役に立ちます。例えば、グリーン(G)とマゼンダ(M)は対向する位置にあります。 この2色は「補色関係」にあると呼びます。もしマゼンダ寄りの画像をニュートラルにしたいのなら、グリーンを増せ ばよいというわけです。他の色にももちろん当てはまりますので、この図を頭に思い浮かべながら色補正す ればうまくいくはずです。


定量的な色について

人間の目では1,000万近い色を識別できると言われています。このような多くの色を名前で識別するため に、JIS規格では系統色名というものを定義しています。これは一般的な基本色名(赤とか緑とか)に修飾語 をつけて表示するというもので「明るい、赤みのある、緑」という具合に修飾詞を付けていきます。 修飾後は少々分かりづらいですが、固有色名に比べて系統的に色を認識できるのが美点です。 イラスト関係の職場ではよく使われている言葉です。

カラーマネジメントの現場では、マンセルの表色系というのが有名です。マンセルシステムは、アメリカの美術教師で あったマンセル氏が色を表現するために提唱したものです。1943年には修正マンセルシステムが発表され、 色相、彩度、明度を立体的に表したマンセルの色立体(下図)は特に有名です。 こうしたマンセルシステムやPCCSといった表色系は、産業界やデザイン界でよく使用されています。

マンセルの表色系

デジタルデータのビット数

デジタル一眼レフカメラの普及が進み、撮影データーはデジタルで扱うことが主になりました。 デジタル一眼レフカメラはその名の通り、撮影からデータまですべてがデジタルと思われがちですが、実際はそうではありません。 人間が住む自然界はすべてアナログです。ですから、必ずアナログからデジタルへ変換する機構(A/Dコンバータ)が必要です。 流れとしては下のような風にアナログからデジタルへの変換が行われています。

デジタルフローチャート

これを見るとわかりますが、デジタル一眼レフカメラの性能向上には、撮像素子のCMOSやCCDだけでなく、コンバータの性能アップも 大変重要になってきます。また、画像保存については階調数の違いからいろいろ用意されています。下の表に列記してみます。

1ビット2の2乗 2階調
8ビット2の8乗 256階調
12ビット2の12乗 4096階調
16ビット2の16乗 65536階調
24ビット2の24乗 約1670万階調
32ビット2の32乗 約43億階調

ビットという表現は少し馴染みにくいですが、元々のコンピューターが0と1しか判別できないので これで表すのが定例となっています。 一般に普及しているコンパクトデジタルカメラは、主にJPEGデーターで保存されますからこの表でいうと2段目になります。

写真ファンに普及が進んでいるデジタル一眼レフカメラでは、12ビットから14ビットで画像を保存できます。 この表で見ると3段目と4段目の間となります。ビット数が少し変わると、階調数がぐんと増えているのがわかります。 ビット数が増えるにつれ、データー自体も大きくなります。闇雲に大きな階調で撮影すると、保存データーが膨大な容量になってしまいます。 その辺りも考えておいた方がよいかもしれません。 ただし、画像処理をする必要があるなら、階調数が多い方が有利です。ですから、天体写真のような分野では、最高の階調記録数に設定して 撮影するのがベストと言えます。


ガンマカーブ

デジタル一眼レフカメラを使っていると、よく目にするのが「ガンマ(γ)」という言葉です。 銀塩写真の頃から用いられてきましたが、最近画像処理が一般化するにつれて注目されるように なりました。

ガンマカーブ

入力に対する出力の階調再現特性をγといい、この値が大きいほどコントラストが高くなり硬調に なります。反対に小さいと軟調で低コントラストになります。上の図では、黒の曲線で表され ているのがγカーブでαがその角度になります。γ値はそれをタンジェントで表記した ものです(α=45度ですとγ=1です)。ネガフィルムは低γ値の代表的な感剤です。 パソコンのモニタの表示にもγが用いられています。私の使っているMacのモニタは1.8、Windowsマ シンは2.2を伝統的に使っています。どちらが良い悪いということではありませんが、Windowsマシンの方がγ値が高いの で高コントラストの表示となります。


印刷機の色

インクジェットプリンターの発達によって、家庭でも手軽にできるようになったカラー印刷。インクを交換した経験が ある人なら「カラー印刷といえばCMYKインク」と連想しますが、全く興味がない人は「肌色なら肌色 インクを使って・・・」と考えてしまうのではないでしょうか。実際にこのような特別色インク を100色以上使って印刷する「原色版印刷」という機械もあるそうですが、今ではとても特殊 な機械です。今では、人間の眼の特性である3原色を使ってカラー印刷するCMYKプロセスが ほとんどの印刷現場を占めています。

CMYK印刷に使われるインクは、理想的な特性が求められます。理想的な特性とは、シアンインク ならば約400nm〜600nm付近の色は完全反射する特性を持ち、逆にそれ以外の波長色は吸収してしまうとい う特性です。しかし、実際のインクは理想とはかなり違ってしまっており、この辺りの特性改善がインクメーカーの 今後の課題となっています。

インク特性が理想像と異なっているため、実際の印刷ではインキ量補正が必要になります。 本来CMYを混色すればグレーになるところなのですが、実際にはレッド味が出てきてしまうのです。 これではいけないので印刷時にグレーバランスを取ったり、マスキング処理を行います。

マスキングと言うと難しく聞こえますが原理は簡単です。例えばマゼンダインク にイエローインクを重ねて色を再現するとき、理想インクと比べてマゼンダインクはイエロー色が含まれて いますので、その分、イエローインクを重ねる量を減らして印刷するというものです。こうやって印刷 すれば、正しい色になって印刷物が出来上がるというわけです。一般のプリンタドライバもこの辺りを 調整しつつプリントを行っています。私達の知らないところでソフトウェアが調整して くれているのです。

現在の印刷物は、網点技術の開発により安定して作成できるようになりました。網点(あみてん) とは、その名の通り小さな点です。この小さな点を細かく打つことによって印刷物は生成されて います。印刷物をルーペで見るとこの網点の様子がよくわかると思います。 網点印刷によって出てきた問題にドットゲインがあります。ドットゲインとは、簡単に喩える と印鑑を押したときにはみ出す量のことです(印鑑を強く押すと、印鑑本体より少し大きな印 が紙にできますよね。そのはみ出す量のことです)。 ドットゲインが大きいと、本来点であるべき像が滲んだように印刷されてしまいます。 これはどちらかというと、プリンタ本体よりも使うペーパーの質による影響の方が大 きいものです。ですので天体写真などをプリントするときには、インク滲みの少ない ペーパーを用いるのがよいでしょう。

また業務用のプリンタでは、高精度に網点を制御して印刷する機械もあります。一般的に網点を使 った印刷では、モアレなどの現象が起きやすい欠点があったのですが、最近では網点を打つ配列 を無規則にしてモアレなどを防いだものもあります。写真の内容によっては(細かい規則性を持 った衣服などの写真など)、このような機種を選んでプリントする方がよい仕上がりが得られます。

印刷技術はこれからも発展していく技術です。家庭用インクジェットプリンターも高性能化 が進んでいますので、今後印刷技術がどのように変わっていくのか興味が尽きない分野です。