実践フラット補正
フラット補正の撮影方法と画像処理について説明して参りましたが、 「フラット補正が上手くいかない」というご質問をいただきます。 そこでこのページでは、私のフラット補正のデーター(冷却CCDカメラ)を用いながら、 実践的にお話しを進めていきたいと思っています。少し専門的な用語も出てきますがご容赦ください。
フラット補正の露出時間
フラットフレームの撮影時に大切なのは、デジタルカメラの露出時間の設定です。
フラットフレームは、光学系の周辺減光を記録するための画像ですから、 撮影した画像が白く飽和してしまっては、フラット補正に使うことができません。 画像が少し明るくなる程度のシャッター速度に設定して、撮影する必要があります。
露出時間の見極めには、デジタル一眼レフカメラの液晶モニターに表示されるヒストグラムが便利です。 ヒストグラムは、ピクセルごとの明るさを積み上げてグラフにしたもので、 画像の輝度分布を表しています。 ヒストグラムの左に行くほど画像は暗く、右に行くほど明るくなります。
フラットフレームは、このグラフの山が、 ヒストグラム左側から三分の一のぐらいの位置に来るように、 カメラの露出時間を設定して撮影すると良い結果に繋がると思います。 なお、露出時間は短すぎるとよくありません。 少なくとも数秒の露出時間は、かけるようにしましょう。
参考までに、私が薄明の空を使ってデジタル一眼レフカメラでフラットフレームを撮影するときは、 ISO感度は撮影画像と同じ設定にして、露出時間は10秒前後で撮影するようにしています。 逆に言えば、空が明るすぎると露出時間は短くなってしまうので、 天文薄明は始まっていますが、空にはまだ星が輝いている時間帯に撮影しています。
ちなみに、冷却CCDカメラでフラット画像を撮る時には、 露出時間は約20秒前後で撮ることが多いです。 改めてデーターを見てみると、IRカットフィルターを用いてL画像(ビニング無し)を撮るときは、 ほぼすべて露出時間20秒で撮っていました。
冷却CCDカメラの制御ソフト上では、カメラが撮影した画像の最大輝度が表示されます。 この輝度の値で表現すると、20秒露出して、画像の最大輝度が飽和輝度の3分の1ぐらいになるぐらいの空の明るさの時に、 フラットフレームを撮影しています。 少々わかりづらい表現ですが、16ビットの冷却CCDカメラの最大輝度は、一般的に65536カウントです。 輝度値が、露出20秒で2万ぐらいになる時の空、というと分かりやすいでしょうか。
フラット画像の良否の判断
フラット画像の良否の判断は難しいものです。 撮影本画像にフラット補正を適用して周辺減光が緩和されれば成功なのですが、 果たしてそれでベストな結果かどうかよくわかりません。 見比べる対象がないですものね。
そこで、私の撮影した撮影本画像とフラット画像を、ネットからダウンロードできるようにしてみました。
このダウンロードに使ったのは、ε160で撮影したM33銀河の画像と、そのフラット画像です。
下の表からダウンロードしてください。
※画像ファイルがあまりにも大きくサーバー容量を必要とするため、2008年12月からはメールでのご提供となりました。
お気軽にメールフォームからご連絡くだされば幸いです。
※新しいサーバーを設置したのでフラット画像をダウンロードできるようになりました。ファイルはZip形式で圧縮されています。
ダウンロード後、解凍してお使いください。
解凍後のファイルはFits形式になりますので、ステライメージなどを使って画像を参照してください。
画像名称 | ダウンロードアドレス |
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M33銀河 L画像 フラット画像(ST2000XM) |
ダウンロード |
なお、あまりにもファイル容量が大きかったので、提供画像は半分に縮小して圧縮しています。 また画像は解凍してお使いください。フィット形式のファイルのままですので、ステライメージを使ってフラット補正を試すこと ができると思います。「Ryutaoはこんな感じでフラット補正しているんだなぁ」という目安にしていただければ幸いです。
都会で撮った画像のフラット補正
光害が多い都会で撮影した場合は、いくら上手にフラット画像を作っても完全にフラットにならないことが多いはずです。 これは、光害のために夜空の明るさにムラがあるためです。
フラット画像を使えば周辺減光は補正できますが、夜空の背景のムラまで補正するのは難しいです。 撮影した対象と同じ方向に望遠鏡を向けてフラット画像を撮る、という方法もありますが、そういう方法を取っても なかなかうまくいきません。
昔はST7を始めとしたサイズの小さなCCDチップが主流でした。 ところが現在では、APS-Cサイズも超えるフルサイズCCDが主流になりつつあります。 こんなに広いチップですから、光学系の周辺減光や背景のムラも大きく出てきてしまいます。 フラット補正にあまり神経質になりすぎず、最後はステライメージのカブリ補正や、フォトショップのグラデーションマスクを使って 補正するのが現実的だと思います。