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カラーマネジメントの基礎知識

デジタル写真を扱うようになってから、最初にとまどうのは色合わせの問題です。 パソコンモニターで表示された画像と、プリント出力した画像の色が合わないといった 経験は、誰もが一度は体験することです。ここでは、最近よく耳にするようにな ったカラーマネジメントシステム(CMS)について簡単にまとめています。


カラーマネジメントとは

デジタル技術の発展で、写真のデータはすべてデジタル化されるようになってきました。これは、デジタルカメラの データだけでなく、銀塩フィルムについても同じことです。このカラー写真のデジタルデーターは、パソコンが認識できるデーター ですから、ポジフィルムのような「色」が元々記録されているわけではありません。いわゆる「0」か「1」という デジタル信号がデーターとして保存されているわけです。

これらのデーターを見るときは、パソコンの液晶ディスプレイなどを使って見るわけですが、表示するデバイスが異なると僅 かずつですが色が違って見えてしまいます。データーは自体は全く同じ情報なのですが、それを開くデバイスの 特性によって、少し色味が変わってしまうわけです。そこで出てきたのがカラーマネジメントシステム(CMS)というわけです。

カラーマネジメントシステムは、人間が見てカメラが記憶した画像と、モニタに表示される画像、プリンターで出力される画像の色を できるだけ一致させようとする技術です。別にカラーマネジメントを使ったからといって、画像処理が上手く行ったり、綺麗にプリント できたりするわけではありません。

また、一家庭内の液晶ディスプレイやプリンターの色を単純に合わせるのは、一般的にカラーマネジメントとは言えません。 こうしたことはカラーマッチングと呼んでいます。ハードウェアのキャリブレーションを行い、業界標準に準拠した 色管理を行うことをカラーマネジメントと呼んでいます。


デバイスディペンデントカラー

液晶ディスプレイやプリンターと言った機器には、それ独自の表示できる色の範囲があります。 モニターで表示された色が、全てプリンターで出力できるわけではないことはよく知られていることです。逆にプリンターの色域の範囲の方が広く、 液晶ディスプレイではわからなかった色が、プリントされることがあります。

このような、その機器が独自に持っている色空間のことを「デバイスディペンデントカラー(device dependent color)と言います。 なんだか難しい言葉ですが、例えると次のようなことです。 例えば、いろいろなフィルムで星雲や星景写真を撮ります。そのフィルムを現像に出し、現像後のポジを見ると、全く同じ星雲を撮って もエクタロームとフジクロームでは、発色やトーンが違った覚えがあると思います。これがデバイスディペンデントカラーというわけです。

下の図はよく見かけるカラースペース(XYZ表色系)です。人間の視覚域に対して、モニタやプリンタがどれぐらいの範囲 を表示できるのか、ということをここでは比較しています。

カラースペース

この図を見ると標準的な液晶ディスプレイで表示できるsRGB色空間は、人間の視覚域と比べると、とても狭いことがわか ります(ここでは人間の視覚域をカラーで表しています)。一番広い範囲を持つ白い三角形は、一般的なコダックの ポジフィルムをE6標準現像したときに表示できる色域です。これを見ると、ポジフィルムの色表現域はかなり広いことがわか ります。この辺りが銀塩フィルムの持ち味なのでしょう。もちろんフィルムをスキャンしてしまえば、スキャナの色域に圧縮さ れますので表現色域は狭くなります。

黄色で囲んだ変則的な六角形が、一般的なインクジェットプリンターの表現色域です。この範囲と液晶ディスプレイの標準カラー であるsRGB色域を比べると、一致していないところがあるので、その部分はプリントできないことになります。逆にこ の図から、ディスプレイでは表示されていなくても、プリンターでは表現できる色域もあることがわかります。

なお、「レンダリングインデント(rendering intent)」という言葉が、DTPの本などによく登場しますが、RGBカラーからCMYKカラーへ変換をかけ るとき等、カラースペースが異なっている場合、カラースペースが及ばない範囲の色を、置き換えることで表示させるようとすることを このように呼んでいます。その変換方法により「知覚的」「彩度」等があります。特にこだわらない限りはPhotoshopのデフォルト設定のままで よいと思います。


デバイスインディペンデントカラー

デバイスディペンデントカラーという言葉と対照的に使われるのが、「デバイスインディペンデントカ ラー(device independent color」です。意味は機器によらないカラーということです。なぜこういう独立したカラースペースが 必要かと言うと、使う機器によって表示される色が異なってしまうからです。 それを防ぐために、デバイスによらないカラーを一つ置いておいて、機器が色を表示しようというときに、それを参照して正しい色を 表示させようとするわけです。

少し話はそれますが、例えばPhotoshopなどの画像処理ソフトを使うと、画像ピクセルのそれぞれの値が表示されます。 デバイスディペンデントカラーだけを用いたデバイス間でのデータ転送では、そのRGBの値は 全く同じでデータの転送を行ってしまいます。これでは、それぞれのデバイスの表示カラース ペースが異なってしまうので、おかしな色に表示・プリントされてしまいます。これに比べデバイスインディペンデントカ ラーを用いた場合には、プロファイルを参照してRGBの値を変えることで表示色を同じにします。 RGBの値を変えるというと大変なことのように聞こえますが、システム間だけのことですから画像処理などには、 影響はありません。昔は「CMSは色を汚くするんだよ」という噂がありましたが、この辺りだけを 大きく認識されていたからなのでしょう。

ところでデバイスインディペンデントカラーですが、これは一体どこにあるのかというと、パソコンのオペレーションシステムの中にあります。 WindowsXPでしたらICM2.0(Image Color Management)の中にあります。また、Mac機には昔からColorSyncが入っているのは、よく知られてい ることです。もう少し詳しく見ていくと、このICM2.0は「デバイスプロファイル」、「参照カラースペース」、「カラーエンジン」と いうものから成り立っています。デバイスプロファイルには、繋いでいるデバイスの設定カラースペースなどが書 かれています。「参照カラースペース」は、CIELabという広い色空間で書かれたカラースペースで、これが一 般的にデバイスインディペンデントカラーにあたります。「カラーエンジン」は、デバイス間での色空間の変換に使われています。


モニターのキャリブレーション

モニターキャリブレーションツール 写真の画像処理が一般的になると共に、ハードウェアキャリブレーションができる安価で高性能な液晶ディスプレイが登場してきました。 また、製品によっては専用のキャリブレーターまで付属しているディスプレイもあります。

キャリブレーションの目的は、色温度とガンマを調整することと、その液晶ディスプレイが持っている 最大発色域を測定してプロファイルを作ることです。 キャリブレーターを使うと、液晶ディスプレイの白色点と発色領域を測定して、 どの色温度でどのガンマカーブを描くか、ということを示したプロファイルを作成してくれます。 このプロファイルをキャリブレーターに付属したユーティリティが参照し、画像を正しい色彩で表示 してくれるようになります。ただしPhotoshopなどのカラーマネジメントに対応したソフトが 基本的に必要です。

右上の写真は、私が使っているモニターキャリブレーションツール、i1-Display2です。 モニターキャリブレーションツールの中では安価なモデルですが、 必要かつ十分な精度でモニターのキャリブレーションを行うことができます。 本格的に写真を画像処理したい場合は、こうしたツールを一つ用意しておくと便利だと思います。

iDisplayPro
i1Display Pro

i1-Display2の生産が終了し、後継機として登場したのがi1DisplayProです。 このキャリブレーションツールは使用したことがありませんが、メーカーによれば新しい光学フィルターを使っているので、 より高い精度でキャリブレーションを行えるようになったとのことです。

この他にもColorMunki Displayという機能が少し削られて、安価なキャリブレーションツールが用意されています。 ディスプレイに表示される写真の色表現に疑問を持ったら、こうしたツールを使ってみるのもよいのではないでしょうか。

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