スキャナの基礎知識
最近はデジタル技術が発展し、様々なデジタル機器が登場してきました。今まで個人では手に入 りにくかったデジタル入力機器も入手することができるようになりました。このページでは、スキ ャナについての基礎的な事柄を記載しています。
スキャナのはなし
アナログデータのフィルムを、デジタルに置き換えるスキャナは、銀塩派にとって は重要なデジタル機器です。しかし一口にスキャナと言っても、1万円で買える物から1,000万円クラス の製品まで幅広く販売されています。一般家庭への普及率も増えて、人気家電製品の一つに なりつつあるスキャナですが、あまり構造やシステムまで踏み込んだ記載は見かけません。ここでは スキャナの基本的な構造を示し、スキャナを購入する上での参考になる内容を記載しています。
スキャナの種類
私達が手に入れることができるスキャナは、大きく分けて2種類あります。フラットベッドタイプの ものとフィルム専用タイプの製品です。業務用のものでは、大型のドラムタイプのスキャナもありますが、 あまり一般的ではないでしょう。
フラットベッド型 キャノン9900F | フィルムスキャナ ニコンクールスキャン |
業務用ドラムスキャナ 世界最高品質のSG8060 |
一般向けフラットベッドタイプ(CanoScan9900Fなど)
原稿の種類を選ばないのがこのタイプ。書籍でも開いて載せればスキャンできます。透過オプション を取り付ければフィルムもスキャンできます。今、最も手に入れやすいスキャナです。3万円程度の 出費で、高解像度のものを手に入れることができます。
業務用フラットベッドタイプ(EPSON ES-8500など)
現在世界的に最もよく出ているクラスのスキャナで、多くの種類が出ています。SOHOで 使われることが多く、一般向けと比べると価格が上がります。10万円以上から手に入れるこ とができるクラスです。数が多い分、機種による品質格差も大きいので自分の意図と合うも のを選ぶことが重要です。
一般用フィルムスキャナ(Nikon CoolScanEDなど)
フィルム専用のスキャナです。フラットヘッドのような透過スクリーンがないフィルム 専用だけあってシャープな像を結びます。ただ比較的値段が高いのが難点で、ラージフォー マットを読める機種は非常に高価です。一般向けフラットヘッドの性能アップと普及により 、注目度が下がってきたスキャナです。ラボでPhotoCDを焼くために使っているの は、このクラスのスキャナです。
業務用フィルムスキャナ(imacon Flextight PHOTOなど)
ハイエンドのフィルムスキャナで、フィルムに限るとドラムスキャナ並の能力を発揮 する機種です。ただ非常に高価で、最高の製品と言われるimacon社のものは100万円以上の価格です。 プロラボでブローニーサイズのスキャンを頼むと、このクラスのスキャナを使ってスキャン してくれます。
ドラムスキャナ(大日本スクリーン SG8060など)
現在最も高品質な画像を提供してくれるスキャナです。1000万円はする価格帯なので一般 人が持つのはほとんど不可能です。ドラムに原稿を巻き付けてスキャンするので、スキャンす る原稿はドラムの回転で飛ばないことが条件となります。また油張りという特殊な技能を必要とする ので、専門技術者の育成が必要なスキャナです。プロラボで「ドラムで超高精度スキャンお願 いします」と依頼すればスキャンしてくれますが、スキャン料金も非常に高額です。
上記のようにいろいろ種類があるスキャナですが、一般的には家電量販店で売られている もので十分でしょう。このクラスの製品でも10年前では、百万円くらいした製品と同じくら いの性能があります。あまり高いスキャナを買い求めるよりも、そのスキャナを有効活用した 方がよいと思います。
スキャナの構造
普段何気なく使っているスキャナ。カタログには、いろいろなスペックが書かれていますが、 専門用語であまりよくわからないものばかりです。ここでは基本的なスキャナの構造と、各部分の説明 を記載しています。
フラットベッド型スキャナは、黒縁の上の透過ガラス越しに読み取り原稿を置き、下から光源を 移動させることで全面をスキャンします。読み取りのCCDは大型 化するとコスト高に繋がるので、前面に集束レンズを置き、光源から反射された光を集めて読み 取ります。一般のフィルムスキャナも同じような構造で「EDレンズを用いた・・・」と書いて あるのは、このレンズに色消しレンズを用いたということです。CCDが図のように一つの場 合は、CCD前面にRGBフィルターを置き3回露光(スリーパス)することでRGBそれぞ れの色情報を読み取ります。
市販されている一般向けフラットベッド型スキャナは、ほとんどがこのような構造です。 このように光源が動くタイプのスキャナは「光学移動式」と呼ばれています。できれば光学系 は動かない方が精度が高くなるので、業務用の高額なスキャナでは「原稿移動式」のスキャナ も存在しています(光源が動くと原稿周辺部で収差が出やすくなります)。フィルムスキャナ にも光源が移動するものと、原稿が移動するものの2種類が存在します。もしこれからスキャナ を選ばれるのなら、この辺りも気にされてみてはいかがでしょう。
また、読み取りCCD(センサー)の数によってもスキャナの性能は変わってきます。普通のス キャナは1枚センサータイプですが、高級な製品になると、RGBそれぞれに一つずつセンサーが 設置されたものもあります。いわゆる3ライン型のセンサーです。3ラインになるとRGBを一 気に読み取ることができるので、スキャン時間は高速です。ただ3ラインに置かれているCCD の特性にばらつきがあると、品質の悪化を招くため嫌う人もいます。時間がかかってもよい方は 、1ライン型の方が安くてお勧めかもしれません。
※細かくスペックを見ると、1ライン型でも上図のように3色フィルターを 用いるものと、RGB光を発光して読み取るものがあります。色の特性はフィルタタイプの方 が優れているようなので、こだわる方はチェックされた方がよろしいでしょう。
デジタルよりアナログなハイエンドの世界
デジタル全盛の時代ですが、スキャナのハイエンドの世界ではまだまだアナログ機器の支配 が続いています。超高精細の画像を読み取るには、非常に微弱な光信号を読み取ることが必要で す。その光を確実に読み取るには、現在のCCDセンサーではまだ不十分で、未だに真空管の ような構造をした光電子倍増管(フォトマルチプライヤー(通称:フォトマル))が使われています。
フォトマルは真空管のような構造をしており、光が当たると電子が発生する物理現象を利用したアナ ログデバイスです。電子レベルでの電流を検出できるため、CCDでは識別できない信号を捉え ることができます。ただ、高品質のものを量産するのは極めて難しいため、大変高価な機器とな ってしまいます。現在では大型のドラムスキャナや、一部の業務用フラットベッドスキャナに 用いられているにすぎません。 オーディオ機器のアンプの中にある真空管のような存在ですね。