タカハシEM200 Temma2赤道儀
タカハシEM200赤道儀は、それまでに移動用赤道儀として人気のあったJP赤道儀を一回り小さくし、 移動用赤道儀としての利便性を向上させた赤道儀です。
タカハシEM200赤道儀は、1989年に発売されてから人気を博し、ベストセラー赤道儀としてその地位を固めました。 様々な赤道儀が販売されている現在でも、EM-200は安定した人気を保っていて、 フォトコンテストでの使用率が非常に高い赤道儀の一つです。 移動用として使える赤道儀の本体重量と組み立てやすさ、 それにステッピングモーターによる高精度追尾がその理由ではないでしょうか。
使い易い極軸望遠鏡
EM-200赤道儀が登場するまでのタカハシ製赤道儀には、時角の計算が必要な極軸望遠鏡が取り付けられていました。 そのため、郊外に赤道儀を持ち出す場合には、前もって北極星の位置を割り出す等、北極星の位置を調べる作業が必要でした。
しかしこのEM200赤道儀では、観測地の経度を合わせた後、 極軸望遠鏡のスケールを回転させて日付と時刻を合わせれば、 北極星の導入位置が極軸望遠鏡内に表示されるようになりました。 また、暗視野照明装置も内蔵されているので、NJP赤道儀やP2型赤道儀のように、 極軸照明用のPライトを別途買い求める必要がないのもよい点です。
自動導入機能が付いたEM200赤道儀
私が購入したEM200赤道儀は、正確にはタカハシEM200B赤道儀という機種でしたが、 オーバーホールと共にメーカーにTemma2への改造を依頼して、自動導入機能が付いたEM200Temma2になりました。
赤道儀の改造前と改造後を比べると、EM-200の赤緯体の形状が若干大きくなっていたのを覚えています。 自動導入用のトルクのあるステッピングモーターを取り付けるため、赤緯体ごと交換したのかもしれません。
また、自動導入の改造により、若干ピリオディックモーションが悪くなっていたのも記憶しています。 Temma2では、自動導入時にギアを高速回転するため、ギア間の遊びが大きくなった影響が出ているのかもしれません。 しかし、自動導入改造が完了し、モーターの最高速度が、恒星時16倍から350倍(12V時)に変わったのには感動しました。
2015年現在、Temma2はTemma2Zへとマイナーチェンジしています。 高橋製作所のアナウンスによれば、オートガイド端子が一般的なモジュラージャックに変更されて、 より使いやすくなったようです。 機種名の最後に「Z」が付いていますので、EM-200Temma2Zはモデル末期と思いますが、 前モデルのTemma2Mと比べると、価格が値下がりしているので、お買い得モデルと言えるかもしれません。
組み立てのし易さが大きな美点
赤道儀を郊外に持ち出して天体撮影する時、赤道儀の組み立て作業と撤収作業は撮影者の大きな負担となります。 その点、このEM200赤道儀はそういった組み立て作業をよく考えて作られています。
まずは、ウェイトシャフトを赤緯体に内蔵できることです。この機構により、NJP赤道儀のようにシャフトを赤道儀本体に 取り付ける作業が軽減されます。また、赤道儀本体も大きなネジ一つで三脚と固定できるようになっています。 特にメタル三脚を合わせて用いたときには、「三脚を開く→赤道儀を載せる→赤道儀固定ネジを締める」の3段階で 簡単に設置することができます。できるなら、この便利なメタル三脚と一緒に使いたいEM200赤道儀です。
この一台さえあれば
タカハシEM200赤道儀は、自動導入などの機能が付くにつれて価格も上昇し、現在のEM200Temma2は定価で50万円ほどです。 非常に高価な赤道儀ですが、この一台さえあれば、天体写真撮影用によく使われる機材のほとんどを載せることができます。 具体的には屈折望遠鏡なら13センチ程度、反射望遠鏡なら20センチ程度のものまで搭載できるでしょう。
また、赤道儀のモーターも昔ながらのステッピングモーターを使用しているので、レスポンスが良く使い勝手がよいものです。 これから長い間天体写真を楽しまれるご予定でしたら、思い切って購入しても損はない赤道儀の一つだと思います。
なお、タカハシEM200シリーズには、2008年現在、モーターの速度が一番速いEM200Temma2、自動導入の速度を落としたEM200Temma2Jr、 そして自動導入機能が省かれたEM200USD3マウントがあります。 どれも搭載重量などの基本性能は同じですので、ご自分の用途に合わせて選ばれてはいかがでしょう。
※2012年現在では、EM-200Temma2Mの一種類のみとなっています。
※2015年12月に新しいEM-200Temma2Zが発売されました。
タカハシEM200赤道儀のスペック
名称 | EM-200Temma2 |
赤経ウォームホイル歯数 | 180 |
赤緯ウォームホイル歯数 | 180 |
ウォームホイル径 | 92mm(赤緯・赤経共) |
軸径 | 40mm(赤緯・赤経共) |
極軸望遠鏡 | 南北両用 時角計算盤付 9倍 |
傾斜可能角度 | 0-50度 |
電源 | DC12V/DC24V |
駆動周波数 | 100PPS |
自動導入速度 | 350/700倍 |
搭載重量 | 16キロ |
本体質量 | 16.5キロ |