赤道儀の性能比較
天体写真を撮影する時に必要になるのが、星の日周運動を追いかける機器「赤道儀」です。 赤道儀にも様々な種類があり、いろいろなメーカーが製造販売しています。
そこで私が気になっている赤道儀の機種を、一覧にしてこちらに載せてみました。 内容には間違いがないようにしていますが、勘違いなどありましたらお許しください。 赤道儀選択時の参考になれば幸いです。
タカハシの赤道儀ラインアップ
質実剛健で知られる高橋製作所(タカハシ)の赤道儀の比較一覧表です。 最新のTemma2シリーズは、ステッピングモーターを用いた自動導入赤道儀です。 このタイプの赤道儀には、その他にUSDという自動導入がないタイプや、 Temma2Jrという自動導入速度が遅いタイプが用意されていました。 これらの機種の違いは、自動導入機能の有り無しと、導入速度の違いだけで、 赤道儀の基本的な性能には違いはありません。
2009年夏、タカハシは、Temma2に変わるTemma2Mという新しいモータードライブ装置を搭載したシリーズを発売開始しました。 Temma2Mでは、以前のTemma2ではDC24Vが必要だった最高速がDC12Vで得られるようになり、 自動導入速度が改善されています。 しかしそれに伴い、赤道儀の消費電流が大きくなっていて、小型の電源では動かないこともあるようです。 きっと赤道儀内部に昇圧回路が組み込まれているためなのでしょう。 このTemma2Mシリーズを動かすためには、以前よりも大容量のバッテリーを用意した方がよさそうです。
2015年冬、タカハシから新しいTemma2Z赤道儀シリーズが発売開始されました。 従来モデルのTemma2Mで評判の悪かった、オートガイド端子の形状を見直し、 コントローラーも使い易い形状に改められ、完成度が増しています。 また、電子部品の見直しなどによって、全体的に価格が下げられており、より手に入れやすくなった価格も魅力です。
2020年春、タカハシから新しいシリーズ、Temma3が発売開始されました。 機械部分はTemma2と同じですが、Temma3には無線LANが内蔵され、日本語表示にも対応した天文アプリの SkySafari 6等を使って、 スマートフォンの操作で自動導入が行えるようになりました。
赤道儀名 | 搭載重量 | 本体重量 | 傾斜角度 | 極望 | 赤経歯数 | 赤緯歯数 | 駆動周波数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
スペースボーイ | 約5キロ | 4キロ | 0〜90度 | 別売り | 144 | 92 | モーター別売 |
PM-1 | 約5キロ | 5キロ | 0〜55度 | 固定9倍 | 144 | 112 | 40PPS |
P-2Z | 約6キロ | 6キロ | 0〜45度 | 固定9倍 | 144 | 部分微動 | モーター別売 |
EM-2 | 約6キロ | 10キロ | 25〜50度 | 別売り | 144 | 126 | モーター別売 |
EM-10 | 約7キロ | 7キロ | 20〜50度 | 固定6倍 | 144 | 144 | 25PPS |
EM-11 Temma2Jr. | 約8.5キロ | 7.3キロ | 20〜50度 | 固定6倍 | 144 | 144 | 100PPS |
EM-11 Temma3 | 約8.5キロ | 7.3キロ | 20〜50度 | 固定6倍 | 144 | 144 | 100PPS |
EM-200 Temma2 | 約16キロ | 16.5キロ | 0〜50度 | 固定9倍 | 180 | 180 | 100PPS |
EM-200 Temma3 | 約17キロ | 16.5キロ | 0〜50度 | 固定9倍 | 180 | 180 | 196PPS |
NJP | 約30キロ | 25キロ | 25〜48度 | 固定11倍 | 240 | 144 | モーター別売 |
EM-400 Temma2 | 約35キロ | 29.5キロ | 0〜47度 | 固定11倍 | 180 | 180 | 240PPS |
EM-500 Temma2 | 約40キロ | 40キロ | 5〜45度 | 固定11倍 | 144 | 144 | 115PPS |
※生産が既に終了した機種も載せています
ビクセンの赤道儀ラインナップ
初心者からベテランまで人気のあるビクセンの赤道儀ラインナップです。 ビクセンの赤道儀は、早くからコンピューターによる自動導入を実現しています。 スカイセンサーと呼ばれるコントローラーがそれで、最終バージョンはスカイセンサー2000PCでした。
現在では、スカイセンサーの製造は終了し、スターブックへと変わりました。 ビクセンの赤道儀の特徴としては、昔から、ベーシックなモデルと「D」の称号が付けられたデラックスモデルに分けられていたことです。 写真を撮る方には、デラックスモデルがお勧めです。
2010年に発売開始されたAXD赤道儀から、ビクセンの赤道儀にはスターブックTENがコントローラーに使われています。 これまでは、DCモーターが主流だったビクセンですが、 この赤道儀から駆動回路にステッピングモーター(パルスモーター)が使われるようになりました。 続いて登場したSXP赤道儀やSXD2赤道儀にも、ステッピングモーターが使用されています。 ステッピングモーターを搭載した機種は、より天体写真向きと言えるでしょう。
2018年10月、ビクセンはSXP赤道儀の後継機として、SXP2赤道儀を発売開始しました。 テーパーローラーベアリングやベルトドライブを採用し、より高い信頼性と、高レスポンスを狙ったモデルですが、 価格が一気に上がってしまいました。 タカハシEM200Temma2Zと同じ価格帯になってしまった影響で、「同価格ならタカハシ製品」という声が聞かれるようになりました。 今後、SXP2がどう受け入れられていくかによって、SXPで天体写真ファンから支持を得たビクセン製赤道儀の評価も変わっていくかもしれません。
赤道儀名 | 搭載重量 | 本体重量 | 傾斜角度 | 極望 | 赤経歯数 | 赤緯歯数 | コントローラー | モーター | 価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ポラリエ | 約2キロ | 740g | 0〜70度 | 別売 | 144 | − | − | パルス | ¥47,000 |
AP | 約6キロ | 3.6キロ | 0〜65度 | 別売 | 144 | 144 | 別売 | 別売 | ¥80,000 |
GP2 | 約7キロ | 4キロ | 0〜62度 | 別売 | 144 | 144 | 別売 | 別売 | ¥36,500 |
GPD2 | 約10キロ | 8.5キロ | 0〜62度 | 内蔵6倍 | 144 | 144 | 別売 | 別売 | ¥87,000 |
SX | 約12キロ | 6.8キロ | 0〜70度 | 別売 | 180 | 180 | STARBOOK | DC | ¥175,000 |
SX2 | 約12キロ | 7キロ | 0〜70度 | 別売 | 180 | 180 | STARBOOK ONE | パルス | ¥200,000 |
SXD | 約15キロ | 8.8キロ | 0〜70度 | 内蔵6倍 | 180 | 180 | STARBOOK | DC | ¥250,000 |
SXD2 | 約15キロ | 9.2キロ | 0〜70度 | 内蔵6倍 | 180 | 180 | STARBOOK TEN | パルス | ¥320,000 |
SXP | 約16キロ | 11キロ | 0〜70度 | 内蔵6倍 | 180 | 180 | STARBOOK TEN | パルス | ¥380,000 |
SXP2 | 約17キロ | 11キロ | 0〜70度 | 内蔵5倍 | 180 | 180 | STARBOOK TEN | パルス | ¥520,000 |
NEWアトラクス | 約22キロ | 19.7キロ | 0〜72度 | 内蔵6倍 | 180 | 180 | STARBOOK | DC | ¥498,000 |
AXJ | 約22キロ | 17.4キロ | 0〜70度 | 内蔵6倍 | 225 | 192 | STARBOOK TEN | パルス | ¥700,000 |
AXD | 約30キロ | 25キロ | 0〜70度 | 内蔵6倍 | 270 | 216 | STARBOOK TEN | パルス | ¥980,000 |
AXD2 | 約30キロ | 25キロ | 0〜70度 | 内蔵6倍 | 270 | 216 | STARBOOK TEN | パルス | ¥980,000 |
GAIAX | 約44キロ | 59キロ | 0〜?度 | 内蔵6倍 | 216 | 216 | STARBOOK | DC | - |
※赤道儀の価格は、調査した当時の税抜き価格です
赤道儀雑感
こうして赤道儀の仕様を一覧にまとめてみると、赤道儀の傾斜角度に制限があるものがタカハシ赤道儀の中にいくつか見受けられます。 これは日本で撮影するときには全く問題がありませんが、赤道に近い低緯度地域に機材を持ち出すときには重要な数値になります。 グアム島やサイパン島にせっかく赤道儀を持っていっても、北極星を合わせられないという事態になりかねません。 こうした目的でタカハシ赤道儀を選ぶときには注意が必要です。
ビクセンとタカハシを見比べると、同じ大きさの機種でも、ビクセンの方が総じて搭載重量の値が大きくなっています。 これはビクセンの方がより丈夫で多くの機材を載せられるというよりも、メーカーの考え方の違いでしょう。 ビクセンは観望用途で載せられる最大重量を考えていて、タカハシは撮影にも十分に使える耐荷重を算出しているようです。 購入時には、こうした点も注意して選んだ方がよいでしょう。
ビクセンSXP赤道儀2011年に登場して以来、天体写真ファンに人気があるのがビクセンSXP赤道儀です。 SXD赤道儀で評判の悪かったDCモーターやコントローラー等を変更して、 より写真撮影に使い易く仕上げられた赤道儀です。 メーカーは搭載重量を16キロまでとしていますが、 写真撮影に使うなら10キロ以内にしておく方がよいと思います。 口径10センチまでの屈折望遠鏡と合わせて使うのに適した赤道儀です。 別売りのアドバンスユニットと組み合わせると、パソコン無しでオートガイド撮影も行うことができます。 |
※コンパクト赤道儀の性能についてはポータブル赤道儀の比較ページに掲載しています。