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ビクセン コレクターPH と タカハシMT-200

ビクセン コレクターPH(Coma Corrector PH)は、2015年に発売開始されたコマ収差補正レンズです。 以前のコマコレクターと比べ、星像がシャープになったと評判で、天体写真ファンからの評価が高い補正レンズです。

コレクターPHは、ビクセンR200SS用ですが、今回は、コレクターPHを他社製の「タカハシMT-200」に取り付け、 F値が異なるニュートン式反射望遠鏡にも流用できるかどうかを検証しました。

コレクターPHについて

コレクターPHは、ニュートン式反射望遠鏡(以下:ニュートン反射)の写野周辺で発生するコマ収差を補正するコンバーションレンズです。 焦点距離を短くするレデューサーと異なり、コレクターPHを望遠鏡に取り付けても焦点距離はほとんど変わりません。

ビクセンコレクターPH

コレクターPHのレンズ構成は、Wynne型の3群3枚が採用されています。 Wynne型は、従来のメニスカスレンズを1枚使ったコレクターや、 2枚のレンズを使ったJonesBird型コレクターと比べ、個々のレンズ間隔を広くとっているのが特徴です。 そのため、コレクターPHの鏡筒長さは78ミリもあります。

また、Wynne型コレクターは一般的に価格も高く、コレクターPHの定価は60,000円(税抜)です。 従来のコマコレクター3が1万円前後でしたので、6倍程度の価格になりました。

ビクセンコレクターPHの外観図

コレクターPHのフランジバックは、56.5ミリです。 同社のR200SSに装着する際は、コレクターPHを直焦ワイドアダプターに取り付け、 直焦ワイドアダプターごと、R200SSの接眼部にねじ込みます。 今回は、F値の異なるMT-200でしたので、少々工夫が必要でした。

MT-200にコレクターPHを接続

MT-200のドロチューブのネジ径は、 幸いビクセンと同じ「M60 P=0.75」です。 従って、コレクターPHを取り付けた直焦ワイドアダプターを直接ねじ込めますが、 筒外焦点が長く、ドロチューブをいっぱいに伸ばしてもピントが合いませんでした。

そこで、下画像のような延長筒をコスモ工房に製作を依頼しました。

ビクセンコレクターPH用のM60延長筒

ビクセンコレクターPH用のM60延長筒

完成した延長筒を、MT-200のドロチューブと直焦ワイドアダプターの間にねじ込み、 コレクターPHを取り付けました。 結果、MT-200のドロチューブを約10ミリ引き出したところで、星にピントが合うようになりました。

※ニュートン反射望遠鏡の場合、主鏡と斜鏡の位置によって、ピントが合う位置が変わりますので、 上記延長筒の寸法やピント位置は、あくまで一つの目安としてください(光軸調整によってピント位置はかわります)。

MT-200とコレクターPHの星像

MT-200にコレクターPHを取り付け、35ミリフルサイズ冷却CCDカメラのSTL-11000Mを使って、 星空を撮影しました。なお、STL-11000Mはモノクロタイプの冷却CCDカメラで、 テスト撮影にはIR-Cutフィルターを用いました。露光時間は15分です。

下画像が撮影画像の全体と、ピクセル等倍の各部星像です。 星像が見やすいように、ダーク・フラット補正処理後に、 レベル補正とデジタル現像処理を行った画像を掲載しました。

ビクセンコレクターPHとMT200の星像

ビクセンコレクターPHとMT200の星像

ビクセンコレクターPHとMT200の星像

ビクセンコレクターPHとMT200の星像

ビクセンコレクターPHとMT200の星像

ビクセンコレクターPHとMT200の星像

上記画像では中心から最周辺部までの星像がわかりづらいため、 長辺約3,000ピクセルの大きな画像(JPEG)を下記にアップロードしました。

コレクターPHとMT-200の撮影画像

リンク先を押すと大きな画像が開きますので、ダウンロードして星像をご確認ください。 なおファイルサイズは、2MB程度ありますので、通信環境にご注意ください。

それぞれの拡大画像を見ると、最四隅は星像が流れていますが、その部分以外は星は点像を保っているのがわかります。 また、四隅の星像の流れ方が異なっているので、スケアリングや光軸を微調整すれば、 更に良い星像が得られる可能性が高いと感じました。

MT-200とコレクターPHの周辺減光

上記と同じ機材で撮影したフラットフレーム画像を下に掲載しました。

ビクセンコレクターPHとMT200のフラットフレーム

中心付近は明るいですが、四隅に近づくにつれ、背景の明るさが落ち込んでいるのがよくわかります。 ステライメージ8のカブリ補正コマンドで明るさの傾斜を確認すると、 中心付近はフラットですが、APS-Cセンサーサイズの辺りから、一気に光量が減っています。

ビクセンコレクターPHとMT200のフラットフレーム

上記の結果から、35ミリフルサイズセンサーで撮影する場合は、フラットフレームをきっちりと撮影し、 フラット補正でしっかりと周辺減光を補正する必要があると感じました。

MT-200とコレクターPHの使用後の感想

タカハシMT-200には、タカハシ純正のコレクターが付属し、 オプションでレデューサーレンズも用意されていましたが、どちらも設計やコーティングが古く、 現在のデジタル機材では性能不足の感がありました。

ビクセンコレクターPHとMT-200

撮影時は、テレビュー社のパラコア等を使用していましたが、2インチスリーブ差し込み形状のため、 毎回撮影時にスケアリングの微調整が必要で、使用しなくなっていました。

今回、思い切ってコレクターPHを購入し、MT-200に使用してみたところ、 フルサイズ四隅での星像は若干流れるものの、全体的にシャープで満足できました。 コレクターPHとMT-200の相性は良好と言えそうです。 また、コレクターPHはレンズの抜けがよいのか、他のコマコレクターに比べて、得られた画像が明るく感じたのも好印象です。

四隅の星像を見ると、35ミリフルサイズできっちりと撮影する場合は、 光軸の微調整(今回の場合は斜鏡の前後位置の微調整)が必要と感じましたが、 上手く調整できれば、更に良好な星像が得られる感触を得ました。

まとめ

コレクターPHは、ビクセンR200SS用の補正レンズですが、汎用性が高く、 SkyWatcher製のBKP200をはじめ、他社製のF4ニュートン反射によく使用されています。

今回は、R200SS(F4)に比べ、F値が暗いタカハシMT-200(F6)に使用してみましたが、 特注のリングの製作が必要だったものの、35ミリフルサイズでも、満足できる結果が得られました。

周辺減光は若干多めですが、最近流行のセンサーサイズの一回り小さなCMOSカメラなら、 四隅でも光量落ちはそれほど感じられず、隅までシャープな星像を楽しめるでしょう。

30年以上前に製造された古い反射望遠鏡が、新しい補正レンズで復活するのは痛快です。 MT-200の他にも、F値が若干暗い(6.3)のMT-160でも使用できそうです。 ニュートン式反射をお持ちの方は、コレクターPHを試されてみてはいかがでしょう。

コレクターPH
ビクセン コレクターPH

ビクセン コレクターPHは、2015年に発売開始された同社のニュートン反射「R200SS」用の補正レンズです。 従来の補正レンズに比べ、星像、シャープさ共に大幅に向上しており、 ハイアマチュアにも満足できる補正レンズに仕上がっています。

一方、価格は以前のコマコレクターに比べて大幅に高くなり、税抜定価で6万円です。 また、最近のビクセンは、高級機種については値引きしない傾向が強く、定価販売が基本なのでさらに高く感じられます。

価格は高いですが、多くの天文ファンの評価を見ても性能は折り紙付きです。 今回のテストで、F6のニュートン反射にも使用できそうな結果が得られたので、更にユーザーが増えるように思います。

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