SIRUI K-20X 雲台のレビュー
SIRUI社のSIRUI(シルイ) K-20Xは、アルカスイス規格のクイックリリースが搭載された自由雲台で、 同社のG-20Xの後継機にあたる機種です。 G-20Xよりボールの直径を大きくすることによって、強度を増したモデルです。
星空撮影用としては、アルカスイスの自由雲台Z-1を主に使っていますが、 今回、ポータブル赤道儀にデジタルカメラを複数台載せるため、 SIRUIのK-20Xを新たに購入しました。
SIRUI K-20X雲台の概要と各部写真
SIRUI K-20Xは、アルカスイスの自由雲台と同様に、 本体横に設けられた、ボール固定ツマミを回して固定力を調整するタイプの自由雲台です。 固定ツマミの外観は、アルカスイスZ-1によく似ており、内側にメモリが打たれているところまでそっくりです。 固定ツマミには、ボールを緩めたときのフリクションメモリー機能が設けられています。
K-20X自由雲台のヘッドには、アルカスイス規格のクイックリリースクランプが取り付けられています。 クイックリリースクランプの固定方式は、ワンタッチ方式ではなく、天体望遠鏡のアリガタでお馴染みのねじ込み方式です。 天体写真ファンとしては、この形式の方が機材をしっかりと固定できて安心感があるのではないでしょうか。
クイックリリースクランプの上面と側面部分には水準器が内蔵されていますので、 カメラが水平になっているかを確認することができて便利です。 また、K-20Xには、アルカスイス規格のクイックシューTY-60が標準で付属しています。
SIRUI K-20Xは、中国のカメラ用品メーカー「SIRUI社」が製造している自由雲台です。 日本では、常盤写真用品株式会社がSIRUI製品の販売を受け持っています。 アルカスイス規格の自由雲台としては、バンガードやマーキンスの雲台が有名ですが、 SIRUI社の製品はそれらの商品と比べて価格が手頃なのが魅力です。
SIRUI K-20Xとアルカスイス自由雲台の比較
右の写真は、SIRUI K-20Xとアルカスイスの自由雲台Z-1を並べたところです。 アルカスイスZ-1と比べると、K-20Xは高さ、直径共に一回り小さいことがわかります。
実際に手に持ってみると、SIRUI K-20XはZ-1に比べてかなり軽く、 コンパクトに感じられます。 雲台本体の重さはZ-1が580g、K-20Xは430gと、K-20Xの方が100g以上軽くなっています。
各部の操作感については、どちらも非常にスムーズで実用的には全く問題ありませんが、 クランプフリーの動きはアルカスイスZ-1の方が軽いです。 ただ、SIRUI K-20Xの方はフリーでも若干抵抗が残る分、カメラを載せるときは、アルカスイスよりも扱いやすいかもしれません。 クランプを締め付けると、どちらも雲台部分がしっかりと固定され、手で動かそうとしてもビクともしません。
自由雲台の保持力を決めるのは、雲台に使用されているボールの直径です。 アルカスイスZ-1のボール直径は50ミリ、SIRUIのK-20Xのボール直径は38ミリです。 この違いが最大搭載過重にも表れています。 カタログによれば、アルカスイスZ-1は59キロ、SIRUIのK-20Xは25キロです。
なお、SIRUIには、K-20Xの上位モデルが存在します。 一つ上のK-30Xはボール径が44ミリ、最大搭載過重が30キロです。 SIRUI社最大の自由雲台K-40Xには、直径54ミリのボールが用いられ、最大搭載荷重は35キロとなっています。
SIRUI K-20Xの使い勝手
SIRUI K-20XはアルカスイスZ-1よりも一回り小さいため、軽量なカーボン三脚とマッチします。 下の左写真は、ジッツォのトラベラー三脚「GT1541T」にK-20Xを取り付けたところです。 大きさのバランスがちょうど良い具合で、全体の重さも軽く、持ち運びしやすくなりました。
下の右写真は、K-20X自由雲台にキヤノンEF200mmF2Lレンズを載せた様子です。 写真では、レンズに比べて自由雲台が小さいのでグラつきそうに見えますが、 ミラーショックに気を使えば実用上は問題ありませんでした。 サンニッパクラスのレンズとフルサイズデジタル一眼レフカメラの組み合わせでも搭載できると思います。
K-20Xを手に入れて以来、様々なシチュエーションで使用していますが、 ノブを軽く回せば十分な固定力を発揮してくれ、大変使いやすいです。 ただフリクションメモリー機能については使い方がよくわからず、まだ使用していません。
SIRUI K-20Xの固定力と強度
今回K-20Xを購入したのは、ポータブル赤道儀を用いた星空撮影に使用するためです。 一般撮影と比べて星空撮影は露出時間が長いため、雲台の固定力が重要になります。 そこで、実際にK-20X雲台に望遠レンズを載せて、固定力のテストを行ってみました。
まず、赤道儀に取り付けたK-20X雲台の上に、 デジタル一眼レフカメラと55-250mmのズームレンズを載せて、 天頂付近で輝くうしかい座のα星アークトゥルスをテスト撮影しました。 撮影時の焦点距離は250ミリ、露出時間は300秒でテスト撮影を実施しました。 なお、自由雲台とデジタル一眼レフカメラの固定には、Really Right StuffのL型プレートを使用しています。
下に、撮影時の機材の様子と、撮影結果を掲載しました。 撮影結果は、中央部のピクセル等倍画像ですが、赤道儀のピリオディックモーションで星が若干流れているものの、 ほぼ点像を保っています。 このことから、K-20Xの保持力はこの機材を保持できる強度があると思われます。
SIRUI K-20Xの強度テスト撮影中の様子 | |
撮影結果(中央部のピクセル等倍画像) ※撮影中に薄雲が通過したため、コントラストが落ちています |
次に、より大型の機材として、コーワのテレフォトレンズ「PROMINAR 500mm F5.6 FL」を選びました。 マウントアダプターTX07を取り付け、その後ろにデジタル一眼レフカメラEOSKissX3を取り付けましたので、 35ミリ換算で約560ミリの焦点距離です。 これを先ほどと同じように、赤道儀に取り付けたK-20X自由雲台の上に載せて、 天頂付近で輝くうしかい座のα星を300秒露出で撮影しました。
下が、撮影時の機材の様子と、撮影結果です。 撮影結果を見ると、撮影中に僅かにデジタルカメラが動いたのでしょうか、先ほどより大きく流れているものの、 焦点距離を考えると優秀と言えるでしょう。 焦点距離が長く重い機材ですので、小型の自由雲台には無理がある組み合わせと考えていましたが、 K-20Xの保持力は思っていたよりも強いようです。
SIRUI K-20XにコーワPROMINAR 500mm F5.6 FLを載せてテスト中の様子 | |
撮影結果(中央部のピクセル等倍画像) |
まとめ
SIRUI K-20Xは、星空撮影に使いやすい大きさのアルカスイス互換の自由雲台です。 小型軽量のため、星空撮影において重要な固定力があるかどうか不安でしたが、 今回の星空撮影テストを通じて、望遠レンズを支持するだけの強度があることがわかりました。
星景写真やポータブル赤道儀を使った星空撮影が注目を集めるにつれて、 手に入れやすい価格帯のアルカスイス互換の自由雲台が求められていました。 SIRUI社のK-20Xは、価格と性能のバランスが良い雲台という印象を受けました。 これなら星空撮影用の自由雲台としても十分使えるのではないでしょうか。
SIRUI製品を使用したのは今回が初めてでしたが、K-20Xの印象がよかったので、 他の製品にも興味がわいてきました。 SIRUI社は雲台の他にもカメラ三脚なども製造しているので、 機会があれば使用してみたいと思います。
追記
真冬の富士山にて、星空撮影のため、気温マイナス10度の場所でK-20Xを撮影に使用したところ、 クランプが固く、手で回すのが一苦労に感じられました。 たまたまかと思いましたが、次の夜も同じような症状が発生したので、 低温下の状況ではクランプが固くなってしまうようです。 個体差もあるかもしれませんが、真冬の星空撮影など、気温が低くなる場所での使用は、 不向きな自由雲台だと思います。
SIRUI 自由雲台 K-20Xアルカスイス互換のクイックシューが付属した、SIRUI K-20X自由雲台です。 小型ながら、必要十分な固定力のある雲台で、購入以来、いろいろなシチュエーションで使用しています。 ポータブル赤道儀の2連撮影でも使用する予定です。 アルカスイス互換の自由雲台は高価な製品が多いのですが、 その中でSIRUI社の製品は比較的リーズナブルです。 ヨドバシカメラには実機が置いてあるので、実際に触って確認してから購入を考えてもいいでしょう。 星空撮影用として、アルカスイス互換の自由雲台を探している方には、お勧めできる製品の一つだと思います。 |
シルイ K-20X自由雲台のスペック
SIRUI(シルイ) K-20X自由雲台の仕様を以下に示します。
名称 | K-20X |
ボール直径 | 38mm |
耐荷重 | 25kg |
重さ | 430g |
高さ | 98mm |