タカハシTOA130S 天体望遠鏡の使用感
タカハシ TOA-130は、2003年に発表された屈折式天体望遠鏡です。 私は、この天体望遠鏡を2005年に購入し、月・惑星の観望や、星雲星団の撮影によく使用しています。 眼視、写真を問わずシャープな像結んでくれるので、自分の機材の中でもお気に入りの一本です。
タカハシTOA130Sの概要
タカハシTOA130は、2003年の火星大接近に合わせて開発された、3枚玉アポクロマート屈折天体望遠鏡です。 特殊低分散ガラス(EDレンズ)2枚を含む3枚のレンズで構成された対物レンズは、 最適な間隔を開けて配置されていて、可視光域での軸上色収差ををほぼ解消しています。
天体望遠鏡を実際に覗くと、TOA-130の色収差の少なさがよくわかります。 特に従来の2枚玉アポクロマート鏡筒をお使いの方は、 色収差が感じられない反射望遠鏡のようなスッキリした星像に驚くと思います。 私も購入当時、2枚玉フローライトアポクロマートのタカハシ FS-128と見比べましたが、 色収差の違いを明らかに感じました。
TOA130のレンズセル(黒い部分)
セルは前後に分かれていて、ビニールテープで間を塞いでいる
色収差が少ないので、木星の縞模様も色の違いがよくわかります。 口径が大きな15センチクラスのアポクロマート屈折望遠鏡には、像の明るさの面で劣りますが、 解像感という点では十分満足できる見え味だと思います。 以前、このTOA130望遠鏡で撮影した木星の写真がありますので、 是非ご覧ください。
高性能なTOA-130ですが、間隔を開けて3枚のレンズが配置されているため、対物レンズが外気に馴染むまで時間がかかります。 特に気温変化の激しい冬場は、レンズが外気に十分に馴染むまでは、私の経験では3時間程度かかります。 レンズの温度が変化すると、ガラスが変形してピント位置が変化してしまうため、 撮影中に何度かピントを合わせ直す必要があります。
タカハシTOA130Sとデジタルカメラの相性
色収差がよく補正されているため、最新のデジタル一眼レフカメラを使用して星雲や星団を撮影しても、 輝星周りの青ハロに悩まされることはありません。 屈折望遠鏡の中で色収差という点では、並ぶものがないほどの性能を持った天体望遠鏡だと思います。
デジタル一眼レフカメラでの撮影に適した望遠鏡ですが、 レデューサーを使用しても、F6程度までしか明るくならないのが少々残念です。 非常に淡い星雲を狙うには、できれば、F4前後の明るさが欲しいところですが、 明るめの系外銀河や星雲を、長めの焦点距離でじっくり狙うのには問題ないでしょう。
冷却CCDカメラを使っての撮影では、TOA130の解像力の高さを存分に発揮させることができます。 反射望遠鏡と異なり、スパイダーや斜鏡による光の遮蔽がないため、 像のコントラストが高く、銀河の細かい模様まで解像してくれるように感じます。
※2013年4月に、F5.4まで明るくなる「TOA-35レデューサー0.7×」が発売されました。
タカハシTOA130SとSTL11000の相性
私が愛用しているのは、鏡筒の接眼部分の細い「Sタイプ」のTOA130鏡筒です。 鏡筒が細いため、初めて撮影するまでは、フルサイズ冷却CCDカメラの全面に渡って、 光が届くだろうか不安に思っていました。
実際にTOAレデュサーを取り付けて撮影してみると、 若干周辺減光は大きく感じられるものの、フラット補正で十分補正できる範囲であることがわかりました。 ギャラリーにTOA-130Sにレデューサーと取り付けて撮影した「馬頭星雲」 の写真を掲載していますが、フラット補正すれば、35ミリフルサイズカメラでも全面に渡って均質な画像を得られると思います。。
一方、レデューサーと異なり、TOA-130S用のTOA-35フラットナーを付けて撮影すると、] 周辺減光が目立ち、画面四隅はケラレてしまいます。 フラット補正でなんとか補正は可能ですが、ケラレた部分の階調は少なく、 画像処理すると荒れてしまいます。 また最四隅の星像も流れ気味ですので、フラットナー焦点で撮影を考えているなら、67フラットナー対応のF鏡筒がお勧めです。
※ギャラリーに載せているアンドロメダ大銀河の写真が、 TOA130Sにフラットナーを付けて撮影した写真です。 大きな画像をご覧いただくと、写野の一番隅の星が放射状に写っていることがわかると思います。
TOA130Sのフラットフレーム画像
タカハシTOA130S望遠鏡にSTL11000Mを付けて撮影したフラットフレーム画像を下に載せてみました。 周辺減光の目安にしていただければ幸いです。 画像は上がレデューサーを使ったときのもの、下がTOA35フラットナーを使用した時のものです。
マイナーチェンジと豊富なアクセサリー
2009年、TOA-130望遠鏡はマイナーチェンジを経て、TOA-130N鏡筒となりました。 今回のマイナーチェンジでは、対物レンズに使われているEDガラスを、 2枚ともエコガラスのS-FPL53に変更し、セル構造を変更しています。
初期型のTOA130鏡筒は、光軸が振動でずれやすいという問題があったようです。 それを改善したセルの設計変更のようで、TOA130NS鏡筒には、 光軸が以前よりも安定するような構造が採用されているようです。
TOAシリーズの魅力の一つに、レデューサーやエクステンダーをはじめとした豊富なアクセサリー群を使えることがあります。 コンバーションレンズは、TOA望遠鏡に最適化されているので、 使用した時の性能は素晴らしく、一本でいろいろな焦点距離で楽しめる天体望遠鏡になっています。
センサーサイズの大きなカメラ用に645判に対応するレデューサーも登場しました。
非常に高性能はコンバーションレンズですが、645レデューサーは約20万円と、
望遠鏡が一本買えてしまう価格がつけられています。
※645レデューサーは販売が終了しています。
タカハシTOA130で撮影した写真
上記の通り、TOA130望遠鏡の色収差は良好に補正されていますので、 TOA130Sで撮影した写真をプリントしてみても、写っている星がシャープで気持がいいものです。 特にフルサイズのモノクロ冷却CCDカメラを使って撮った写真は、像の解像感が素晴らしく、美しい作品に仕上がりました。 最高の天体写真を撮るための機材を探してられる方にも、お勧めできる望遠鏡だと思います。
写真販売のページでは、このTOA130望遠鏡で撮影 したプリント販売ページを設けています。 お部屋などの展示用に販売している高クォリティのプリントですが、TOA130の天体写真適正の 確認用としてもご利用頂けましたら幸いです。
TOA130の光軸
TOA130の対物レンズセルには、一般的な屈折望遠鏡と同じように光軸調整用のネジが取り付けられていますが、 調整ネジの数は、通常の倍(6か所)設けられています。 セル全体を調整するネジが3ヶ所、トリプレットのレンズ間隔を調整するネジが3ヶ所です。
万一光軸がずれてしまった際には、このネジを調整することでユーザーが光軸を合わせることができますが、 TOA130望遠鏡はレンズの間隔が開いたトリプレット構造のため、レンズ間の距離も考えて調整する必要があり、 マニュアルにはメーカーに調整を依頼してほしいと書かれています。
実際のところ、私のTOA-130は僅かな光軸ズレを感じ、2015年にレンズクリーニングを兼ねて、メーカーで調整を行いました。 その後はほとんどずれていませんが、10年に一度はチェックした方が良さそうに思います。
AstroDreamTech社の鏡筒バンド
高橋製作所からTOA130用の鏡筒バンドとして、一体型の156Sと分割型の156WTが販売されています。 私は156WT鏡筒バンドを購入し、支持幅を広げて使用していましたが、 長年使っていたためか、ヒンジ部分にガタが出てきてしまいました。 これでは、重いTOA130鏡筒を安定して保持することができません。 そこで、K-Astecから発売されている、AstroDreamTech社の鏡筒バンドに交換しました。
AstroDreamTech社の鏡筒バンドは、純正の鏡筒バンドと同じようなヒンジ式になっています。 天体写真ファンには、上下分割式の鏡筒バンドの方が人気があり、これをアリガタ・アリミゾシステムで運用するのが一般的です。 そちらでも良かったのですが、ヒンジ式の方が使い慣れているので安心できるというのと、 手元に大きなサイズのアリガタ金具がなかったこともあり、この鏡筒バンドを購入することに決めました。
肝心の使い心地ですが、純正の鏡筒バンドよりもAstroDreamTech社の方が真円率が高いのでしょう、 鏡筒に上バンドを乗せると吸い付くようで、固定ネジを軽く締めただけでTOA130をしっかりと保持してくれました。 付属してきたプレートが小さいので、鏡筒バンドの支持幅は狭いのですが、 子午線通過時でもぶれることなく、安定して撮影することができました。
鏡筒バンドの固定位置について
撮影時のブレやたわみを避けるため、鏡筒バンドの間隔はなるべく広く取るようにしています。 支持幅を一杯に広げると、前側の鏡筒バンドは、フードのすぐ後ろに位置することになりますが、 レンズを圧迫しているのではないかと、時折質問をいただきます。
高橋製作所に確認したところ、筒の強度は十分高く、 3枚玉のセルは前側から固定しているので、レンズ圧迫の恐れは全くないそうです。 ですので、TOA130の鏡筒は、前側3分の1程度のところで分割できるようになっていますが、 この前部分を鏡筒バンドで締め付けても問題ないと思います。
2枚玉のFS-152と比較してみて
TOA-130Sの他に、鏡筒径が全く同じで、口径のより大きなFS-152も所有しています。 FS-152とTOA-130Sは、重さはほぼ同じですが、TOA-130Sはレンズ側が重く、 前後のバランスが偏っているため、FS-152よりも持つと重く感じられます。
一方、鏡筒の長さは、伸縮型フードが採用されたTOA-130Sの方がFS-152よりもかなり短く、 収納場所にそれほど困らないのが美点です。
光学性能を比べると、FS-152の方が口径が大きく集光力がある分、像が明るく感じられますが、 色収差の少なさの点ではTOA-130の方が優れています。
天体撮影に用いると、2枚玉のFS-152の方が外気温度順応が早く、実用的に感じられます。 冬場、TOA-130にTOA-35レデューサー0.7×を使用して撮影を行うと、温度順応に数時間以上もかかることがあります。 また、温度変化時のピント移動量も大きく、チェックを怠るとピンボケ画像を量産してしまいます。
2枚玉フローライトのFS-152は使いやすく、観望の他、フラットナーレンズを併用して天体撮影にも愛用しています。 しかし、レデューサーを使用すると色収差が若干発生するため、 広い画角が必要な場合は、3枚玉アポクロマートのTOA-130を使用しています。 将来、FOA-60のような2枚玉で、 色収差補正に優れた屈折望遠鏡の大口径バージョン(FOA-130)が登場すれば、とても使いやすいと思います。
タカハシTOA130S望遠鏡のスペック
TOA130S望遠鏡の仕様を以下に示します。
名称 | TOA-130 TypeS |
形式 | 3群3枚完全分離式 スーパーアポクロマート |
有効口径 | 130mm |
焦点距離 | 1000mm |
口径比 | 1:7.7 |
鏡筒径 | 156mm |
鏡筒全長 | 1012mm-1145mm(フード伸縮式) |
重量 | 10.5kg |
名称 | 67フラットナー(130F専用)(KA31583) |
焦点距離 | 1000mm |
イメージサークル | φ92mm(光量60%) |
名称 | 35フラットナー(KA31582) |
焦点距離 | 980mm |
イメージサークル | φ40mm(光量60%) |
名称 | TOA-35レデューサー(KA31580NS) |
焦点距離 | 698mm |
イメージサークル | φ44mm(光量60%) |
名称 | エクステンダーTOA1.6×(KA00595) |
焦点距離 | 1600m |
イメージサークル | φ40mm(光量60%) |
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