SBIG ST-iオートガイダー
ST-iオートガイダーは、SBIG社から新しく発売された小型のCCDカメラです。 ST-iは、主にオートガイダーとして使うことを目的に開発されているようですが、惑星撮像にも使うことができます。
このST-iのCCDには、モノクロタイプとカラータイプが用意されています。 私はオートガイダーとして使いたかったので、感度の高いモノクロタイプのST-iを選びました。 このページでは、そのST-iオートガイダーの使い勝手などをまとめています。
ST-iオートガイダーの概要
ST-i本体の大きさは非常に小さく、ビクセンのLVアイピースを一回り大きくしたくらいの大きさです。 本体の直径が31.8ミリ程なので、望遠鏡の31.8ミリスリーブに直接差して使うことができます。 感覚的には、アイピースにCCDカメラが付いたような印象です。
ST-iを動作させるためには、パソコンが必要です。 パソコンとST-iを付属のUSBケーブルで接続すると、USBバスパワーにより電源がST-iに供給されて動作を開始します。 パソコンさえ用意できれば、新たな電源は必要ないのでその点は非常に便利です。 なお、ST-iをパソコンで認識するためには、デバイスドライバーが必要です。 ST-iを初めて使う前には、付属しているCCDを使って、SBIG社のCCDOPSなどの制御ソフトをインストールしておく必要があります。
ST-iオートガイダーに使われているCCDチップは、Kodak社のKAI-340Mです。 CCDのサイズは4.73mm×3.55mmで、画素数は646×486画素の約30万画素。ピクセルサイズは、約7.4μmのCCDチップということです。 このKAI-340Mの量子効率を見ると、最大で53%程度と青色の感度が高くなっています。 STL11000Mカメラのリモートガイドヘッドなどに使われている、TI社製のTC-237Hと比べると、若干感度が低いように感じます。 なお、KAI-340Mは、SBIG社の新しいST-X冷却CCDカメラシリーズのガイドチップにも使われています。
ST-iの重さは軽く、重量は70g程です。 非常に軽くて小さいため、ガイド鏡の接眼部に負担が掛かることはないでしょう。 また、外観はワインレッドで高級感があります。ST-iの背面には、下の写真のようにUSB接続端子とオートガイドコネクタが装備されています。 電源が入ると緑色のLEDが点灯します。 なお、ST-iには冷却機能は内蔵されておらず、非冷却のCCDカメラとなっています。
ガイド鏡アッセンブリー
ST-iオートガイダーのオプションとして、ガイド鏡アッセンブリー(アメリカではST-iガイダーキット(ST-i Guider Kit))と呼ばれる小さなガイド鏡セットが販売されています。 赤道儀の負担を減らすには最適と考えて、このガイド鏡ユニットをST-iと同時に購入しました。
ガイド鏡アッセンブリーをST-iオートガイダーに組み付けると、全体は右の写真のようになります。
非常に小さなオートガイダーのできあがりです。
※写真に写っている銀色のアリガタ金具は、ユニットに含まれません。
このガイド鏡のレンズには、コーワのCマウントレンズLM100JCが使われています。 ST-iとこのコーワのレンズは、厚さが約4.5ミリのマウントアダプターを介して取り付けられています。 このアダプターを自作できれば、アッセンブリーユニットを自作することも可能でしょう。 ところで、このレンズがST-iに比べて重くなっていますので、前後の重量バランスが取れる点は、このマウントアダプター付近になっています。 ご自作されるのでしたら、鏡筒バンド幅を広げて、レンズ側も支持した方が安定感が出るように思います。
アッセンブリーユニットに付属するプレートには、ネジ止めするための穴があいています。 私はその穴を利用して、アリガタ金具にユニットを固定して使うことにしました。 こうすることで、アリガタ・アリミゾ方式で赤道儀にワンタッチで取り付けられます。 アリガタにネジ加工するのは専用工具が必要ですので、こうしたアリガタをセットで販売してくれると嬉しいところです。
ST-iの感度
オートガイダーとして使うにあたって重要なのは、やはりカメラの感度です。 感度が高ければ、ガイドマウントなどを使ってガイド星を探す必要がないので、撮影時の負担が軽減されます。 ST-iの感度を調べるために、星空をアッセンブリーユニットを使って撮影してみました。
下が撮影画像です。画像の中央に写っているのは、はくちょう座のγ星です。ST-iの露出時間は1秒。 その下にTheSky6の星図を参考として載せてみました。 撮影画像とこの星図と比べてみると、露出時間1秒で9等星ぐらいの星まで写っているようです。
下は露出時間を10秒にして撮影した画像です。
ここまで露出時間を長くすると、γ星付近の淡い星雲まで写っています。
星も12等〜13等級の暗い星まで写っています。
※星が潤んでいるのは薄雲のためです。
オートガイドに使う露出時間は数秒のことが多いので、このぐらいの感度があれば、プレート直づけでも十分ガイド星を見つけらそうです。
※こちらから上の2つの撮影画像をダウンロードできます(Zip圧縮ファイルです)。 どちらも撮影したそのままの画像で、ファイル形式はFit形式です。 Fit形式に対応するソフト(ステライメージ等)でご覧になってみて下さい。
オートガイドの動作など
ST-iはSBIG社のカメラですので、SBIG社の純正ソフトCCDOPSで制御することができます。 SBIG社の冷却CCDカメラを使ったことがある方なら、すぐに使えるでしょう。 また、純正ソフトでなくても、MaxIMDLのような対応ソフトからも制御が可能です。
実際のオートガイドの精度ですが、自宅でビクセンED103S+レデューサー(焦点距離530ミリ)にデジカメを付けてテスト撮影したところ、 星は真円を保っていました。 露出時間にもよりますが、500ミリ程度までの焦点距離の撮影なら、 ST-iアッセンブリーキットでガイドできそうな印象を持ちました。
遠征撮影では、焦点距離200ミリのカメラレンズと組み合わせて使用してみましたが、 こちらも問題なくオートガイド撮影できました。 このような望遠レンズとST-iを組み合わせれば、非常にコンパクトな撮影システムが組み上がります。 撮影システム全体の小型化を考えている方には、適したオートガイダーの一つだと思います。
LodeStarと比べて
オートガイダー用のCCDカメラとしては、現在StarlightXpress社のロードスター(LodeStar)に人気が集まっています。 ロードスターは、ソニー製のICX429ALという低ノイズかつ高感度のCCDを使ったカメラで、センサーサイズも6.4mm×4.75mmと ST-iよりも一回り大きくなっています。画素数もLodeStarは752×580ピクセルと、ST-iの648×484よりも高画素です。 CCDスペック的には、全ての点でST-iを上回っているといっていいでしょう。
使い勝手の点では、どちらもアイピースのように望遠鏡接眼部に差し込んで使えばOK、と使い易いオートガイダーです。
ただ、LodeStarの場合は、ガイドケーブルを差す端子抜けやすく、また日本ではあまり使われない端子になっているのが残念な点です。
※最近では、このポートをST-iと同じインタフェースに変えてくれるショップもあります。
結論的には、LodeStarを既にお持ちなら、ST-iを新たに買う必要はなさそうです。 ST-iの魅力としては、オートガイダーST-4を世に先駆けて発売したSBIG社の信頼感と、この専用ガイドユニットですが、 ミニBORGやペンシルボーグをはじめとした小さな望遠鏡をガイド鏡として使えば、同じような小型システムは構築できそうです。
これからどちらかを選ぶという場合には、既にSBIGカメラのユーザーなら使い方が同じST-iオートガイダーを、 Webカメラを使ったPHDガイドでオートガイドシステムを既に構築されている方なら、LodeStarを選ぶという形に落ち着くのではないでしょうか。
SBIG ST-i(モノクローム)のスペック
名称 | SBIG ST-I Autoguider |
CCD | Kodak KAI-340 Mono |
CCDクラス | クラス1 |
CCDサイズ | 4.8mm×3.6mm |
画素数(ピクセル) | 648×486 |
ピクセルサイズ | 7.4μm |
バックフォーカス | 13.36mm |
A/Dコンバーター | 16ビット |
オートガイド端子 | RJ-11 |
露出時間 | 0.001秒〜3600秒 |
Readノイズ | 8.6e- |
電源 | USB供給(0.5A at 5V以下) |
ダウンロード回数 | 12フレーム/秒(フォーカス時は21frame/s) |
重さ | 68g |
名称 | ST-i ガイド鏡アッセンブリー |
レンズ | 100mm F2.8 |
付属品 | レンズフード,ST-iバンド1組 プレート,Cマウントアダプター,工具 |
ST-iを使用したPHD Guidingの使い方ページへ