初夏の星空撮影情報
初夏の頃(6月)といえば、一年で一番昼が長くて夜が短い時期です。日本では梅雨の時期とも重なるので、 天文ファン泣かせの月と言えるでしょう。でも梅雨の合間に晴れた日は、気流や透明度がとてもよかったり するので、チャンスが有れば星空撮影や観測に出かけたい時期です。
初夏の頃は、夜半頃に蠍座や射手座が南中を迎え、天候さえ良ければ美しい天の川を眺められます。 新月の頃を事前に調べておいて出かけるとよいでしょう。
薄明終了と開始の時間
天体写真撮影に最適なのは、天文薄明が終わってから天文薄明が始まるまでの間です。 太陽の沈む時間と上ってくる時間は、観測地の経度や緯度に関係しますから、場所によって少し ずつ変わってきます。 以下の表で2008年6月4日の各地の時刻を見てみましょう。
場所 | 日の入り | 天文薄明終了 | 天文薄明開始 | 日の出 |
神戸市 | 19:08 | 20:52 | 3:04 | 4:47 |
札幌市 | 20:08 | 21:24 | 1:44 | 3:36 |
東京 | 18:54 | 20:40 | 2:42 | 4:28 |
沖縄県那覇市 | 19:20 | 20:49 | 4:08 | 5:38 |
北海道は薄明開始が早くて撮影時間が短いですね。それに比べて沖縄は朝が遅くて、ゆっくり撮影できそうです。 一年で一番夜が短い時期なので、暗夜はほんとに少しの間だけです。冬の半分も時間がありません。
今月の月
今月の新月は4日水曜日です。満月は19日木曜日。
上弦の月となるのは、11日水曜日。下弦の月が26日の木曜日です。
月齢から見た撮影期間
6月4日が新月ですが、その前後も撮影に適した時期です。月齢が24を過ぎた頃から月齢が5ぐらいになる までの間が、星雲や星団などの撮影に適した時期です。
今回の6月1日は、月齢26.5から始まります。十分月が小さくて月が上ってくるのも、午前2時過ぎと 遅いので月初めから撮影適期となります。
このように6月の前半、6月1日から7日にかけては、月の心配をほとんどしなくてよさそうです。 一晩中撮影できるでしょう。もちろん天気が良かったらという大前提があります。
また、新月を過ぎて月齢が約5になるのは6月9日です。この頃になれば、空が暗くなったときには、 まだ半月に近い月が南の空に残っていて、午前0時前に西の空へと沈んでいきます。それからが 撮影開始というわけです。
撮影する天体選び
現地に着いてから撮影プランを考えていると、あっという間に撮影時間がなくなってしまうものです。 特に慣れない内は、前もってある程度調べておくのがよいでしょう。 その下調べが案外と楽しかったりするので、二度お得だと思います。 ステラナビゲーターやtheSKYなどの星空シミュレーションソフトがあれば、構図まで考えることができて 便利です。
薄明終了直後
近畿地方の2008年6月4日の薄明終了後の南の空には、 おとめ座のスピカが白く輝いてい見えています。もう春の星座は終わりの時期です。 そのスピカの東側には、夏の星座の代表であるさそり座が輝いているはずです。
やっぱりこの時期のねらい目といえば、さそり座周辺の星雲です。全天で最もカラフルといわれて いるアンタレス付近の散光星雲をまずは狙ってみましょう。 ちょっと淡い星雲で手強いですが、それだけに写し甲斐があります。じっくり撮ってみましょう。
有名な天体は嫌いという方は、球状星団を狙ってみてはいかがでしょう。 さそり座の上で輝くへびつかい座には、M10やM12を初めとする大きな球状星団が輝いています。 こうした天体を撮ったり観望するのも楽しいと思います。
北の空には北斗七星が西に傾き、春の終わりを告げています。春の銀河で賑わっていた北天ですが、 これから夏にかけては、りゅう座のまわりの小さな銀河がねらい目となります。
東の空には、明るい一等星こと座のベガが輝いています。七夕の織り姫星の名前でも有名な星です。 このこと座には、有名なリング星雲M57が輝いていますから、一度望遠鏡で観望してみたいものです。 この星雲は明るいですから、都会でも望遠鏡を使えば見えるかもしれません。ちなみに私は自宅(宝塚市)の 光害の空で見ることができました。
夜半頃
はっきり言って日本は光害が多いので、野山に行っても夜空は夜半までは明るいことが多いです。 ですから、これからの時間が天体写真撮影の本番とも言えます。 普通の人は床につく時間ですが、天体写真ファンは俄然元気が沸く時間です(笑)。
この時期のこの時間と言えば、夏の天の川周辺の星雲がねらい目で す。天の川の中 のM16やM17、 それにM8やM20も撮影することができます。 6月は一年で夜の時間が最も短いので、一晩で全て撮影は難しいでしょうから、お気に入りの対象 から撮影していきましょう。
また、忘れてならないのは、北よりの空から上ること座やはくちょう座です。南側に光害がある観測地なら、 東から上ってくるはくちょう座の北アメリカ星雲を狙うのもよいでしょう。 また、長焦点ならこと座のリング星雲や、子ギツネ座の亜鈴星雲も撮ってみたいですね。
明け方
夜半頃にシャッターを切ると、すべてのコマが撮影終了したときには、天文薄明が始まるかどうかの 時間になってしまっています。6月は夜がとっても短いので、じっくり撮ると、一晩に1対象かがいいところです。
薄明直前の南の空を見上げると、天の川が南中を過ぎて西に傾いているはずです。 また、東の空には、ペガサス座の四辺形が綺麗に見えて、アンドロメダ座も見えていることでしょう。 まだ暑い夏はこれからですが、秋の星座が東の空で輝く時期になってきました。 有名なアンドロメダ銀河も撮影しようと思えば、撮ることが出来る6月です。
この時期の惑星
土星
薄明が終わった頃には、土星は西空高くに見えています。春の星座のしし座レグルスのすぐ隣で輝いて いるので、二つの明るい星が見えれば、その片方が土星です。 土星は視直径(見た目の大きさ)が、17秒前後と小さくなってきて、そろそろ見頃が終わります。
木星
木星は太陽系最大の惑星で、明るさもマイナス2等級と明るいため、夜空に見えていれば、すぐにそれとわかります。 今年はいて座に位置しているので、南天低くて条件が悪いですが、今が観測好機です。
今月の木星は、薄明終了してまもなくすると東の空から昇ってきて、薄明が始まる直前に南の空に南中します。 7月9日の衝に向けて、少しずつ視直径が大きくなってきているので、だんだんと大きく見えるようになります。 今月はそろそろ見頃時期なので、朝早く起きて観望してみるとよいでしょう。
その他の天体
火星は薄明終了した頃に西空に見えていますが、視直径も小さいので見づらくてシーズン終了です。 ただ、今はNASAの火星探査衛星フェニックスが、この火星の上で探査を行っています。 そんなことを思いながら火星を見るのも楽しいでしょう。
金星は太陽に近くて今月は観測するのが難しいです。
水星は、月初めは夕方の西空に低く見えていますが、だんだんと太陽に近づくので 見ることが困難になります。
天文現象
6月7日に、三日月とプレペセ星団が近づきます。夕方の西空で見ることができます。