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アイソン彗星(C/2012 S1)の観測と撮影情報

2013年の二大彗星のうちでも本命と言われているアイソン彗星(C/2012 S1)が、徐々に明るくなってきました。 アイソン彗星は、2013年11月29日に太陽に最接近し、この前後に最も明るくなると予想されています。 彗星は約190万キロメートルの距離まで太陽に近づくため、彗星が太陽の強烈な熱に当たって蒸発し、 マイナス等級の明るさになるのではないかと考えられています。

このページでは、アイソン彗星の見え方や観測条件をまとめています。 アイソン彗星についての新情報が入り次第、こちらのページに追加していく予定です。 できるだけ多くの情報を集めて、話題のアイソン彗星を見逃さないようにしたいところです。


アイソン彗星について

パンスターズ彗星 アイソン彗星(C/2012 S1(ISON))は、2012年9月に2人の天文学者によって発見された彗星です。 アイソンという名前は、発見者が所属していたグループ名から付けられました。 発見時のアイソン彗星の明るさは19等台で、木星軌道よりも外側に位置していました。

アイソン彗星は、2013年春に地球に接近したパンスターズ彗星と同じく、 一度太陽に近づいたら二度と戻ってこない(回帰しない)非周期彗星です。 軌道計算により、近日点通過時には太陽に約190万キロメートルまで近づくとされていて、 この距離の近さから、非常に明るくなると予想されています。

一方で、あまりに太陽に近づきすぎるため、彗星本体が崩壊し、 姿を消してしまうのではないかという声もあります。 これは、現在の技術では予測が非常に難しく、実際に2013年11月29日になってみないとわかりません。 その意味でも、アイソン彗星は注目の天体と言えます。

※右上写真は、2013年春に地球に接近したパンスターズ彗星


アイソン彗星の観測条件

日本からのアイソン彗星の観測条件は良く、8月末の明け方に東北東に姿を現した後、 少しずつ南東に移動しながら徐々にその明るさを増しています。

アイソン彗星が太陽に最も近づく11月29日前後は、アイソン彗星が太陽に近すぎて一旦見えなくなりますが、 12月に入ると、明け方の東南東の空からまた姿を現して、徐々に高度を上げていきます。 12月27日にアイソン彗星は地球に最も近づき、明け方の薄明開始直前に、 地上から40度ほどの高さに見えるはずです。

その後、アイソン彗星は天の北極方向へと移動し、2014年1月8日頃に北極星に最も近づきます。 この頃になるとアイソン彗星は地平線下に沈むことがない周極星となっているので、一晩中観測・撮影することができます。


アイソン彗星の見頃

アイソン彗星は、11月29日の太陽最接近時に最も明るくなる予想ですが、 この時は太陽に近づきすぎて見ることが出来ません。 ですので、アイソン彗星の観測・撮影に適した時期は、この前後となります。 特に太陽に近づく前と後で、どれだけ明るさが増すかが気になるところです。

11月のアイソン彗星

11月のアイソン彗星は、明け方の東空に見えます。 太陽からの距離もだんだん小さくなり、11月上旬には地球の軌道内に入ってきます。

11月中頃になると、アイソン彗星は双眼鏡で確認できる明るさになると予想されており、 星空の綺麗な場所なら肉眼でも見えるかもしれません。 ただ、11月18日に満月となる大きな月が夜空で輝いているので、なかなか難しいかもしれません。 なお、アイソン彗星の地平線からの高度はだんだんと下がっていくため、 東の空が開けた場所で観測することが必要になります。

太陽に最も近づく11月下旬には、アイソン彗星は急に増光する可能性があります。 近日点を通過する11月29日の前には、マイナス等級に達する予想ですが、 この時は太陽に近すぎて観測できません。 アイソン彗星が太陽を回って戻ってくるまでの1週間から10日ほどの間は、観測は小休止となります。

12月のアイソン彗星

12月に入ると、近日点を過ぎたアイソン彗星が再び東の空に姿を見せ始めます。 日を追う毎に地平線からの高度が増すので、見やすくなっていきますが、逆に明るさは徐々に暗くなっていくと予想されています。 しかし、アイソン彗星の尾は近日点通過前よりも伸びて、見やすくなっている予想です。 尾を長く伸ばした彗星の姿を捕らえたいなら、この12月上旬がシャッターチャンスとなるでしょう。

12月下旬になると、アイソン彗星は明け方の東の空だけでなく、夕方の西の空でも観察できるようになります。 12月27日に最も地球に近づくので、12月上旬からこの頃までが、撮影するには最適の時期だと思われます。

2014年1月のアイソン彗星

2014年1月になると、アイソン彗星は北の空で輝くようになり、一晩中沈まない周極星となります。 1月8日には北極星に最も近づきますが、この時のアイソン彗星の明るさは8等星前後の予想で、 残念ながら肉眼ではもう見えなくなっていると思われます。

ただ肉眼では見えなくても、まだ長い尾をまだ伸ばしている可能性があります。 実際、パンスターズ彗星は、太陽に近づいた後、肉眼で見えないほど暗くなってから、 長いアンチテイルを伸ばしました(→ギャラリーのアンチテイルの写真へ)。 最新のデジタルカメラなら、その彗星の尾の様子を比較的簡単に捉えることができますので、 継続的に撮影してみましょう。


アイソン彗星の明るさ

2013年10月のアイソン彗星 アイソン彗星は、発見されたときの軌道計算から、金星や月よりも明るく輝くと騒がれ、 世紀の大彗星と呼ばれるようになりました。 しかし、2013年10月現在のアイソン彗星の姿は右のとおり、 尾は伸びてはいるものの、明るさは予想よりもかなり暗い状態です。

この調子で増光すると考えると、近日点通過時にマイナス等級にはなるものの、 地球から観察できる位置に来たときには、2〜3等級になるのではないかと予想されています。 そうなれば夜空の明るい都会でアイソン彗星を確認することは難しく、アイソン彗星を見るには郊外に出かける必要があります。

しかし2〜3等級であっても、肉眼等級の明るい彗星には違いありません。 アイソン彗星は日本からの観測条件が良いのもアイソン彗星の大きな魅力です。 肉眼では見栄えがしなくても、写真に撮れば迫力ある姿を楽しめるでしょう。 一期一会のアイソン彗星との出会いを、是非とも写真に収めておきたいところです。


アイソン彗星の撮影

ポータブル赤道儀とデジカメ 彗星が太陽に最接近する時期は、薄明の中での撮影となりますが、それ以外はアイソン彗星を暗夜で撮影することができます。 デジタル一眼レフカメラをポータブル赤道儀に載せて、じっくり撮影するのが確実に美しく撮影する方法でしょう。

使用するレンズの焦点距離は、彗星の尾の長さに応じて用意するとよいでしょう。 最近のズームレンズは性能が良いので、70〜200ミリ前後の明るいレンズで撮影を十分楽しむことが出来ます。

もし、百武彗星のような長い尾が伸びたら、広角レンズで撮る方がよいかもしれません。 彗星の尾の長さや形は日々変わるので、撮影に行く際には何本か焦点距離の異なるレンズを持って行くとよいでしょう。

また、天体望遠鏡があれば、彗星の核の部分だけをクローズアップ撮影してみるのもいいでしょう。 この場合は、露出中に彗星が動いてしまわないように、素早く撮影する必要があります。 ISO感度を上げて、彗星をクローズアップ撮影してみましょう。

※詳しい撮影方法は、彗星の撮影方法のページをご覧下さい。


アイソン彗星の撮影場所

近日点通過前後のアイソン彗星は高度が低く、観測・撮影できる場所が地平線まで開けた場所に限られます。 アイソン彗星は、明け方の東の空で見えるため、日の出スポット情報などを参考にして、 彗星の撮影場所を探してみましょう。

12月下旬以降になると、未明の北東の空で観察・撮影できるようになります。 この頃になると地表からの高度も上がっているため、見やすくなりますが、 アイソン彗星自体の明るさも減少しているでしょう。

公共天文台では、アイソン彗星の観望会を企画しているところもあります。 アイソン彗星の位置がわからない方や、どこで観望したらいいかわからないという方には最適ではないでしょうか。 こうしたイベントには、たくさんの天文ファンが来られるでしょうから、 一人で出かけても楽しいと思います。


ラブジョイ彗星も忘れずに

ラブジョイ彗星 アイソン彗星ばかりが注目されていますが、オーストラリアの天文ファン、テリー・ラブジョイ氏が2013年9月に発見した、 ラブジョイ彗星(C/2013 R1)が明るくなってきています。 右は11月初めに撮影したラブジョイ彗星の写真ですが、大きく広がったコマからプラズマテイルも伸びてきており、 見栄えが良くなってきています。

この頃のラブジョイ彗星の光度は7等級前後の予想でしたが、口径4センチの双眼鏡で楽に確認できたことを考えると、 6等級になっていると考えるのが妥当でしょう。 予想を上回る増光ぶりです。 アイソン彗星と比べると、高度が高いので撮影がし易いのもメリットです。 アイソン彗星を撮影に出かけた際には、このラブジョイ彗星も忘れずに撮影してみましょう。


アイソン彗星の最新情報(2013/11/24追加)

アイソン彗星の最新情報 11月上旬まで、アイソン彗星は増光のペースが遅く、天文ファンの間で期待はずれではないかという噂が囁かれていました。 ところが11月中旬になってから、数日間で1等級以上の増光が起こりました。 増光の原因は現在のところ特定されていないようですが、 彗星の核がバーストしたのではないかという意見が大半を占めています。

近日点を間近に控えた急増光で、アイソン彗星は再び注目を集めるようになりました。 右上の写真は、11月22日撮影したアイソン彗星の姿です。 核から筋状の尾が伸びているのがわかります。 太陽に近づいた後は、きっと長い尾を棚引かせて、明け方の東天に姿を見せてくれることでしょう。


科学的にも注目されるアイソン彗星(2013/11/26追加)

2013年11月現在、アイソン彗星は毎秒約45kmの速度で太陽に向かって移動しています。 ロンドンとニューヨーク間を、約2分で移動できるほどの速度です。

この高速で移動するアイソン彗星は、元々はオールトの雲から来たと考えられています。 オールトの雲は、太陽系の端に存在していて、小さな隕石や宇宙のゴミのようなものが集まっていると考えられている領域です。 ここに浮かんでいる宇宙のゴミが、何かの拍子に太陽の引力に引っ張られて落ちてくると彗星になると考えられています。

このオールトの雲は、我々が住む地球をはじめとした惑星ができたときに、誕生したと考えられています。 ですので、オールトの雲の成分を調べれば、太陽系誕生時の謎が解明できるのではないか、と多くの天文学者は考えています。 しかし、オールトの雲は遠く、地球から観測することは大変困難です。 ですので、オールトの雲から太陽に近づいてくる彗星を観測することで、その謎を解明しようとしています。

アイソン彗星以外にもオールトの雲からやってきた彗星はありましたが、 アイソン彗星は木星軌道の外側で発見されたため、長い期間にわたって観測が可能でした。 これほど長い期間にわたって観測された彗星は大変珍しく、科学的にも貴重な彗星だと考えられています。

アイソン彗星は、私たち天文ファンの目を楽しませてくれるだけでなく、 太陽系誕生の謎を解き明かす鍵となってくれるのかもしれません。


太陽の熱で蒸発したアイソン彗星(2013/12/01追加)

アイソン彗星が太陽に最も近づいた11月29日の午前、太陽観測衛星SOHOの映像に注目していた天文界に、 「アイソン彗星が消滅したのではないか?」という第一報が流れました。 それから次々とアイソン彗星関連のニュースが飛び込んできて、 国立天文台も「アイソン彗星が太陽の熱で崩壊したようだ」とプレスリリースを行いました。 世紀の大彗星と言われ、昨年から心待ちにしていたアイソン彗星だけに、この悲報はショックでした。

しかし、今改めて考えてみると、こうしたところが彗星観測の楽しさなのかもしれません。 大して明るくならないといわれていた彗星が、ふたを開けてみると夜空に長大な尾を引く大彗星に様変わりしたり、 大彗星と言われていたものが、結局は平凡な彗星になってしまったりと、彗星には予想を超えた様々なことが起こります。 最新の科学技術をもってしても予測できない彗星の変化。 それが、私たち天文ファンを引きつけるのかもしれません。

アイソン彗星関連本
巨大彗星-アイソン彗星がやってくる

アイソン彗星の接近に向けて、各出版社からは様々なガイドブックが販売されています。 アイソン彗星の観測情報や撮影方法に特化した特集本ばかりの中で、 この本は作者の経験を交えながら、天文や彗星の楽しみ方などが綴られていて、 アイソン彗星関連の本の中では異色を放っています。

作者はNHK番組などでもお馴染みの天文学者、渡辺潤一氏です。 ロシアでの隕石落下の話や天文学者を目指した経緯など、アイソン彗星以外の話題も多く綴られています。 こうした本を読みながら、アイソン彗星の地球接近を楽しみに待つのも一興かもしれません。

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