星空写真の構図
星景写真を撮る時には、風景写真と同じように構図に気をつける必要があります。 風景写真の構図は、いろいろな書籍で説明されていますので、それらを参考にすればよいのですが、 星景写真のフレーミングの決定には、一般写真とちょっと違った天文の知識が必要です。 そうした星空写真の構図についてまとめてみました。
星の動きを知る
日本から見える夜空の星々は、北極星を中心とした円運動をしていて、東から上って西へと沈みます。 この動きは見かけ上、天の赤道付近が最も大きく、北極星に近づくにつれて小さくなります。
星空を固定撮影で撮影すると、撮影する方向によって写る星の動きが異なることに気付きます。 北天を撮れば同心円状に星は写りますし、南天ならほぼ横一直線に写ります。 こうした星の動きを覚えておくと、印象的な星空写真を撮るのに役立ちます。
実際の星の動きは下の四つの写真の通りで、左上から時計回りに北天、東天、南天、西天を撮ったものです。 同心円状の星の動きは、何か神秘的な印象を受けますし、東天の上ってくる星々は力強さを感じさせてくれます。
季節ごとの星座
俳句や短歌に季語があるように、星空写真の世界でも季節毎の星座があります。 例えば、夏の天の川の写真を見れば、夏を感じますし、オリオン座の写真なら冬という具合です。
撮影前には星座早見盤を使って、その季節の星座が何時頃に夜空に現れるか目星をつけておくとよいでしょう。 星景写真を撮る時は、そうした星座を構図に入れると季節感も感じられて、より一層印象的になります。 漠然カメラを夜空に向けて星空を撮るのではなく、こうした星座の位置も意識して撮影すると、より印象深い星空写真を撮れるでしょう。
撮影前に写る範囲を確認
星はとても暗いため、デジタル一眼レフカメラのファインダーでは、星座の形を確認できないことがほとんどです。 そのため、できれば事前に星図などを使って、お使いのレンズで写る星空の範囲を確認しておくとよいでしょう。
パソコンを使える環境なら、星空シミュレーションソフトが便利です。 私も以前は星図を使って構図を事前に検討していましたが、高機能な星空ソフトが登場してからは、 専らそうしたソフトウェアを使っています。
下は代表的な星空シミュレーションソフトのステラナビゲーターの画面です。 さそり座の周りの四角の囲いは、35ミリレンズとAPS-Cサイズのデジタル一眼レフカメラの視野の広さです。 こうして確認すると、写したい星座を撮影するのにちょうどよいレンズの焦点距離がわかります。
画面の水平に注意
地上風景を入れた星景写真を撮影をするときには、画面の垂直水平に注意しましょう。 意図的に水平をずらす以外は、傾いた構図は不安定感を与えてしまいます。 撮影地は暗いため、こうした水平の確認はぞんざいになってしまいがちですが、できるだけ注意して構図を決めましょう。
水平出しを手助けするツールとして、三脚の雲台やカメラのクイックシューに水準器を取り付けるのもお勧めです。 最近のデジタル一眼レフカメラには、デジタル水準器が付いている機種もありますので、そうした機能を有効活用するのもよいでしょう。
印象的な前景を探す
星景写真は、地上風景を前景として取り入れられることが大きな魅力です。 これは逆に言えば、前景の善し悪しが作品の出来を決める大きな要因になるということでもあります。 美しい星景写真を撮るには、構図に入れる星空に合う景色をまず探すことが必要になります。
こうした印象的な前景を探すためには、まだ明るい間に撮影場所に訪れ、下見をしておくことが大切です。 夜になってからでは、風景の全体がよく見えないので、知らない間に電線などが写り込んでしまうことがあります。 それに山奥での撮影では、危険が潜んでいることがあります。 そうした危険な場所を確認する上でも、明るい内に撮影場所に到着しましょう。
星空を大胆に画面に入れる
星空を主体に撮る星景写真では、星空が画面に占める割合を多くした方が、見る人に与える印象を大きくします。 風景写真の一部として星が写っているならいざ知らず、星空を主体として撮るなら、 画面の上4分の3程度は星空にした方がよい場合が多いはずです。
赤道儀を使った追尾撮影では、地上風景は通常構図に入れないで撮影します。 これは赤道儀を使うとデジタルカメラが動くので、風景がずれてしまうからです。 特に何枚も連続撮影して、パソコン上で合成処理する場合には、地上風景を入れない方がいいでしょう。
最近のポータブル赤道儀には、星景写真モードと呼ばれる追尾モードが設けられていることがあります。
これは通常の恒星時追尾の1/3〜1/2程度の速度で赤道儀が動くモードで、これを使うと星はほぼ点像に写り、地上風景も
それほどずれずに撮影することができます。
地上風景を入れて追尾撮影する場合には、こうしたモードで撮影すると、より印象的に撮影できるでしょう。
※恒星時追尾とは、星の日周運動の速度に合わせて赤道儀が動くことです。
月明かりや薄明を利用する
星雲や銀河を撮影する時には、月明かりがない新月の頃が理想的ですが、地上風景を入れた星景写真の場合には、 必ずしもそうとは限りません。 というのも、新月の夜は地上を照らす明かりがないので、地上風景がシルエットとしか写ってこないからです。
地上風景を照らす明かりとしては、月明かりを利用するのが最も一般的です。 とは言っても満月の光は強すぎるので、三日月から半月程度の月明かりがよいでしょう。 月の輝いている方向によって、順光や逆光になりますので、際立てたい風景に合わせて撮影位置を変えるようにします。
また、薄明が始まる頃の明かりを利用するのもお勧めです。 この場合は刻々と明るさが変わるので、適性な露出時間に注意しましょう。 露出時間を余り長くしすぎると、昼間の写真のようになってしまいますので気をつけたいところです。
人工光を利用する
月明かりや薄明の他に、人工的な光を使って前景を際立たせることがあります。 銀塩フィルムの頃は露出時間の決定が難しい夜景と星空の競演でしたが、デジタル一眼レフカメラならその場で撮影結果を確認できますので楽になりました。
夜景の他にも、前景にストロボやライトの光を当てて風景を際立たせる方法があります。 この場合はホワイトバランスが崩れることが多いですが、光源を変えて行うことで面白い結果が得られると思います。
直焦点撮影での構図
星雲や銀河をクローズアップ撮影する直焦点撮影では、天の北極の方向を画面の上にして撮影するのが一般的です。 これは決まり事ではないのですが、慣例としてこうして写すことがほとんどです。
また、カメラの上下を南北に合わせた方がガイド撮影に都合が良いということも、こうした構図をとる一因ともなっています。 撮影対象によっては、構図を傾けたりしてもよいと思いますが、基本は天の北極が北と覚えておくとよいでしょう。
一期一会の星空写真
刻一刻と光の当たり方が変わる風景写真と比べると、星空の動きはゆっくりに見えるかもしれません。 そのため、それほどシャッターチャンスを気にしなくても、ゆっくり構えて撮影できると思いがちです。
しかし実際は、星景写真も撮影チャンスは一度切りのことが多いのです。 何百分の1秒等という速いシャッターを切れる風景写真では、露出時間を変えつつ縦構図と横構図で念のため撮影して おくことは希ではありません。
ところが、星景写真で10分〜1時間も露出する場合には、露出後は星座の位置が大きく変わってしまいます。 そういうことを考えると、撮影対象の星座や星がその風景のベストポイントに来るのは一度きり。 前もって星の動きも予測しながら、全体の構図と露出時間を事前によく考えてシャッターを切る必要があります。
ステラナビゲータ Ver10星空シミュレーションソフトといえば、ステラナビゲーターとも言われるほど日本ではお馴染みの星空ソフトウェアです。 バージョンアップがされる毎に機能が追加され、日食や月食をはじめとした天文現象も表示してくれます。 プラネタリウム機能も搭載されていて、パソコン上で星空の移り変わりを眺めることもできます。 天体望遠鏡を制御する機能があるので、対応している赤道儀とパソコンを繋けば、このソフトウェア上から天体の自動導入も可能です。 星空を撮って楽しむなら、所有していても損はない星空シミュレーションソフトだと思います。 ステラナビゲータ10は、2014年3月末に発売開始されました。 今回のバージョンでは、ステラクラウドと名づけられたオンライン共有サービスが追加され、 ネットと情報共有をより強化したモデルとなっています。 古いバージョンのステラナビゲーターを所有している場合は、優待販売サービスを受けられますので、 その場合はアストロアーツ社のWebサイトで確認してみましょう。 |