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天体写真に向いたデジカメの選び方

天体写真の撮影にも、デジタル一眼レフカメラをはじめとした、デジタル機器が使われています。 銀塩カメラの最後の砦と考えられていた星景写真の分野でも、 現在は、フルサイズデジタル一眼レフカメラが主流になりました。

デジカメの高感度性能が向上するにつれ、多種多様な星空の撮り方が生まれてきました。 このページでは、天体写真撮影に適したデジタルカメラの選び方をご紹介しています。

デジタル一眼レフカメラが最適

ミラーレス一眼カメラが注目されている昨今ですが、 星景写真や天体写真の分野では、デジタル一眼レフカメラが人気です。

デジタル一眼レフカメラは、一般的にミラーレス一眼と比べてボディに熱がこもりにくく、 バッテリーの消耗も少ないため、長時間露出を多用する天体撮影に向いています。

フルサイズ一眼レフカメラ

天体撮影ではデジタル一眼レフカメラの使用率が高い

ミラーレス一眼の中にも、センサーサイズが大きく、ノイズ特性に優れたカメラは存在しています。 しかし、写った微恒星がノイズ処理で消えてしまう現象が一部のミラーレスカメラで発生した影響もあり、 今のところそれほど普及していません。

撮影機能に注目すると、デジタル一眼レフカメラには、バルブ機能が設けられているので、 タイマーリモートコントローラーやインターバル撮影機能を使って、 長時間露出を容易に制御することが出来ます。

一方、今は改善しつつありますが、ミラーレス一眼の中には、バルブ露出に制限が設けられていたり、 インターバル機構が星空撮影に使いづらいモデルが存在していました。 この点もデジタル一眼レフが、天体撮影用として長く愛用されている理由でしょう。

星空・天体撮影用のデジタル一眼レフカメラの選び方

長い間、天体撮影用として、EOSKissシリーズをはじめとした、 APS-Cサイズのデジタル一眼レフカメラが愛用されてきましたが、 キヤノンEOS6Dが登場してからは、徐々にフルサイズ一眼レフカメラに移行するユーザーが増えています。

フルサイズ一眼の一番のメリットは、APS-Cサイズのデジカメに比べてノイズが少ないことです。 また、同じ焦点距離のレンズで、より広い範囲を写し出せるので、星景写真撮影では有利でしょう。 性能を求めるのなら、フルサイズ一眼レフカメラを購入するのがお勧めです。

フルサイズとAPS-Cサイズ一眼レフカメラ

フルサイズとAPS-Cサイズのデジタル一眼レフカメラ
フルサイズになるとボディだけでなく、対応レンズも大きく重くなる

フルサイズに比べると若干ノイズが多いAPS-Cカメラですが、 フルサイズに比べ、ボディやレンズがコンパクトで持ち運びがし易く、 手に入れやすい価格帯なのが魅力です。 これから天体撮影を始められる方には、APS-Cセンサーが用いられたデジタル一眼レフカメラがお勧めです。

なお、天体望遠鏡とデジタル一眼レフカメラを接続して、 星雲や月などの撮影を考えている場合は、購入予定のカメラメーカー用のパーツが、 天体望遠鏡メーカーのオプションに用意されているかをチェックしましょう。

現状では、パーツが豊富なニコンかキヤノン製カメラ用を購入しておくと安心です。 その他のメーカー製にも優れたカメラはありますが、 天体望遠鏡メーカーの対応が追いついていないのが現状です。

星空撮影にバルブ機能は必須

天体写真の世界では、30秒以上の長時間露出が多用されています。 場合によっては、30分や1時間も露出することもある写真分野ですから、 シャッターをずっと開け、センサーに長時間光を当て続けるためのバルブ機能は必須です。

最近のデジタル一眼レフカメラでしたら、バルブ機能は備わっていますが、 中古市場などで古い機種を選ばれるときは注意した方がよいでしょう。 また、バルブでの撮影中、ずっとシャッターを押さえているわけにはいきませんから、 従来のレリーズに当たる、何らかのリモートコントローラーが使える機種を選びましょう。

リモートコントローラーは、「何秒露出で何枚撮る」というように、 インターバル撮影機能を設定できるタイマー式コントローラーがお勧めです。 タイマーを利用できれば、露出中にレリーズを切る時間を気にする必要がなくなるため、撮影が随分と楽になります。 また、最近はデジカメ本体にインターバル機能が設けられた機種も登場しています。

キヤノンとニコンのコントローラー

キヤノンとニコンのリモートコード
ニコン製と比べると、キヤノン製は液晶画面が小さく、暗闇では見づらい

キヤノン製カメラ用の「タイマーリモートコントローラーTC-80N3」が、天体写真ファンに人気があります。 本来はキヤノンEOS6Dをはじめとした上位機種にしか使えないコントローラーですが、 EOSKissシリーズや、EOS80D等の下位機種にも使用できるように追加加工したオリジナル製品が、 望遠鏡販売店などで販売されています。

ニコンユーザーなら「リモートコードMC-36A」が便利です。 ただこの製品も、使用できるのは上位機種のみですので、 下位機種にも使えるタイマーリモートコントローラーが、カメラメーカーから発売されてほしいところです。

純正品だけでなく、中国製の廉価なリモートコントローラーも人気があります。 私は、JJC製TM-CというEOSKissシリーズ用の廉価版コントローラーを購入して、 キヤノンEOSKissX8やEOS80Dの撮影時に使用しています。 耐久性に若干不安はありますが、 Amazonなどで、 メーカー製コントローラーTC-80N3の半額程度で販売されていますので、 コストを抑えたい方にはお勧めできると思います。

ピント合わせにライブビュー機能

天体写真の世界では、被写体が暗いため、カメラのAF機能は使えません。 そのため、マニュアルでのピント合わせが基本となります。

しかし、デジタル一眼レフカメラのファンダー像は暗く、視野の倍率も低いため、 ファインダー越しではピント合わせは難しいです。 そのため、星空の撮影でピントを合わせる際は、短い露出時間でテスト撮影した後、 デジカメのモニター、もしくはパソコンモニターで星の写り具合を確認し、 少しずつピントを追い込んでいく手法が採られていました。

2005年頃から、デジタル一眼レフカメラに、ライブビューモードと呼ばれる機能が搭載されるようになりました。 ライブビュー機能は、デジカメ背面の液晶モニターで、 撮像素子が捕らえている画像を、リアルタイムで表示させる機能です。 ビデオカメラのモニターと同じと考えれば、わかりやすいでしょう。

デジタル一眼レフカメラのライブビュー

ニコンD810Aのライブビュー画面
拡大倍率も高く星のピント合わせも容易だが、キヤノンに比べると若干ノイズが目立つ

ライブビューモードには、拡大表示機能が付いていますので、 液晶モニターに表示されている星像を拡大することができます。 この機能を使うことで、天体撮影時のピント合わせが容易にできるようになりました。 ただカメラのメーカーによって、最大の拡大倍率が異なっています。 星空撮影用途なら、最低でも10倍は欲しいところです。

また、一見同じに見えるライブビュー機能ですが、各メーカーによって、画像の表示方法に違いがあります。 メーカーによっては、ライブビュー画像にノイズが多く、星像が見づらいモデルもあります。 その点、以前から星空撮影に人気があるキヤノンは、ライブビューでの星像を確認しやすく、高評価を得ています。

スマートフォンとWifi接続して、アプリ上でライブビュー画面を確認できる機種もありますが、 星空の撮影地は気温が低いことも多く、スマートフォンの反応が悪くなることがあります。 星空撮影用として購入するなら、カメラ単体のライブビュー機能の善し悪しで選ぶことをお勧めします。

バリアングルモニターは星空撮影に便利

星空の撮影時は、レンズを真上に向けて撮影することが多いので、 デジカメの液晶モニターでライブビュー画像を確認しようと思うと、しゃがみ込んで下から覗かなければなりません。 特に屈折望遠鏡にカメラを接続して星雲や銀河を撮影していると、 カメラが地面すれすれということも起こります。

ペンタックス645zのチルトモニター

バリアングルやチルト液晶モニターは星空撮影に便利

このような状況のときに便利なのが、可動式の液晶モニターです。 可動式のモニターには、バリアングル式やチルト式など様々な方式がありますが、 レンズを上に向けたときに、液晶画面が上に向くタイプが便利でしょう。 天体撮影には便利な機能なので、同じような機種で迷っている場合には、 液晶モニターが可動式がどうかで、機種を選ばれてはいかがでしょうか。

ちなみに液晶モニターが固定式の場合は、USBケーブルでパソコンと繋ぎ、 パソコンの液晶モニター上で画像を確認すると、無理な姿勢を強いられず楽に撮影を行えます。 なお、ニュートン反射望遠鏡の場合は、カメラを望遠鏡の横に取り付けるため、 可動式モニターのメリットは、あまり感じられないかもしれません。

天体用に改造できるモデル

夜空には赤く光る「星雲」という天体がたくさん輝いています。 これは私たち銀河系の中に存在する、星間ガスが光っているのですが、 大きく美しいので、天体写真ファンの被写体として抜群の人気を誇ります。

しかしこれらの赤い星雲は、通常市販されているデジカメで写すと、淡くしか写ってくれません。 これはデジカメのセンサーの前に付いているローパスフィルターが、 この星雲が発している波長の光のほとんどを、カットしてしまうからです。

ばら星雲

天体写真ファンに人気のバラ星雲。市販カメラだと映りにくい被写体だ

赤い星雲を写しだすため、市販されている一眼レフデジカメのフィルターを、 天体写真撮影用フィルターと交換するサービスが人気を呼んでいます。 交換サービスは、一般的に「IRフィルター改造」と呼ばれ、2万円〜5万円程度の費用で行われています。

天文雑誌のギャラリーで見かけるデジタル一眼レフで撮影された赤い星雲写真の大多数は、 IRフィルター改造後のカメラか、天体撮影専用のカメラで撮影されています。

星空や星景写真を撮影する場合は、IRフィルターを換装する必要はありませんが、 星雲を撮影することをお考えなら、IRフィルター改造に対応した機種を購入しておくことをお勧めします。

改造後はメーカー保証がなくなり、天体写真専用デジカメとなりますので、 高級機種を購入して改造するのは覚悟がいります。 そのため、APS-Cなら、キヤノンEOSKissXや、ニコンD5000シリーズ、 フルサイズならキヤノンEOS6Dというように、比較的安価なモデルに人気が集まっています。

天体撮影にはセンサーの基本性能が重要

新しいデジタルカメラが発表される度に、カメラ内の画像処理エンジンの性能が向上し、 高ISO感度時でもノイズの目立たない滑らかな画像が得られるようになっています。 しかし、こうした画像処理エンジンのノイズ処理によっては、 写っていた星が消えてしまったり、星に不自然な色が発生することがあるため、注意が必要です。

微恒星が消える問題は、ミラーレス一眼レフカメラのソニーα7sの「星喰い現象」で広く知られるようになりました。 ソニーα7sは、高感度撮影時のノイズが少なく、動画撮影などで人気を博したモデルですが、 長時間露光すると、写っていた星がノイズ処理で形が崩れてしまうことがわかり、 天体撮影用として使いづらいと評されるようになりました。

デジカメのセンサー

キヤノンEOS6Dの35ミリフルサイズセンサー

撮ったままのリニアな画像が得られる冷却CCDカメラと比べ、 デジタル一眼レフカメラの画像は、RAW画像と言えどもカメラ内で処理した後の画像です。 カメラ内画像処理のお陰で、滑らかで自然な画像を得られるわけですが、過度な処理は天体写真には不向きです。 カメラのスペックに惑わされず、センサーの基本的な性能が優れ、無理のない処理をしているカメラを選択したいところです。

センサー自体の性能はあまり公表されていませんが、 天体撮影に適したセンサーは、天体撮影専用のカメラを製造しているZWO社やQHY CCD社から、 デジカメと同じセンサーが使われたカメラが販売されることがあります。 こうしたメーカーの動向や、天体撮影ファンの使用カメラを参考にすると、 天体撮影向きのカメラを選ぶことができると思います。

メーカー純正天体撮影モデル

赤い星雲を色鮮やかに写すには必須とも言える上記のIRフィルター改造ですが、 このようなデジタル一眼レフカメラの改造には、メーカー保証がなくなってしまうというリスクがあります。 もしカメラメーカーからフィルターを換装した純正モデルが出てくれたら・・・と思っていた時に登場したのが、 キヤノンEOS20Daでした。

キヤノンEOS20Daの生産終了後、2012年春、新しい天体撮影用カスタムモデル「EOS60Da」が登場しました。 このようなメーカー製の天体撮影カメラを使えば、動作不良の場合はメーカー保証が受けられ、 安心して本格的な天体撮影も楽しむことができます。

EOS60Da

キヤノンEOS60Da。EOS60Dに比べてノイズが少ないと話題になった

キヤノンEOS60Daの発売は終了しましたが、当時の実勢販売価格は13万円前後でしたので、 望遠鏡販売店で発売されているフィルター改造EOS60Dと、それほど変わらない価格で購入することができました。

EOS60Daの赤い星雲の写りは改造モデルより若干劣るため、中途半端とも言われましたが、 良好なカラーバランスで、天体撮影に使いやすいカメラでした。

ニコン純正天体撮影モデル

キヤノンEOS60Daの生産が終了し、天体撮影の主流がフィルター改造カメラに戻った頃、 ニコンから、同社初の天体撮影専用モデル「ニコンD810A」が発表されました。

ニコンD810Aのセンサーには、赤い散光星雲が放つ光の波長を通りやすくした、 天体撮影専用のフィルターが用いられています。

ニコンD810Aデジタル一眼レフカメラ

ニコンD810Aは国内外で高い評価を得ている

D810Aの赤い星雲の写り方は、フィルター改造カメラとほぼ同等で、 赤い星雲の写りが若干悪いという意見もあった、キヤノンEOS60Daよりも星雲が写るようになりました。 また、フィルター改造カメラで問題になりがちな、輝星のゴーストも抑えられているのも特徴です。

その他、D810Aには長時間露出モードや、赤色の水準器表示モードなど、星空撮影に使い易い機能が装備されています。

D810Aは、35ミリフルサイズセンサーが用いられたD810がベースになっているため、 APS-CのキヤノンEOS60Daに比べ、価格が高くなりました。 しかし、高い解像度と優れた低ノイズ特性で、天体撮影のハイアマチュアから高い評価を得ているカメラです。

コンパクトデジカメは駄目なのか

一眼レフデジカメやミラーレスでなければ撮影できない思われがちな天体写真ですが、 月や明るい惑星なら、望遠鏡にコンパクトデジカメを取り付けて、 撮影することができます。

一般的にセンサーサイズが小さく、長時間ノイズが多いコンパクトデジカメですが、 月は明るく、速いシャッターが切れるためです。

フルサイズとAPS-Cサイズ一眼レフカメラ

コンパクトデジカメで月をコリメート撮影している様子

月を撮るためのコンパクトデジカメを選ぶ際は、 購入しようと考えているデジカメの形状が、天体望遠鏡のアダプターに取り付けられるかが、 機種選択のポイントになります。

デジカメを手で持っても撮影することができますが、できれば今後のことを考えて、 接続アダプターに対応した機種を選んでおくことをお薦めします。 こうした接続アダプターは、様々な種類が販売されていますので、 天文ショップ等で、どのような製品があるか問い合わせてみるのがよいでしょう。

最近では、星空撮影モードを備えたハイエンドコンパクトが登場しています。 こうした撮影モードを使用すれば、自動で軌跡写真を作成してくれるので、星空の撮影を手軽に楽しめます。 画質は、最新のデジタル一眼レフカメラには及びませんが、 旅行先など、どこでも星空撮影にチャレンジできるのがコンパクトの利点です。

ミラーレス一眼はデジタル一眼を超えるか

ミラーレスとは、文字通り「鏡がない」という意味で、 一般的に、デジタル一眼レフカメラのフレックスミラーやペンタプリズム部分を取り除いた構造で、 レンズ交換ができるデジタルカメラを指しています。

ミラーレス一眼の利点は、光学式ファンダーが必要ないので部品点数が減り、カメラボディを小型・軽量化できることです。 また、フランジバックが短いので、レンズの光学設計の自由度が高まるという利点もあります。

フルサイズとAPS-Cサイズ一眼レフカメラ

フジフィルムのミラーレス一眼は星空撮影用としても使われている

ミラーレスカメラが登場した頃は、高感度ノイズが多かったり、露出時間に制限が設けられた機種が多く、 ミラーレスは星空撮影に不適とされていました。 しかし、現在では星空撮影機能をアピールするミラーレスカメラも登場し、そのような問題は払拭されつつあります。

ミラーレスカメラが注目されてきた理由の一つに、星空撮影の機器として、 ポータブル赤道儀の人気が高まっていることがあります。 ポータブル赤道儀は、通常の赤道儀に比べて搭載可能重量が小さいため、小型軽量のカメラの方が有利です。 軽量でコンパクトなミラーレスカメラなら、このような用途にも対応できるため、 星空撮影用として、ミラーレスの人気は高まっています。

SLIKとケンコーのポータブル赤道儀

コンパクトなポータブル赤道儀に載せるなら、ミラーレス一眼が適している

ミラーレスカメラを天体撮影用として購入する際には、 露出時間に制限がないかを確認しましょう。 機種によっては、バルブ機能の設定がないものや、最長露出時間が仕様で決められている場合があります。 星空の撮影用として考えるなら、インターバル機構やリモートコントローラーで長時間露出できる機種を選びましょう。

マニュアル撮影時のレンズのフォーカス操作についても、確認しておきましょう。 機種によっては、レンズのピントリングが電動になっていて、マニュアルでの微妙な操作が難しい場合があります。 また、ライブビューの感度や拡大倍率が低く、星空のピント合わせが難しい機種もあります。 星空撮影用のミラーレス一眼を選ぶ際は、これらの点を店頭でチェックしておくと安心です。

交換レンズのラインナップもミラーレスを選ぶ際のポイントです。 星空撮影には、開放F値の明るい広角レンズがよく使われますので、 購入予定のミラーレスカメラ用に、明るく、星像が良いレンズが用意されているかどうかもチェックポイントです。 機種によっては、マウントアダプターを使用すれば、一眼レフカメラ用のレンズが使える場合もあるので、 その辺りも考慮しながら、最適な一台を探してみてはいかがでしょうか。

ミラーレス一眼初の天体撮影専用モデル EOS Ra

2019年12月、キヤノンから天体撮影専用のミラーレス一眼「EOS Ra」が発売開始されました。 EOS Raは、同社のミラーレス一眼EOS Rをベースとしたモデルで、 35ミリフルサイズセンサーが使用されています。

以前発売されていたキヤノンEOS60Daと比べ、Hα線の透過率を高く設計されていることもあり、 赤い星雲の写り具合は、改造機やニコンD810Aと同程度になりました。

キヤノン EOSRa

キヤノン純正の天体撮影専用 ミラーレス一眼 EOS Ra

コンパクトなミラーレス筐体のため、長時間ノイズという面では、 キヤノンEOS6D改造機やニコンD810Aと比べると若干多く感じられますが、 ライブビューの倍率が10倍から30倍へと高められるなど、天体撮影を楽しめるモデルに仕上がっています。

ただ残念ながら、キヤノンがEOSRaが発表した時期は、冷却CMOSカメラが天体写真の分野でシェアを伸ばしていた時期と被ってしまいました。 次々と登場する新センサーを搭載した天体写真用冷却CMOSカメラに比べ、 EOSRaのセンサーはEOSRと同等ということで、それほど注目を集めませんでした。 発売が遅すぎたと思います。

まとめ

天体望遠鏡や望遠レンズを使って、赤い星雲の撮影を楽しみたい場合は、 フィルターを天体用に換装できるモデルがお勧めです。 具体的には、キヤノンやニコンのデジタル一眼レフカメラがよいでしょう。

ペンタックスのデジタル一眼レフカメラやソニーのミラーレス一眼も魅力的ですが、 フィルターの改造サービスを受けにくく、望遠鏡の接続アダプターを入手しづらい難点があります。

星景写真や星空の写真を撮ることが目的なら、フィルターの換装は必ずしも必要ではありません。 ノイズが少なく、長時間露光できるデジタルカメラなら、たいていのモデルで星空撮影に使用できます。 本格的に星景写真を撮影する目的なら、フルサイズデジタル一眼レフカメラがノイズが少なく、 明るい広角レンズのラインナップも多く、お勧めできます。

軽量小型の機材で星空を手軽に写したいなら、 オリンパスやフジフィルムなどのコンパクトなミラーレス一眼カメラが向いています。 レンズのラインナップが充実したメーカーの機種を選んでおくと、末永く星空撮影を楽しめると思います。

コンパクトデジカメの中には、星空撮影機能が付いたモデルが登場しています。 海外旅行など、携帯性を重視する場合は、このような機種も考慮に入れてみてはいかがでしょうか。

天体写真向きデジカメの具体例

以下、星空や天体撮影に使用されているデジタルカメラを列記しました。 使用感などを記載しましたので、購入時のご参考になれば幸いです。

キヤノンEOSKissX9
キヤノン EOS Kiss X9 ボディ

キヤノンkissシリーズは、天体写真撮影用として、昔から人気のあるデジタル一眼レフカメラです。 人気の理由は、低ノイズと低価格、それに天体写真撮影に使いやすいオプションが手に入れやすいためです。

EOSKissX9は約450gと小型軽量なので、ポータブル赤道儀にも載せやすく、天体望遠鏡の接眼部に取り付けても、 たわみ等の発生が少ないでしょう。 また、バリアングル液晶モニターが採用されているので、ライブビューも快適で、 星のピント合わせがし易くなりました。

星雲や星団の撮影に人気のKissシリーズですが、 まずはノーマル機で天体撮影してみてから、天文ショップにフィルター改造を依頼する方が多いようです。 星空撮影の用途なら、上位機種で測距点の多いEOSKissX9iは必要ないと思います。

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ニコンD5600
ニコン D5600

ニコンD5600は、DXフォーマット、2,416万画素のCMOSセンサーが用いられた、デジタル一眼レフカメラの入門機です。 D5000シリーズは、EOSKissシリーズのライバル機とも称されているカメラで、 ニコンユーザーの天体撮影ファンは、IRフィルターを換装した、D5600やD5500をよく使用しています。

D5600には、天体撮影に使い易いバリアングル液晶モニターが使用されています。 タッチパネル式が採用されているので、目的のメニューを容易に呼び出すことができて便利です。 なお、一つ前の機種「ニコンD5500」でも、基本的な性能は、ほとんど変わりません。

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キヤノンEOS6D
キヤノンEOS6D

2012年秋に発表されて以来、天体撮影に人気があるのが、キヤノンのフルサイズデジタル一眼レフカメラ、キヤノンEOS6Dです。 画素数はEOS5DMarkIIやEOS5DMarkIIIよりも若干少ないものの、 高感度ノイズが大変少ないので、天体写真ファンに高い人気があります。

星景写真だけでなく、天体撮影用にフィルターを換装して、赤い星雲や銀河の撮影にもよく使われています。 液晶モニターが固定式なのは残念ですが、星空撮影に最も適したカメラの一つだと思います。

後継機のEOS6D MarkIIが登場しましたが、EOS6Dで十分というユーザーも多く、未だに人気は衰えていません。 ちなみに、EOS6Dユーザーが次機種に選んだのは、D810Aという天文ファンが多いと感じています。

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ニコンD810A
ニコンD810A

ニコンD810Aは、2015年5月末に発売開始されたニコン初の天体撮影専用のデジタル一眼レフカメラです。 従来のメーカー純正モデルと比べて、赤い星雲の写り具合を改造機と同等程度まで高めており、 ハイアマチュアにも満足できる天体撮影用カメラに仕上がっています。

35ミリフルサイズセンサーが用いられたニコンD810がベース機となっているため、 価格が高くなりましたが、画素数が3630万画素と多く解像度が高いにもかかわらず、 長時間ノイズが少ないのが魅力です。

天体撮影に便利な長時間撮影モードなどを備え、ハイアマチュアからの評価も高いモデルです。 モニターは固定式ですが、長く愛用できるメーカー純正の天体用カメラだと思います。

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2016年5月追記
2017年2月改訂
2018年3月追記・レイアウト変更
2020年4月追記

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