キヤノンEOS8000D レビュー
キヤノンEOS8000Dは、2015年4月に発売開始された、キヤノンの新しいシリーズのデジタル一眼レフカメラです。
EOS8000Dは、キヤノンのデジタル一眼レフカメラのラインナップの中で、 エントリークラスのEOSKissシリーズと、中級機のEOS80Dの中間に位置するモデルです。
発売開始当時、Kissシリーズよりも本格的なカメラが欲しいけれど、EOS二桁シリーズは高価、 というユーザーから注目されたカメラで、ネットや雑誌上で、様々な比較記事が登場しました。
キヤノンEOS8000Dの概要
キヤノンEOS 8000Dの撮像素子には、有効画素数2,420万画素のAPS-Cサイズセンサーが用いられています。 EOS 8000Dの発売当時の現行機種だったEOS70D(2,020万画素)よりも、画素数の面では勝っていました。
その他の機能を比べてみても、EOS70Dと比べて連写枚数は劣るものの、AF測距点や他の性能面は同等、 さらに液晶パネルやサブ電子ダイヤルも搭載されているため、EOS8000Dは、軽量化されたEOS70Dという印象を受けました。
また、同時に発売開始されたEOSKissX8iと比較すると、画素数やAF測距点などの基本的な性能はほぼ同じですが、 液晶パネルなどが装備され、操作性はかなり異なっています。 実際にEOS8000Dを使って撮影してみると、ミドルクラスに近い操作性が感じられ、 EOS5Dシリーズをはじめとした上位機種のサブ機として、使いやすいデジタルカメラだと感じます。
一般撮影に使用した印象
1,800万画素のセンサーが用いられたEOSKissX7やEOSKissX7iの画像と比べると、 解像度は若干向上しているように感じますが、それほど大きな違いはない印象です。 しかし、全体的にオートホワイトバランスの性能が向上しているのか、 大きく色が偏ることは少なくなったように思います。
EOS8000Dに採用されたオールクロス19点AFはなかなかの優れもので、 画面の端の方にある被写体でもピントを合わせてくれます。 これはこれまでのエントリー機とは段違いの快適さで、 以前のKissシリーズと違い、ピントの中抜けを防いでくれるので、 カメラ任せのスナップ撮影でもピントを外すことが少なくなりました。
EOS8000Dのバッテリーには、EOSKissX8iやEOSM3と同じLP-E17が用いられていますが、 バッテリーの持ちはあまりよくありません。 小型軽量化のため仕方ないところはありますが、上位機種に用いられているLP-E6Nを採用して欲しかったところです。 もし冬場に一晩中星空撮影を行うなら、サブバッテリーは最低でも2個は用意しておいた方が良さそうです。
バリアングルモニターは星空撮影に便利
星空撮影する際には、レンズを上に向けることが多いので、 三脚の高さが低いと、身体をかがめてファインダーあるいは液晶モニターを覗き込まなければならず、 撮影者にとって大きな負担となります。
その点、バリアングルモニターが装備されたEOS8000Dは、 モニターを自由な角度で動かすことができるため、無理な姿勢を強いられることがありません。 星空撮影の場合、可動式のモニターはとても便利な装備です。
液晶モニターには、約104万ドットのクリアビュー液晶IIが用いられているので、表示される画像はとてもクリアです。 タッチパネル式になっているため、画像保存形式やISO感度の変更等、 好きな角度で快適に操作することができます。
また、EOS8000Dには、KissX8iには未搭載の電子水準器も装備されているので、 ファインダーや液晶モニター上で、カメラが水平になっているかを確認することができます。 特に星景写真を撮影する際には、重宝する機能です。
EOS8000Dで撮影した星景写真
バリアングルモニターのお陰で、ローアングルから見上げた星空を撮影できた
EOS8000Dの長時間ノイズ
デジカメの長時間ノイズの量は、天体撮影ファンにとって大変気になる点です。 ノイズの少ないカメラを選ぶことが、良い天体写真を得るための重要なポイントになるからです。
キヤノンのEOSKissシリーズは、2003年に発売開始されたEOSKissDigital以来、星雲や星団の撮影に人気があり、 そのKissシリーズの上位機種として登場したEOS8000Dのノイズの量は気になるところです。 現在、本格的に天体撮影を楽しむユーザーから人気の高いEOS6Dとの比較撮影によって、 ノイズの量を検証してみました。
以下が、その比較画像です。
モニターに表示されたままの画像では分かりにくいため、画像を同じ条件で強調し、
中央部を切り取ったトリミング画像を掲載しました。
※長時間ノイズ低減、高感度ノイズ低減機能は、オフで撮影しています。
※画像はノイズの比較がしやすいように、ステライメージ7のレベル補正コマンドで画像強調(約5倍に圧縮)しています。
撮影条件 | キヤノンEOS8000D | キヤノンEOS6D |
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ISO1600 600秒 外気温13℃ |
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ISO3200 600秒 外気温13℃ |
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ISO6400 600秒 外気温13℃ |
約2,420万画素の新しいCMOSセンサーと画像処理エンジンDIGIC6が用いられたEOS8000Dですが、 撮像素子2,020万画素の35ミリフルサイズセンサーが用いられたキヤノンEOS6Dと比べると、 やはり長時間ノイズは多くなっています。
輝点ノイズは少ないものの、熱カブリのような赤いノイズが画像全体を覆っています。 今回のテストでは、購入前に予想していたよりも、EOS8000Dを高感度に設定したときの長時間ノイズは多いという印象を受けました。 気温の低い冬場のテストでこの結果だったため、気温が高い夏場に長時間露光すると、 より多くのノイズが発生すると思われます。
EOS8000Dの縦縞ノイズ
EOS8000Dを使用して、ダーク画像のテスト撮影を行ったときに気になったのが、 液晶モニターに映し出された縞模様です。 下は、ISO3200、600秒露光で撮影した画像です。
未処理の画像ではわかりにくいですが、レベル補正コマンドを使って、 上の画像を強調した下画像をご覧いただくと、縦縞模様が発生しているのがわかります。
この縦縞模様は、ISO感度を上げるほど、また露出時間を延ばすほど、明瞭に発生します。 ISO1600、600秒露光でも、レベル補正を施すと、はっきり画面に表れます。 CMOSセンサーからの読み出し回路に起因するものかもしれません。
なお、冷却CCDカメラの中にも撮影画像に縦縞が発生するものがありますので、 それほど珍しい現象ではないのかもしれませんが、 以前の機種(EOS60D等)では発生しなかっため、少々気になります。
赤い星雲の写り具合
望遠レンズや天体望遠鏡を使った星雲の撮影をはじめると、 赤い星雲をより鮮明に写し出したくなるものですが、 通常の市販のデジタルカメラでは綺麗に写し出せませんでした。
しかし、ペンタックスやフジフィルムから最近発売されたデジタルカメラの中には、 フィルター無改造でも赤い散光星雲をある程度写し出せる機種があります。 そこで、キヤノンEOS8000Dでも赤い星雲が写るのか、実際にオリオン座の星雲を撮影して確かめてみました。
下は、キヤノンEF-S18-135 IS STMレンズとEOS8000Dで撮影したオリオン座三ツ星付近の写真です。 感度ISO3200、露出時間240秒で撮影したままのJPEG画像ですが、 オリオン大星雲と馬頭星雲が、うっすらと写っているのがわかります。
上の画像の馬頭星雲の部分を拡大したのが下の画像です。
期待して撮影した星雲の写真ですが、赤い星雲の写り具合は、これまでのEOSカメラと変わらない印象を受けました。 良くも悪くもEOSデジタルらしい発色だと思います。 画像処理を施して、彩度を上げれば星雲はある程度浮かび上がってくると思いますが、 EOS8000Dを使って星雲の写真を撮影するなら、フィルター改造は必要だと感じました。
EOS8000D用バッテリーグリップ BG-E18
EOS8000DはAF機能が強化されているため、人物撮影でも使いやすいのですが、 バッテリーの持ちが悪いのが難点でした。 そんなとき、メーカーオプションのバッテリーグリップ「BG-E18」の中古品を見つけたので、 購入してEOS8000Dに取り付けてみました。
ちなみにバッテリーグリップとは、右の写真のようにデジカメの底部に取り付けるパーツです。 この中には、バッテリーを2個入れることができるので、バッテリーの持ちがよくなります。 また、レリーズボタンがバッテリーグリップに装備されているので、 縦位置での撮影がしやすくなる利点もあります。 一方、カメラにバッテリーグリップを取り付けると、カメラが大きく重くなってしまうのが難点です。
EOS8000DにBG-E18を取り付けて、実際にポートレート撮影などに使用してみましたが、 縦位置のレリーズは便利で、以前よりも快適に撮影できるようになりました。 ホールド感がよいので、持っているときは重さは感じられませんが、 持ち運び時はやはり嵩張ってしまいます。 また、カメラの性能には関係ありませんが、バッテリーグリップを取り付けることで、 上位機種を使っているような気分を感じました。
星空撮影には、バッテリーグリップは必要性の低いオプションなのですが、 一般撮影では重宝するアイテムだと思います。 キヤノン製バッテリーグリップは、他のメーカーと比べると購入しやすい価格帯なのがありがたいですね。 なお、中国製の偽物が出回っているようですので、バッテリーグリップのご購入時はご注意ください。
センサー交換後の長時間ノイズ
ダーク画像の縦縞ノイズが目立つので、キヤノンサービスで点検・修理をお願いしたところ、 センサー基盤を交換していただくことができました。
基盤交換後は、全体的にノイズが減り、縦縞ノイズも発生しなくなりました。 下は、センサー交換前と交換後の長時間ノイズの比較画像です。 なお、展示している比較画像は、レベル補正で強調した後のピクセル等倍画像です。
撮影条件 | EOS8000D(センサー交換後) | EOS8000D(センサー交換前) |
---|---|---|
ISO1600 600秒 外気温13℃ |
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ISO3200 600秒 外気温13℃ |
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ISO6400 600秒 外気温13℃ |
センサー交換前と交換後の画像を比べると、輝点ノイズの発生はほとんど変わりませんが、 交換後の方が、全体的に赤カブリの量が減っているのがわかります。 次に、気になっていた縞模様ノイズの発生について調べてみました。
上は、ISO3200、600秒露光で撮影した画像をレベル補正コマンドを使って強調した画像です。 センサー交換前に発生していた縞模様は、交換後は確認できませんでした。 センサー基盤を交換することによって、全体的に長時間ノイズの発生量が改善されたようです。
まとめ
キヤノンEOS8000Dは、液晶パネルや背面ダイヤルが装備されており、 使い勝手は中級シリーズ並であるにも関わらず、軽量化されている点が長所です。
毎日持ち歩くには少々大きく重いカメラですが、 多少大きなレンズをつけても、手に持ったときのバランスが良く、 ホールド感はKissシリーズよりも良好に感じます。
AF機能やオートホワイトバランスの正確性も高いので、 入門機種というより中級機種のような印象を受けます。 この点に関しては、2012年に発売が開始されたEOS6Dより優秀だと感じています。
星空撮影においては、バリアングルモニターが大変便利です。 Hα光で輝く赤い星雲を本格的に写す場合はフィルター改造が必要ですが、 月面クレーターの撮影や星空撮影時のスナップ撮影に重宝するカメラだと思います。
長時間ノイズの量は、購入前に予想していたより若干多く、 ISO3200以上に設定して長時間露光すると、赤っぽいカブリが画面全体に薄く発生します。 また、当初はノイズ画像に薄い縦縞が発生しましたが、センサー基盤の交換実施後は発生しなくなりました。 やはり、同じカメラでもノイズの発生量には、個体差があるということでしょう。
全体として、EOS8000Dは、中級機種の機能とKissシリーズの大きさ・価格を上手くパッケージングしたデジタルカメラだという印象を受けました。 購入時は使い慣れたKissシリーズの最新機種KissX8iとどちらにするか迷いましたが、 使うほどにEOS8000Dを購入してよかったと感じています。 今後、風景やスナップ撮影、またフルサイズ機のサブ機としても活躍させていきたいと思っています。
キヤノン EOS 8000DキヤノンEOS8000Dは、2015年4月に発売開始されたキヤノンの新しいラインナップのデジタル一眼レフカメラです。 液晶パネルや背面ダイヤルが装備されているので、入門機のKissシリーズより操作感が良く、 中級機種のような使い心地を楽しめます。 EOS8000Dには、星空撮影のシーンに便利なバリアングルモニターや電子水準器が装備されています。 長時間ノイズの量が想像していたよりも若干多いのが残念でしたが、 手頃な価格のため、月面クレーターや星空撮影の入門機として楽しめるカメラだと思います。 |
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バッテリーグリップ BG-E18BG-E18は、キヤノンEOS8000D、EOSKiss8i用のバッテリーグリップです。 バッテリーグリップ内にバッテリーパックLP-E17を2個入れることができるので、 より長い時間撮影を続けることができます。 また、バッテリーグリップには、レリーズボタンやダイヤル、フォーカスポイント変更ボタンなども装備されているため、 縦位置での撮影が快適になります。 ちなみに、私はキヤノンEOS5DMarkII用のバッテリーグリップも使用していますが、それと比べると、 グリップが薄くなり、手の小さい方でもホールドしやすくなりました。 星空撮影には必須ではありませんが、人物撮影などには重宝するオプションだと思います。 |
キヤノンEOS8000Dのスペック
名称 | キヤノンEOS8000D |
有効画素数 | 約2420万画素 |
撮像画面サイズ | APS-Cサイズ(22.3x14.9mm) |
記録メディア | SD/SDHC/SDXCカード |
連続撮影枚数 | 最高5コマ/秒 |
ファインダー視野率 | 95% |
常用ISO感度 | ISO100〜12800 |
液晶モニター | ワイド3型,約104万ドット |
動画機能 | 1920×1080:30p/25p/24p |
重量 | 約565g(本体のみ) |