ナナオ L997レビュー
ナナオのFlexScanL997は21.3型の液晶ディスプレイです。この液晶ディスプレイEIZO L997は、今主流のワイドディスプレイではなく、 昔ながらのUXGA表示の液晶ディスプレイです。今時珍しい国産液晶パネルを使った液晶ディスプレイで、 イラストレーターなどグラフィック分野のユーザーに人気があるモデルです。
ナナオ EIZO FlexScanL997のレビュー
FlexScanL997が市場に登場したのは2005年のことで、発売開始から3年以上が経っています。 発売当時は20万円以上と非常に高価なモニターでしたが、現在は13万円前後で推移しています。 新しいモデルが矢継ぎ早に発表されるにつれ、性能面では見劣りする点が出てきましたが、未だに一部のユーザーから高い 人気を誇っている液晶ディスプレイです。
L997の画面解像度は1600×1200ピクセルです。ディスプレイ画面を簡単に回転することができるのが特徴の一つで、画像も回転と 同時に縦表示となってくれます。ただその分、液晶ディスプレイの設置位置が高く、目線を上にしないと見づらいのが難点です。 私は少し改造してディスプレイの画面位置を下げて使用しています。 画面の高さが気になる方は、液晶ディスプレイアームなどのオプションを用意した方がよいと思います。
FlexScanL997が未だに人気がある理由の一つは、今時珍しい国産の液晶IPSパネルを使っているためです。 最近はコントラストや輝度が高く、長時間見ていると目が疲れてくるディスプレイが多いですが、その中では 異色の存在です。全体にしっとりとしていますが、非常によい発色をしてくれる液晶ディスプレイです。 グラフィックだけでなく、写真加工用途にも十二分に使える高性能ディスプレイです。
ナナオL997の色再現性
L997の視野角は広く、多少頭を左右に振っても画面のグレーバランスが狂うことはありません。 また、グラデーションの表現も綺麗で、いわゆるトーン破綻も気になりません。 ディスプレイの輝度を下げても、コントラストはしっかりと保たれるところは優秀だと思います。
色再現域は、AdobeRGBカバー率が高い最新モニターには及びませんが、私の使用用途では十分なものです。 AdobeRGBをカバーした液晶ディスプレイは、特にグリーンの発色が豊かですが、私には色がどぎつくなっただけに 見えることがあります。ある特定明度(視感反射率)のAdobeRGBカラーだけ、綺麗に発色できるように 開発しているモデルもあるのではないでしょうか。
L997の画面の輝度ムラは若干ですがあるようです。NECの最新液晶ディスプレイLCD2690WUXi2等には、画面のムラ補正機能が 付いていて、全くと言って輝度ムラが気にならなりません。そうしたモデルと並べてみると若干ですが、明るさの差があるような気がします。 あとナナオL997は、ハードウェアキャリブレーションには対応していません。また長時間使用していると、キーンという 音が背後からすることがあります。画面背後に回ってディスプレイに耳を近づけないとわからないほどの小さな音ですが、 電源回りのインバーターから出ている異音かもしれません。
ナナオL997の液晶パネル
このナナオL997には、日立製のS-IPSパネルが使われています。コントラスト比は550:1、最高輝度は250cdと VA液晶パネルを使った最新の液晶ディスプレイと比べると、数値性能面では一段劣っています。 しかし、派手さがない画面は見ていて目に優しく好感が持てるものです。第一それほど最高輝度値が高くても、私にはまぶしすぎて 使用する機会はほとんどありません。私の使用環境ではこのぐらいのコントラスト比で十分だと思っています。
L997に用いられているのは、前記の通り日立のIPSパネルです。 その液晶パネルを検証するために液晶モニターを拡大撮影してみました。下がそのL997の液晶です。 なお、白い画面を表示させて撮影しています。
拡大画像を見ると、RGB発光体の間が開いていて、このL997ディスプレイの低い開口率がよくわかります。 しかし、この低開口率から画面のつぶつぶ感が気になるかといえば、私はほとんど気になりません。ディスプレイに目を近づけて 細かい部分を見ようとしない限りは、それが気になったことはありません。この画像では分かりづらいですが、RGB発光体の 輝度差は少ないように感じました。
L997の目の疲れやすさ
L997と同じナナオ製のS2411Wを並べて比べてみると、画面のギラギラ感はL997の方がずっと少ないことがわかりました。 また、電源を切った状態にすると液晶パネル表面処理の違いまで分かります。L997の方はディスプレイ表面が滑らかですが、 それに比べるとS2411Wは若干コテコテしているように見えます。この辺りが目の疲れの違いに効いてくるのでしょうか。
また、NECのLCD2690WUXiと比べてみても、L997の方がやはり発色がソフトで目に優しい感じがします。具体的には画面から目に刺してくるような 光が少ない気がしました。NECのLCD2690WUXiは、AdobeRGB色空間まで発色可能なことで写真ファンに人気の液晶ディスプレイですから、 発色域の違いによるのも大きいのかもしれません。ちなみにNECのLCD2690WUXiには、L997と同じIPS方式の 液晶パネルが使われていますが、こちらはLG製のS-IPSパネルとなっているようです。
主にWebページ作成に使っているアイオーデーター製LCD-AD221Xと比べてみると、色の発色の違いは明らかです。 この辺りは価格差があるので仕方がないのでしょう。しかし目の疲れの面では、LCD-AD221Xも優秀なディスプレイで、ナナオのL997と 同等とも言えるほどです。もう少しLCD-AD221Xの調整機能が充実していれば、もっと使い易いモニターだと思いました。
液晶ディスプレイが大型化、高輝度化するにつれ、目の負担は年々大きくなってきています。Apple社のCinemaDisplayを 長い間使ってきた後、Appleのワイドディスプレイに買い換えてから、私の目の疲れとの戦いが始まったような気がします。 高輝度で広い色空間を持つ大型ワイドディスプレイは魅力ですが、目の負担が大きいものは短時間でも画面を見ていると辛いものです。 現在の私は、最終チェックだけ大型ワイド液晶ディスプレイで行い、それまでの処理はこのL997モニターで主に行うようになりました。 液晶ディスプレイは壊れたら買い換えられますが、自分の目はそうはいきません。目は大切にしたいですね。
ナナオL997のドット落ち
市販されている液晶ディスプレイには、ドット落ちと呼ばれる画素の非表示が希にあります。 ドット落ちは他に「ドット抜け」、「画素落ち」などとも呼ばれています。メーカーは製造工程上仕方ないことで、これは クレーム対象外にしていますが、やっぱり消費者には気になるところです。
今回購入したナナオL997には、一つだけドット落ちがありました。それが右上の画像ですが、ディスプレイ画面の右より下に発生していました。 ドット落ちは嫌なことですが、あまり目立たない場所でよかったです。
最近はドット落ち保証サービスなどを提供している販売店もありますが、本来的にはドット落ちはメーカーの製造上の問題だと思います。 多い人になると、5個以上のドット落ちがあったそうで、これが中央部に存在したときには目も当てられません。 特にナナオL997ディスプレイは非常に高価なディスプレイなのですから、その辺りの製造管理はしっかりしてもらいたいものです。
ナナオL997ディスプレイのスペック
ナナオL997の仕様を以下に示します。
名称 | L997 |
画面サイズ | 21.3型(54cm) |
パネルタイプ | カラーTFT液晶パネル |
視野角 | 170度 |
コントラスト比 | 250cd / 550:1 |
応答速度 | 30ms |
最大表示色 | 1677万色 |
画素ピッチ | 0.27x0.27mm |
消費電力 | 75W |
重量 | 10.2kg(モニター部分 7.2kg) |
発売開始 | 2005年4月 |
生産終了 | 2012年6月 |
EIZO ColorEdge CX240-CNXナナオが販売しているColorEdgeシリーズは、キャリブレーションに対応した高性能液晶ディスプレイです。 以前は20万円前後していたColorEdgeシリーズですが、ColorEdgeCX240は10万円前後の価格帯で手に入れやすくなりました。 CX240には、ノングレアのIPS方式の液晶パネルが用いられていて、階調表示に優れているという評価です。 ナナオのショールームで実物を見ても好印象でした。 L997ディスプレイは販売が終了しましたので、次はこのColorEdgeCX240を使ってみようと考えています。 |