ニコンD100の使用レポート
ニコンD100は2002年の夏に発売されたデジタル一眼レフカメラで、発売後すぐに一般撮影用に購入しました。
ニコンD100は、フィルムカメラのニコンF80ボディをベースにしたカメラで、使用感、発色などはとても良く、 一般撮影についてはとてもよいカメラだと思います。
一方、天体撮影という面では、フジフィルムS2Proに比べると劣っている、と天文雑誌等でよく書かれています。 そこで、実際のところはどうなのか、このページでは、ニコンD100で撮影した画像を交えながら、 ニコンD100の天文適正について調べてみました。
ニコンD100で撮影した写真
下の写真は、D100を用いて撮影したアンドロメダ銀河の写真です。
ニコンの単焦点望遠レンズ「ニッコールED300F2.8」で撮影した未処理の画像です。 デジタル一眼レフカメラを用いると、露出8分(ISO800)でここまで写し出されます。
銀塩写真だと20分近くは露出が必要な作業がここまで簡単化されることになります。 ただこれ以上露出時間を切り詰めようとして、ISO感度を上げると高感度ノイズがかなり増し、画像のなめらかさを 失ってしまうので、このあたりがD100の場合は限界だと思います。
また、画像を見ると、輝星の回りにかなり青ハロがついているのがわかると思います。どうもデジタルは光学系の色収差の要求には シビアなようで、旧式のEDレンズ使用の望遠レンズではこのような結果になってしまいました。 EDレンズを多数使った新型光学系や、ε反射光学系などの色収差の少ない光学系が、このデジタルカメラには向いていると思います。
上の画像は中心部を拡大したものです。これを見ていただければわかると思いますが、長時間露出によるノイズはかなり出てしまいます。 ノイズリダクション処理を行ってこの結果ですので、リダクションを行わないと見るにたえないほどです。
また撮影後のノイズ除去の処理には倍の時間を必要とします。この面では、撮像素子自体にノイズの少ないCMOSを使っている キヤノンEOSシリーズの方が、優れていると思います。
ニコンD100で撮影した赤い星雲の写真
上の写真は北アメリカ星雲の写真の部分拡大です (若干ピントが甘くなってしまいました)。この写真はフォトショップにて、彩度を強調していますが、それでもこのぐらいの写りとなっています。 やはりニコンD100の場合、 上記のアンドロメダ大星雲のような明るい銀河は 写りも良く、銀塩写真に近いものですが、赤い散光星雲の写り(彩度)は銀塩写真には遠く及ばないものになっています。
直焦点で撮影した月の写真も載せてみました。このような拡大撮影時は、D100(一眼デジカメ)では一般のコンパクトデジカメと 異なり、コリメート方式ではなくボディのみを使った直焦点撮影法やリレーレンズ法で撮影できるので有利です。
そのお陰で、月の上部から下部までピンボケもなく、シャープに写すことができています。 また階調も豊富なため、ハイライト部からシャドー部まで違和感なく表現できています。 このような写真が、デジタル一眼レフカメラが最も得意とするところだと思います。
デジタル一眼レフギャラリーにニコンD100で撮影した下弦の月写真を載せています。是非ご覧ください。
上はリレーレンズ法で撮影した木星の写真です(気流が悪かったのでボケてしまいました)。 このような拡大撮影時も、月面の撮影時と同じく、デジタル一眼レフではボディのみを使ったリレーレンズ法で撮影できるので便利です。 上の月の写真と同じく、惑星面の撮影でも適正のよいカメラだと思います。
※2007年現在では、惑星写真にデジタル一眼が使われることは稀で、Webカメラを使った惑星撮影が主となっています。
簡単に自分なりのD100の使用感をまとめると、「月、惑星の撮影には十分すぎるほど使えるが、星野撮影では少し問題が残るのでまだ銀塩フィルムで撮影だな」 というところです。特に長時間露出時のノイズに関しては、かなり影響が大きいので、今後改善してもらいたいところです。 また感度を上げたときの高感度ノイズ(粒状感)も大きな問題です。
この二つの点を改善すれば、赤い散光星雲については彩度不足で使えなくても、銀河や球状星団など特定の被写体には十分使えるよう になると思います(ただ使用する光学系はよく考えないといけないと思いますが)。 最終的にはローパスフィルターの改善などによって赤色域の感度も上げてもらいたいところです。
※2007年現在では、IRフィルターを換装したデジタル一眼レフカメラが、天体写真撮影によく使われています。
最後に、現在天体写真ファンに人気の富士フィルムFinePixS2Proに比べると、やはり星野写真ではD100は一歩劣るかなという気がしています。
※このインプレッションは2003年頃記載しています。ご了承ください