キヤノンEOS60Dレビュー
キヤノンEOS60Dは、2010年9月に発売開始されたデジタル一眼レフカメラです。 キヤノンEOSの二桁シリーズは、中級機としての位置づけを担っているモデルで、 キヤノンEOS50D登場から約2年経ってのモデルチェンジとなりました。
キヤノンEOS60Dが発売された当初は、記録メディアがCFカードからSDカードへと変更されたことなどに伴い、 カメラに対する評価はそれほど高いものではありませんっでした。 しかし価格が落ち着くにつれて評価は改善し、現在ではミドルクラスのデジタル一眼レフ機として、人気があるモデルになっています。
キヤノンEOS60Dの概要
キヤノンEOS60Dには、1,800万画素のAPS-CサイズCMOSセンサーが搭載されています。 液晶モニターは3.0型のバリアングルタイプになっていてます。 このモニターの有効画素は104万画素と、詳細で見やすいのが特徴です。
カメラ内の機能として、アートフィルター機能が搭載されました。 流行のトイカメラ風の写真や、ジオラマ風の仕上がりを楽しむことができます。 天体写真撮影にはあまり関係ない機能ですが、こうした撮影を楽しもうという方には便利だと思います。
EOS60Dの画像処理エンジンは、DIGIC4が使われています。 常用感度はISO100〜6400となっていて、拡張設定でISO12800まで使用できます。 高感度特性は従来のモデルよりもよくなっているものの、 やはりフルサイズデジタル一眼レフと比べると、ノイズ感を感じてしまうのは否めませんす。
なお、キヤノンEOS60Dからリモートコントローラーの端子が変更されました。 EOS50Dまでは、上位機種と同じ端子が用いられていましたが、 EOS60DからはKissシリーズと同じステレオミニプラグ形式になっています。 そのため、EOS50Dで使っていたコントローラーは使えず、何かしらの変換アダプターを用意してもらいたかったところです。
天体撮影に人気のEOS60D
EOS60Dは、天体撮影用として人気があるデジタル一眼レフカメラです。 人気の理由の一つは、長時間ノイズの少なさでしょう。 従来のキヤノン製デジタルカメラと同様に、アンプノイズが少なく長時間露出しても安定した画像を生み出してくれます。 また、ノイズリダクションの精度が高いのも魅力です。
他の理由としては、バリアングルモニターの搭載があります。 屈折式の天体望遠鏡にデジタル一眼レフカメラを取り付けて天頂付近の星を写す場合、 従来のデジタルカメラでは、どうしても地面に寝転ぶような姿勢で対象を確認する必要がありました。 それに比べてバリアングルモニター搭載機種なら、モニターの角度を自由に変更できますから、快適に撮影することができます。 こうしたことが天文ファンに支持された大きな理由でしょう。
天体専用モデルEOS60Daが登場
夜空で輝く赤い星雲を明るく写し出そうと思うと、デジタル一眼レフカメラに搭載されているローパスフィルターを換装する必要になります。 こうした改造は天文ショップで行われていますが、故障の危険やメーカー保証がなくなってしまうというリスクがあります。
金環日食が間近に迫った2012年の春、キヤノンから天体撮影用のフィルターを元々装備したカメラが発売開始されました。 このカメラで星雲を撮ると、通常モデルでは薄くしか写らなかったばら星雲なども明るく写し出されます。 EOS60Daの価格は通常のEOS60Dの倍近ですが、長時間ノイズがより少ないという噂と共に人気があります。 また、フィルターを天文ショップで換装したモデルと比べると、カラーバランスが整っているので使い易いという利点もあります。
メーカー純正の天体撮影専用モデルは、キヤノンEOS20Daに続いて二代目のことで、発表に合わせて天文雑誌では特集が組まれました。 メーカーがこうしたカスタムモデルを発売してくれるのは、天体写真ファンにとってとてもありがたいことです。
キヤノンEOS60Dの長時間ノイズ
デジカメを天体撮影に使う場合、まず気になるのが長時間ノイズの量です。 キヤノンEOS60Dの長時間露出の量を見てみましょう。 下はISO1600に設定し、露出時間600秒で撮影したノイズ画像です。室温は約28度で撮影を行っています。 画像の中央部分を等倍で切り抜いて表示しています。
画面に映し出された画像を見ても、ノイズはそれほど目立ちません。 そこで天体写真を画像処理するときのように、上のノイズ画像をレベル調整コマンドを使って強調してみたのが下の画像です(255→55)。
さすがに強調するとノイズが目立つようになりますが、室温が28度のことを考えると優秀の方だと思います。 夏でも野山に行けば、気温は20度以下のことが多いので、ここまでのノイズは出てこないでしょう。
冷却改造EOS60D
キヤノンEOS60Dは、天体写真ファンに人気のモデルになったこともあり、天文ショップではEOS60Dのフィルター改造モデルが積極的に販売されています。 中でもカメラボディに冷却装置を取り付けた、冷却改造EOS60Dはハイアマチュアに人気があります。
冷却改造デジタル一眼レフカメラとは、ペルチェ素子を使ってCMOSセンサーを冷やすように改造されたモデルで、 夏の暑い時期でも冬場に撮影したようなノイズが少ない画像を手に入れることができます。 元々キヤノンEOS60Dは低ノイズですから、この冷却の効果はより大きく、前モデルの冷却改造EOS50Dをしのぐほどです。
この冷却改造の威力をノイズ画像を比べることで確認してみます。 この撮影に使用したカメラは、協栄産業から発売されている冷却改造EOS60Dで、Astro60Dと名付けられています。 このAstro60D改造カメラは、外気温から約25度センサーの温度を下げることができます。
撮影時の外気温は29度で、ISO1600、露出時間600秒の同条件で撮影を行っています。 なおノイズの様子が解りやすいように、元々の画像をレベル補正コマンドで強調し、中央部をピクセル等倍で切り抜いた画像を表示しました。
ノーマルEOS60D | Astro60D |
上の画像をみていただくと一目瞭然ですが、ノーマルのEOS60Dと比べて冷却モデルのノイズが非常に少ないことがわかります。 この時のAstro60Dの温度計は0度前後を指していましたので、ノーマルモデルで真冬に撮影したような画像が、 冷却改造モデルでは夏でも得られるというわけです。
このように魅力的な冷却改造デジカメですが、メーカーが製造したカメラを分解して改造するため、故障のリスクが伴います。 また、冷却ファンを回すために外部電源が必要になります。特にAstro60Dは電気を食うようで、実測で4A以上を消費しているようです。 こうした問題もある冷却改造デジカメですが、ノイズを少ないカメラを追い求める天体写真ファンにとっては、 大変魅力的なデジタル機材となっています。
キヤノンEOS60Dについて
EOS60Dを使って見ると、前機種に比べると少々安っぽくなった感は否めませんが、 液晶モニターがバリアングルになるなど、天体写真に使い易い中級機に仕上がっているという印象です。
気になる長時間ノイズについては、EOS50Dに比べて画素数が上がったにも関わらず、全体のノイズが減少していて、 天体写真ファンの間で高い支持を集めているのにも納得です。 天体専用モデルも発売され、天文界で最も注目されているデジタル一眼レフカメラと言ってよいでしょう。
2010年に発売されたEOS60Dは、そろそろモデル末期といえます。 次のキヤノンEOS70Dの登場も噂されている時期ですが、 価格はEOSKissX6iと変わらぬ価格で販売されていますので、お買い得モデルと言えると思います。 中級機の信頼感を安価に手に入れたい方にとっては、魅力的なデジカメではないでしょうか。
キヤノンEOS 60Dはじめてバリアングル液晶が付けられたデジタル一眼レフカメラが、このキヤノンEOS60Dで、私も天体撮影に使用しているモデルです。 記憶媒体がCFカードからSDカードへと格下げされたので、発売当初は鳴り物入りという感がありましたが、現在では安定した人気を誇っています。 バリアングル液晶は使い易く、特に屈折望遠鏡ユーザーなら、撮影の度にこの機能のありがたさを実感するでしょう。 天文ショップでは、冷却改造されたモデルも販売されています。 モデル末期になって価格もこなれてきたので、EOSKissシリーズからのステップアップするにもよい機会ではないでしょうか。 |
キヤノンEOS60Dのスペック
名称 | キヤノンEOS60D |
有効画素数 | 約1800万画素 |
撮像画面サイズ | APS-C(22.3x14.9mm) |
記録メディア | SDカード |
連続撮影枚数 | 最高5.3コマ/秒 |
ファインダー視野率 | 約0.95倍 |
ISO感度設定範囲 | ISO100〜6400(拡張機能ISO12800) |
液晶モニター | 3.0型,約104万ドット |
ライブビュー機能 | あり |
重量 | 675グラム |