キヤノンEOS20Da
キヤノンEOS20Daは、2005年2月に登場したキヤノンの天体写真撮影用デジタル一眼レフカメラです。 このEOS20Daは、キヤノンEOS20Dの機能をモディファイしたカスタムモデルです。
今まで市販されたデジタル一眼レフカメラの中では、唯一の天体写真撮影専用デジカメで、 受注生産の特別モデルでした。キヤノンはEOS20Dの後もEOS30D、EOS40D、そしてEOS50Dとモデルチェンジ を続けますが、天体写真専用モデルは、このEOS20Daのみとなっています。
キヤノンEOS20Daの概要
キヤノンEOS20Daは2005年2月に発売されたカメラで、820万画素のAPS-Cフォーマットの センサー(CMOSセンサー)を持ったデジタル一眼レフカメラです。 中級モデルのキヤノンEOS20Dの機能を天体写真撮影用に変更したモデルとして登場しました。 具体的には、デジタル一眼レフのローパスフィルターの透過特性を変更し、夜空で輝く星雲を写りやすく しています。また、天体写真撮影に使い易いライブビュー機能も搭載されていました。
このキヤノンEOS20Daに採用されたローパスフィルターは、EOS20Dと比べると約2.5倍もHα輝線 が通りやすくなっています。星雲はHα輝線で輝きますので、この天体をより写しやすく なったというのがセールスポイントでした。
また、天体写真の世界では長時間露出が前提になりますので、キヤノンEOS20Daには第二世代の新し いノイズ除去回路を搭載し、低ノイズ化を計っていました。実際、このキヤノンEOS20Daはノイズが大変少ないことで 当時有名で、ノイズ発生の少ないセンサーをピックアップして組み上げていたのではないかと 言われていました。EOS20Daは、当時最高の低ノイズデジタル一眼レフカメラでした。
キヤノンEOS20Daの価格
キヤノンEOS20Daは、受注生産品でしたので納期が3ヶ月ほどかかりました。 価格はキヤノンダイレクト販売で25万円と高く、当時発売されていたキヤノンEOS20Dの 1.5倍以上の価格でした。その価格と納期のため、積極的に購入しようという写真ファンは 少なかったようです。
発売が打ち切られると、オークションなどではEOS20Daは高値で取引されるようになり、 一時は販売価格を上回る値段で落札されていました。 現在は人気も落ち着きましたが、それでも10万円弱の価格で売れることもあるようです。
天体写真ファンのEOS20Daの反応
キヤノンEOS20Daは、カメラメーカー純正天体写真用デジタル一眼レフカメラです。 発売当時は雑誌などでも取り上げられて、大きな話題を巻き起こしましたが、天体写真ファン の受け止め方は冷静でした。 話題にはなりましたが、それほど人気が出なかったのです。それはなぜでしょうか。
大きな理由は、キヤノンEOS20Daが一般撮影もできるように設計されていたことです。 ローパスフィルターの特性が天体写真寄りに設計されていたとは言え、一般撮影も かろうじて行えるHα輝線の透過率になっていました。 そのため、赤い星雲がノーマル機に比べるとよく写るとは言うものの、販売店で改造された 改造デジタル一眼レフカメラと比べると赤が貧弱な写りでした。
これではメーカー保証が受けられる純正デジカメとは言え、あまり人気が出てきません。 ノイズの少なさは魅力的でしたが、価格の高さもネックになってしまいました。 二兎を追う者は一兎をも得ず、という形になってしまったと思います。
もちろんだからといって、このキヤノンの取り組みが全て無駄だったわけではないと思います。 このデジタル一眼レフカメラに使われた第二世代のオンチップノイズ除去回路は、現在の デジタル一眼レフカメラに生かされて、高感度ノイズ低減処理などに役立っています。 少し残念な結果にはなりましたが、勇気あるメーカーの取り組みだったと思います。
キヤノンEOS20Daの長時間ノイズ
キヤノンEOS20Daで撮影した長時間ノイズ画像を見てみましょう。 撮影条件はISO1600で露出時間は600秒です。外気温は約5度という環境下での撮影です。
画面全体に輝点ノイズが出ていますが、背景は比較的均一です。画面右下にアンプ回路によると思われる 大きなカブリが発生しています。下にピクセル等倍画像を載せてみました。
こうしてみるとカラフルな輝点ノイズが画面に出ていることがわかります。現在のデジタル一眼レフカメラは、 こうした点は高感度ノイズ低減機能を使って上手く押さえられていますが、当時はこういう感じのデジカメが多かったものです。 もちろんノイズリダクション機能を使えば、輝点ノイズは綺麗に除去させることができました。
キヤノンEOS20Daについて
キヤノンEOS20Daはキヤノン純正の天体観測用デジタル一眼レフカメラでした。 現在のデジタル一眼レフカメラでは標準装備となりましたが、当時早々とライブビュー機能を取り付けたカメラです。 でじればもう少しHα輝線の透過率を上げて、天体写真専用と割り切って作ってもらいたかったデジカメです。 実際、このキヤノンEOS20Daを購入し、ショップでフィルターを改造して使っているユーザーもたくさんいらっしゃるのです。
残念なことに、このキヤノンEOS20Da以降はカスタムモデルは発売されていません。ペンタックスが専用機を出すか もしれないとアナウンスしていますが、どうなることでしょう。 天体写真ファンは、メーカー保証が受けられなくなるフィルター改造機を使っていますが、私はメーカーからカスタム モデルが出て欲しいと願っています。そうすれば、もっと天体写真が写真分野の一つとして身近になるのではないでしょうか。
キヤノンEOS20Daのスペック
名称 | キヤノンEOS20Da |
有効画素数 | 約820万画素 |
撮像画面サイズ | APS-Cフォーマット(22.5x15.0mm) |
記録メディア | CFカード |
連続撮影枚数 | 最高5コマ/秒 |
ファインダー視野率 | 95% |
ISO感度設定範囲 | ISO100〜3200 |
液晶モニター | 1.8型,約11.8万ドット |
ライブビュー機能 | あり |
重量 | 685グラム |
画像提供:S.Tさん