キヤノンEOS5DMarkIIレビュー
キヤノンEOS5DMarkIIは、2008年冬に登場したキヤノンのフルサイズデジタル一眼レフカメラです。 キヤノンEOS5Dの発売から約3年。ユーザーが待ちわびたモデルチェンジでした。
今回のモデルチェンジで、撮像素子には2110万画素のCMOSセンサーが使われ、キヤノンEOS1Ds-Mark3と同じ解像度を持つカメラへと 生まれ変わりました。フラッグシップ機の1Dsと比べると、実に約3分の1の価格です。このコストパフォーマンスの高さで 発売前は予約殺到で年内に手に入らないほどでした。
キヤノンEOS 5D MarkUの概要
キヤノンEOS5DMarkUは2008年11月に発売されたカメラで、2,110万画素の35ミリフルサイズCMOSセンサーを持った デジタル一眼レフカメラです。キヤノンEOS5Dの発売から3年が経ち、待ちに待ったモデルチェンジでした。
2008年はフルサイズ元年とも言われた年で、ニコンからは中級デジタル一眼レフカメラのD700が発売されました。 このライバル機種として登場したのがこのEOS5DMark2です。発売前から注目されていたので、発売日には予約殺到で年内には手に入らないという 人気ぶりでした。
EOS5Dが新型になって変わった点は、画素数だけではありませんでした。使い勝手も大幅に向上しており、大きな液晶画面を見ながら、最適な ピクチャースタイル設定を選べるように工夫されています。また、オートライティングオプティマイザを始めとした、最新の画像処理機能も備えたデジタル一眼レフカメラに 生まれ変わりました。私たち天体写真ファンにとって大きな改良点は、使える感度設定範囲が増えて高感度ノイズが大幅に減ったことでしょう。 長時間ノイズもEOS5Dに比べて大幅に減っており、より天体写真撮影に使い易いデジカメに仕上がっています。
もう一つキヤノンEOS5DMark2の売りは、フルハイビジョン撮影ができるようになっていることです。フルHD画質での動画撮影機能は EOSデジカメ初の機能で、大口径レンズのボケ味を生かした撮影に使用できます。これは なかなか魅力的な機能で、上手に使用すれば日食の撮影などの天文現象の場面にも生かせるカメラだと思います。
キヤノンEOS5DMarkIIの価格
EOS5DMark2が発売された2008年末は、ボディ単体の販売価格は29万円前後でした。 それから年が明けた2009年春には、EOS5DMark2の価格は23万円強まで下がってきています。 ライバル機のニコンD700が23万円前後ですから、ちょうど同じくらいの価格で販売されていたわけです。 どちらも魅力あふれるデジカメなので、選ぶ時には迷ってしまいますね。
ところで、この新型EOS5DMarkIIの発売後に、キヤノンは新しい24ミリ広角レンズを発売開始しました。キヤノンEF24mmF1.4LUです。 以前の24ミリLレンズをアップグレードしたモデルです。価格は18万円前後と非常に高価ですが、描写は前モデルとそれほど変わらないという噂もあります。 星に使うとどんな写りをするレンズなのでしょう。最近は高性能ズームレンズが人気ですが、このカメラなら 単焦点レンズと組み合わせて撮ってみたい気がします。
2012年春に、5DMarkIIの後継機となる、EOS5DMarkIIIが発売開始されました。 オートフォーカス機能や連写機能の強化など、使い易いカメラに仕上がっていましたが、 ニコンD800の圧倒的な解像度を前にして苦戦を強いられています。 一方、EOS5DMarkIIは継続して販売されていて、販売価格は15万円弱と発売当初の半値近くまで下がりました。
キヤノンEOS5DMarkUで撮影した天体写真
新型のキヤノンEOS5DMark2、天体写真の実力ほどはいかがでしょう。TOA130望遠鏡にフラットナーレンズを取り付け、 冬の定番被写体であるオリオン大星雲M42を、新型EOS5DMarkIIで撮影した画像を展示してみました。
上がその撮影画像です。ISO感度は1600に設定して、露出時間600秒、外気温約マイナス3度の場所で撮影を行っています。画像処理は何もしていな い生のJPEGデーターを縮小表示しています。撮影鏡筒はTOA130にフラットナーレンズですのでF7.7前後の明るさになりますが、 淡い広がりまでよく写っています。画像の下が黒くなっているのは、ミラーボックスのケラレでしょう。 これは旧型のEOS5Dでも見られた現象です。なお、星雲を横切るように走っている線は人工衛星の跡です。
上はオリオン星雲の部分を拡大表示したものです。コンポジットを行っていない一枚画像ですので、デジカメの ノイズがもっと目立つかと思いましたが気になりません。星雲自体が明るいこともありますが非常に滑らかで、ピンク色かかった 星雲も案外と写ってきています。感度設定ISO1600でこの滑らかさです。 それにこの画像はノイズリダクションを行っていない撮影画像です。
キヤノンEOS5DMarkIIの赤色星雲の写り具合
オリオン大星雲は、非常に明るく広い波長で輝いている星雲です。そのため改造デジタル一眼レフカメラでなくても、比較的 星雲を写し出しやすいものです。ここではEOS5DMark2の赤い星雲の写り具合を見るために、ばら星雲の撮影画像を見てみましょう。
撮影条件はオリオン大星雲の時と同じです。Hα光という単色光で輝くばら星雲を撮ると、がくんと写りが悪くなってしまいます。 これはキヤノンEOS5DMark2の性能が悪いわけではなく、デジタル一眼レフカメラに取り付けられているローパスフィルターが この部分の光の大部分をカットしてしまうからです。デジカメのフィルター改造すれば、とたんに写りがよくなるでしょう。
こちらの画像でも、一番下側がミラーボックスのケラレで黒くなっているのがわかります。 ミラーボックスを改造するか、フラット補正をすれば改善するでしょう。
5Dとの長時間ノイズ対決
前機種のキヤノンEOS5Dも長時間ノイズが少ないデジタル一眼レフカメラとして知られていましたが、EOS5DMark2ではより長時間ノイズが減ったと言われています。
どの程度長時間ノイズが減ったのか、同条件で撮り比べてみました。
※撮影条件:ISO1600,600秒露出,高感度ノイズ低減OFF,長時間ノイズ低減OFF,室温29度
EOS5D | EOS5DMarkII |
中央ピクセル等倍 | 中央ピクセル等倍 |
5倍強調画像(全体) | 5倍強調画像(全体) |
上のピクセル等倍 | 上のピクセル等倍 |
二つのカメラで撮影したそれぞれ画像を比べてみると、確かにEOS5DMark2の方が輝点ノイズが少なく、滑らかな画像です。 それにEOS5Dの方は、画面右にアンプノイズが現れますが、5DMark2では出てきません。
しかし、強調した画像を見ていくと、5DMarkIIの方は全体にうっすらとアンプノイズが出ているのが確認できます。 キヤノンEOS5DMarkIIでは、5分以上露出した画像を強調すると、アンプノイズらしいものが全体に出てくると、 天文ファンの間で言われることがあります。これがそのことなのでしょう。
ちなみに2012年に発売開始されたEOS5DMarkIIIでは、MarkIIより目立つアンプノイズが出るとも報告されています。 これらは、長時間ノイズ低減機能を使えば綺麗になくなりますが、できれば今後改善していって欲しい点です。
EOS5DMarkUの黒点問題
待望のキヤノンEOS5DMark2が発売されてからしばらくたった頃、明るい光源などを撮影すると、点光源の右側が黒くなる現象が起こることが わかりました。デジカメの背面モニターで画像を大きくしていくと黒点の存在がわかり、ユーザーの中で話題になりました。 星の撮影では全てが点光源のわけですから、非常に気になる現象です。
下の画像は、上のばら星雲の画像をピクセル等倍にしたものです。よく見ると、星の右側に黒いノイズのようなものが張り付いています。 画像の他の部分にも同じように見られ、これがいわゆる黒点問題であることがわかります。
なお、この撮影に使用したキヤノンEOS5DMark2はファームウェアアップデート以前のカメラです。現在はメーカーのキヤノンから 新しいファームウェアが公開されています。そちらを利用すれば、この黒点現象は軽減できるはずです。
キヤノンEOS5DMarkU
撮影画像を見ると、やはりフルサイズの恩恵を感じました。撮影に使用したTOA130にフラットナーレンズというと、 焦点距離で約1000ミリになります。APS-Cサイズのデジタル一眼レフカメラだと、オリオン大星雲とその上の青色の星雲を同じ視野内に捉えるのは 難しくなります。モザイク合成すれば同じ写野を得られると言われても、撮影と画像処理にかかる時間を考えれば、フルサイズの大きなメリットが あります。
特にTOA130のような高性能撮影鏡筒は、中判フォーマットまで満足させる広いイメージサークルを持っていますから、キヤノンEOS5DMark2の 力を存分に発揮できると思います。逆に言えば、イメージサークルが小さな撮影鏡筒では、フルサイズデジタル一眼レフカメラを使用する メリットは減ってくるとも言えます。
撮像素子のサイズだけでなく、キヤノンEOS5DMarkUの魅力はその低ノイズ特性にあります。今回の撮影画像を見てもわかりますが、設定感度ISO1600 で600秒露出という撮影条件にも関わらず、非常に滑らかな仕上がりとなっています。ニコンD700の画像でも驚きましたが、今回は画素数も多いので それ以上かもしれません。これでフィルターの改造ができれば、素晴らしい天体写真撮影デバイスに生まれ変わりそうです。
キヤノンEOS 5D Mark III ボディキヤノンEOSMark2の発売開始から約3年後に登場したのが、このEOS5DMarkIIIです。 発売開始当初は、ソフトウェアの更新が追いついていなかったこともあり、 MarkIIと比べて画質に問題があるなどのレビューもありましたが、現在では安定した人気を保っています。 AF機能が大幅に改善され、カメラの完成度が高くなったお陰で、いろいろなシチュエーションで撮影を楽しめます。 ただ星空撮影の分野では、この後に発売開始されたEOS6Dの方が高感度ノイズ・長時間ノイズが少ないということで人気があります。 高機能なAFが必要ない天体撮影の場合は、安価なEOS6Dの方がお勧めかもしれません。 |
キヤノンEOS5DMarkUのスペック
名称 | キヤノンEOS5DMarkII |
有効画素数 | 約2110万画素 |
撮像画面サイズ | CMOSセンサー(36.0x24mm) |
記録メディア | CFカード |
連続撮影枚数 | 最高3.9コマ/秒 |
ファインダー視野率 | 98% |
ISO感度設定範囲 | ISO100〜3200 |
液晶モニター | 3.0型,約92万ドット |
ライブビュー機能 | あり |
重量 | 810グラム |
画像提供(一部):某氏さん