オートガイダーの種類
オートガイダーが初めて登場した頃は、オートガイダーと言えばSBIG社のST-4ぐらいしかありませんでした。 しかし今では、Webカメラとパソコンを使った安価な製品から、 LoadStarを代表する小型軽量のオートガイダーが登場しています。 ここでは、そうしたオートガイダーの種類について、各機種の特徴と共に紹介しています。
冷却CCDカメラタイプ
天体写真撮影に使用する冷却CCDカメラには、オートガイド機能が備え付けられています。 最初のオートガイダーSBIG社のST-4も、冷却CCDカメラを撮像素子に使ったオートガイダーでした。
オートガイダーST-4が販売終了した後、その後継機としてSBIG社からST5cやST-Vが販売されました。 こちらもオートガイダー機能に重点を置いて作られた、オートガイダー兼冷却CCDカメラでした。 どちらも現在は生産が終了してしまいましたが、現在市販されている冷却CCDカメラのほとんどは、 撮影だけでなく、オートガイダーとしても使用できます。 撮影ももちろん可能ですから、冷却CCDオートガイダーと言うよりも、 冷却CCDカメラをオートガイダーとしても利用できると言った方が正しいかもしれません。
この冷却CCDカメラタイプのオートガイダーの特徴としては、感度が他のタイプのオートガイダーに比べて高いことです。 そのため、ガイド鏡を動かして星を探さなくても、たいていの場合は視野内にガイド星を見つけることができます。 Webカメラなどでは写ってこない、暗い星までガイド星に使うことができるということです。
ただその反面、価格は他に比べて高くなっています。 現在、オートガイダーとしてよく使われているSBIG社のST-402MEは、21万円ほどの値段がします。 価格的には高価な冷却CCDオートガイダーですが、F値の暗いガイド鏡やオフアキシスガイドで重宝するオートガイダーと言えるでしょう。 なお、冷却CCDカメラを使用するには、別途パソコンが必要になります(ST-4とSTVはパソコンが要りませんでした)。
Starlight Xpress社のLodestarやSBIG ST-i等
LoadeStarは、Starlight Xpress社から発売されているオートガイダーです。 LoadeStarには冷却機能はないものの、低ノイズで高感度のため、ガイド鏡を動かしてガイド星を探す必要がほとんどありません。 それに冷却機能がないため、USB端子から供給される電流だけ動作してくれます。 コンパクトさと相まって、とても使い易いオートガイダーになっています。
以前の冷却CCDタイプのオートガイダーと比べると、LodeStarは価格が安いので普及が進み、 2013年頃には、LodeStarはオートガイダーの世界標準といってもよいほど、広く使われるようになりました。 StarlightXpress社には、LodeStarの他にも、使われている撮像素子のサイズによって、いくつかの種類が用意されています。
また、他社からも同じよう大きさの非冷却CCDタイプのオートガイダーが発売されています。 右上の写真の赤色の筒は、私が使用しているSBIG ST-iオートガイダーで、 LodeStarと同じような性能を有しているカメラです。 ST-iについては、撮影機材のST-iオートガイダーのページをご覧下さい。
2013年に登場したのが、QHY CCD社のオートガイダー「QHY-5LUM」です(写真の銀色の筒です)。 QHY-5LIIMは、価格が4万円前後とLoadStarよりも安いにも関わらず、同程度の感度を有しており、 LoadStarに取って代わる、世界標準のオートガイダーになりつつあります。 望遠鏡オリジナルパーツのK-Astecからは、このQHY-5LIIMとペンシルボーグを組み合わせたガイドシステムが6万円前後で販売されています。 こうしたセットを利用すれば、比較的容易に本格的なオートガイド撮影を楽しめそうです。
2015年頃、より安価なToupTek社のCMOSカメラ「Toupcam」がオートガイダーとして用いられるようになりました。 QHY CCD社のカメラよりも更に1万円ほど安く販売されているので、 よりコストを抑えてオートガイド撮影を楽しみたい方は検討されてみてはいかがでしょうか。
なお、SBIG ST-iを除き、このタイプのカメラにはオートガイダーとして使用するためのソフトウェアが付属していません。 オートガイダーとして使用するには、PHDGudingをはじめとしたオートガイド用のフリーソフトが必要です。
ガイドウォーク
ガイドウォークは、Webカメラとコントロールボックス、 それにソフトウェアがセットになったオートガイダーです。
このガイドウォークの特徴は、天文ファンの声を取り入れて作られた、日本製のUSBオートガイダーだということです。 詳しい日本語マニュアルが付属しているので、初めての方でも使い易いオートガイダーとして仕上がっています。 また、本体は非常に小さく、軽量な作りになっています。 販売している天文ショップで、しっかりしたサポートを受けられるのも美点でしょう。
感度自体はWebカメラを使っているので、他と比べて特に高いわけではありませんが、 口径6センチのガイド鏡を使った場合、7等級ぐらいの星なら使えるようです。 撮影する方向によっては、ガイド鏡の向きを変えてガイド星を探す必要があるでしょう。 ガイドウォークの価格は、Webカメラを含めたフルセットで7万円弱です。使用にはパソコンが必要です。
※ガイドウォークの製造販売は終了しています
タカハシα-SGR(ルクバト)
タカハシα-SGRはその名の通り、天体望遠鏡メーカータカハシの純正オートガイダーです。 こちらもWebカメラを使用したカメラで、パソコン上のソフトから制御するWebカメラオートガイダーです。
このタカハシα-SGRの特徴は、メーカー純正のオートガイダーと言うことに尽きます。 オートガイダー機能自体は、前記のガイドウォークとほとんど同じです。 メーカー純正のサポートが安心という方にお勧めできるオートガイダーでしょう。
感度は、カメラ自体はWebカメラなのでガイドウォークと同じようなものです。 製品にはWebカメラは付属しませんので、別に購入する必要があります。 価格は9万円強で天文ショップにて販売されています。使用にはパソコンが必要です。
※2012年秋にα-SGR(ルクパト)の後継機となる、α-SGR3の発売が開始されました。 それと同時にルクパトの生産は終了しています。
ビクセンAGA-1
ビクセンAGA-1は、天体望遠鏡メーカーのビクセン純正のオートガイダーです。 ビクセン製赤道儀にしか使えませんが、改造して他社製に転用して使っている人もいらっしゃいます。 残念ながら現在は生産終了し、限定再生産製品のAGA-1リミテッドが販売店にいくつか残っているだけです(現在は終了)。
ビクセンAGA-1の特徴は、パソコン無しで実現できるオートガイダーシステムと言うことです。 パソコンを撮影地に持っていきたくない方に人気があります。
ビクセンAGA-1は、コントローラー本体の他に、CCDカメラとモニターが必要です。 モニターがなくても動作しますが、ガイド星が視野内に入っているかどうかの確認ができません。 またオートガイダーに使える星は、CCDカメラ(アナログタイプ)の感度に依存するため、暗い星を使いたければ 高価なCCDカメラが必要でした。そのため本体は4万円ほどと安いのですが、すべて合わせると10万円 弱という価格になることがありました。現在は液晶モニターの価格が下がったので、もっと安く手に入るようです。
このAGA-1は基本的にはビクセン製の赤道儀専用です。オートガイドの設定パラメーターはシンプルですが、 その分単純だと言うことで人気がありました。
ビクセンアドバンスユニット
アドバンスユニットは、ビクセン製の赤道儀コントローラー「スターブックTEN」に内蔵できるメーカー純正オートガイドユニットです。 現在のところ、スターブックTENを備えるAXD赤道儀とSXP赤道儀に使用することができます。
アドバンスユニットは、基本的にはAGA-1と似た構造で、本体とは別にCCDカメラが必要になります。 CCDカメラとアドバンスユニットをケーブルで繋ぐと、CCDカメラが捉えた映像がスターブックTENの画面に映し出されるようになります。 オートガイドの設定は、スターブックTEN上で行うことができますので、パソコンは不要となります。
詳しいマニュアルとメーカー純正という安心感がありますが、AGA-1と同様、オートガイドに使える星はCCDカメラの感度に依存します。 また、アナログタイプの信号(NTSCコンポジット信号)しか扱うことができないため、 天体写真ファンに人気の高いStarlightXpress社のLodestarなどをオートガイド用のカメラに使うことはできないようです。
セレストロン NexGuideオートガイダー
パソコン不要のスタンドアローンタイプのオートガイダーとして人気があるのが、 セレストロンの「New Nex Guide」です。 ガイドヘッドに一体化された液晶モニターを見ながら、コマンドを選択していくだけの簡単操作です。 価格も4万円前後と手に入れやすいため、オートガイド撮影を始めたばかりの天体撮影初心者に人気がある機種です。
しかし、セレストロン NexGuideオートガイダーに使用されているカメラの感度がそれほど高くないため、 オートガイド撮影に慣れてくると、LoadStarやST-iをはじめとした、 感度の高いセンサーが用いられた小型オートガイダーに移行するという流れがあるように思います。
LACERTA M-GEN オートガイダー
M-GEN(エムゲン) オートガイダーは、2015年春から日本でも取り扱いが始まったスタンドアローン型のオートガイダーです。 日本では、天体望遠鏡ショップの協栄産業が代理店となり「M-GEN(エムゲン) スーパーガイダー」の名称で販売しています。
M-GEN オートガイダーの特徴の一つとして、他のスタンドアローン型のオートガイダーと比べて、 使用されているカメラのCCD感度が高いことが上げられます。 そのため、パソコンが必要なCCD型オートガイダーのように、 ガイド鏡を固定した状態で、ガイド星をほぼ捉えることができます。 ガイド鏡を載せる微動ガイドマウントが必要なくなるので、 撮影対象を変えるごとにガイドマウント動かし、ガイド星を探すという作業から開放されます。
M-GENのコントローラーには、オートガイド機能の他にも、シャッターコントロール機能が設けられています。 デジカメとM-GENをケーブルで接続すれば、デジタル一眼レフカメラの露出時間を、 M-GENのコントローラーから制御することができます。 ミラーアップの時間指定も可能で、天体撮影時のカメラコントローラーとしても便利な機能です。
M-GENオートガイダーは、ベテラン天体写真ファンが利用しているディザリング撮影(M-GEN内では「Random Displacement」と呼んでいます)にも対応しています。 ディザリングとは、撮影コマごとに赤道儀を僅かに動かして、数ピクセルごとにずらして撮影していく機能です。 コンポジット後の画像のノイズを大幅に減らすことができるので、 私も冷却CCDカメラやデジタルカメラでの撮影で使用しています。
遠征撮影派にとって電源確保は問題になりますが、 M-GEN オートガイダーは、消費電力が少ないため、小型の電源で動作させることが可能です。 説明書によれば、最大消費電力は2W前後ですから、 昇圧回路と組み合わせれば、スマートフォンの充電に用いられているUSBポータブル電源での動作も可能でしょう。
AstroStreet ToupCam カラー ガイディングCMOSカメラToupCamカラーガイディングCMOSカメラは、Aptina社のAR0130カラーチップが用いられた小型CMOSカメラです。 同じ形式のモノクロセンサーが用いられたモデルと比べると、5,000円ほど安く販売されていますので、 より安価にオートガイド撮影をはじめてみたい方に適していると思います。 また、オートガイダーとしてだけでなく、惑星撮影にも使用可能です。 |