天の川の撮影方法
夏の夜、夜空の暗い場所で星空を見上げると、ぼんやりと輝く光の帯が目に留まります。 これは「天の川」と呼ばれる星の集まりで、特に、いて座付近の天の川は太く明るく輝いているので、よく目立ちます。
天の川は、星空写真の中で最も人気のある被写体です。 その理由は、何といっても、夜空に広がる雄大な天の川の魅力によるものでしょう。 広角レンズの画角一杯に広がる天の川の姿は迫力があり、 星空写真を始めた方なら、一度は撮影してみたいと思う対象ではないでしょうか。
天の川とは
肉眼では薄雲のように見える天の川ですが、その正体は、たくさんの星の集まりです。 正確には、私たちが住む銀河系の姿で、我々は銀河系を内側から見ているため、 天球上の帯として見えているわけです。
今では、天の川の正体が星の集まりというのは、子供でも知っていますが、 初めて天の川が星の集まりであることを発見したのは、ガリレオ・ガリレイです。 ガリレオは、今から約400年前、望遠鏡を使って天の川が星の集まりであることを発見しました。
ニュージーランドで見上げた天の川銀河
その後、天王星を発見したウィリアム・ハーシェルが、夜空の星の分布を詳細に観測して、 夜空の星がいびつなレンズ状に集まっていることを発表します。 また、ハーシェルは、地球もこの集まりの中心から離れたところに位置していることも示しました。 これが、天の川は銀河系の姿だと考えるきっかけになったと言われています。
天の川は非常に大きく、星空の綺麗な場所では、天球上を横断して地平線の下まで天の川が続いているように見えます。 実際、天の川は地平線の下にも途切れることなく続いていて、空全体を一周しています。 上の写真をご覧いただくと、天の川が夜空を横断している様子がよくわかります。
ところで、昔は夜空が暗く、どこでも天の川が見えていましたから、天の川に関するいろいろな言い伝えも生まれました。 日本では七夕物語がよく知られています。 星座物語で知られるギリシア神話でも、赤ん坊だったヘルクレスが女神ヘラの乳を力いっぱい吸ったため、 こぼれた乳が天の川になったという話があります。 それが伝わって、海外では天の川を「Milky Way」と呼ぶようになったということです。
天の川を撮影する機材
最近のデジタルカメラは性能が向上しており、コンパクトデジカメでも天の川を写すことは可能です。 しかし、天の川をより美しく撮影するなら、 レンズを交換できるデジタル一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラの方が有利です。
デジカメ選びのポイント
天の川を撮影するときは、ISO感度を上げて、30秒以上の長時間露光します。 しかし、デジカメは、ISO感度を上げたり、露光時間を長くするほど画像が荒れてしまいますので、 荒れの原因となるノイズ発生が少ない機種が有利です。
ノイズの発生量は、デジタルカメラの機種によって異なります。 一般的に、デジカメのセンサーのサイズが大きいほど、ノイズの発生量は少ない傾向があります。 予算に余裕があれば、35ミリフルサイズセンサーが用いられたデジカメがお勧めです。
ただ、昨今は画像処理エンジンの性能が向上しているので、 センサーサイズの小さなデジタル一眼レフカメラでも、十分綺麗な天の川の写真を撮れると思いますので、 暗所での撮影画像などを参考に、選ばれるとよいと思います。
ノイズの他に、デジカメに搭載されている機能もカメラを選ぶ際のポイントになります。 星空を撮るときは、レンズを上に向けることが多いため、液晶モニターが可動式になっているカメラが使いやすいでしょう。
また、ニコンD810AやペンタックスK-70のように、30秒超の露光時間を設定できる機種も登場しています。 天の川撮影時には、30秒以上の露光時間で撮影することも多いので、長時間の露光機能は大変便利です。 下の表に、天の川撮影時に便利だと思われるデジカメの機能と、そのモデル例を一覧にまとめました。
デジカメの機能 | 機能が装備されたデジカメの例 |
---|---|
可動式液晶モニター | ニコンZ7、ニコンD750、キヤノンEOS R、キヤノンEOS80D パナソニックGH5S、ペンタックスK-1等 |
30秒超の露出設定 | ニコンD810A、ペンタックスK-70等 |
電子水準器 | キヤノンEOS6D、ニコンD810、オリンパスOM-D E-M1 Mark II等 |
カメラ三脚は必須
デジタルカメラの常用ISO感度が上がり、暗いコンサートホール内でも手持ちで撮影できるようになりました。
しかし、天の川は更に暗いため、ISO感度を常用できる最高感度に上げても、数秒以上の露光が必要になります。 そのため、天の川の撮影には、カメラ三脚が必須です。
カメラ三脚を選ぶ際は、使用するカメラを載せてもグラつかない機種を選びましょう。 カメラ三脚だけでなく、カメラを三脚に取り付ける雲台も重要です。 しっかりとカメラを固定できる雲台が理想的です。 また、雲台にはいくつかの種類がありますが、星空撮影には、 ヘッドの角度を自由に動かせる自由雲台が使いやすいと思います。
カメラと雲台の着脱を手際よくできる「クイックシュー」もできれば用意しておきたいツールです。 天の川と地上の景色を一緒に構図に収める場合、印象的な構図を探してあちこち動き回ると思いますが、 この時にカメラをワンタッチで着脱できると大変便利です。 中でも、アルカスイス規格のプレートは、汎用性が高いのでお勧めです。
明るい広角レンズが便利
天の川はとても大きく広がっているので、天の川の撮影には広角レンズを使う場合が多くなります。 中でも、開放F値の明るいレンズは便利なので、できれば一本用意しておきたい機材です。
最近は、ズームレンズの描写性能も良くなっているので、明るい広角ズームレンズでも代用できます。
ズームレンズを選ぶ場合は、広角側が14ミリ前後から始まり、開放F値が2.8の製品がお勧めです。 F4の製品の方が安価で軽量なのですが、やはり開放F値が2.8前後の明るいレンズの方が、 早いシャッターを切れるため有利です。 特に固定撮影で天の川を撮影する場合は、F値の明るさが重要になってきます。
単焦点レンズの場合は、焦点距離が20ミリ〜24ミリ前後のレンズが使いやすいでしょう。 画角は固定されてしまいますが、ズームレンズと比べて開放F値の明るいレンズが多いので、 更に早いシャッターを切ることができます。 開放F値が2よりも明るいレンズを選べば、流れ星の撮影時も使用できるので、重宝すると思います。
その他に必要な装備
固定撮影や追尾撮影のページでもご紹介していますが、レンズフードとカメラのレリーズも必ず用意しておきたいパーツです。 長時間にわたって撮影を続ける場合は、夜露防止用のヒーターも用意しましょう。 以下に、天の川の撮影に必要な装備をまとめています。
カメラ:デジタル一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラ
レンズ:広角レンズ(F値が明るい方が便利)
架 台:カメラ三脚、カメラ雲台
その他:手元を照らす赤色ヘッドライト、レンズフード、レリーズ、夜露よけヒーター
最初からすべてを揃えるのは難しいと思いますので、カメラと三脚をお持ちでしたら、 まずは手持ちの機材で撮影してみてはいかがでしょう。 一度、実際に星空を撮影してみれば、自ずと必要な機材がわかってくると思います。
天の川が見える場所で撮る
天の川を綺麗に撮る上で最も大切なポイントは、満天の星空が見える夜空の暗い場所で撮影するということです。
天の川があまり見えない場所や、満月が夜空を照らす日に撮影して「天の川が写らない」と悩んでいる方が、 思いの外、多くいらっしゃるように感じています。 逆に言えば、光害の少ない夜空で撮影すれば、どなたでも天の川を容易に写すことができます。
都市部から離れた場所で天の川を撮影しよう
自宅の庭から天の川が見えれば何も問題はありませんが、多くの方は、 東京や大阪をはじめとした大都会近郊にお住まいと思います。
まず、天の川がきれいに見える場所を探しましょう。 撮影場所は、南方向に大都市がなく、視界が開けた高原のような場所が理想的です。
例えば、私は関西在住ですので、紀伊半島に撮影に良く出かけます。 関東の天文ファンは、伊豆半島や群馬県の高原に出かける方が多いようです。 このサイトの天体観測地のページでも、いくつかの撮影スポットをご紹介していますので、 ご参考にしていただければ幸いです。
次ぎに、月齢にも注意しましょう。 月明かりは夜空を明るく照らしますので、夜空に月が出ていると、見える星の数が一気に減ってしまいます。 もちろん天の川も見えにくくなるため、月明かりがない日を撮影日に選びましょう。
天の川の撮影は、一晩中、月がない新月がベストですが、撮影時に月が出ていなければ大丈夫ですので、 星空シミュレーションソフトなどを利用して、撮影を予定している日時に月が出ていないかどうかを確認しましょう。 目安としては、夕方から夜中の間に天の川を撮る場合は、下弦の月から新月までの間、 逆に夜中から明け方に撮影する場合は、新月から上弦の月の間が狙い目になります。
ピント合わせ
天の川の撮影で難しいのは、ピント合わせかもしれません。 実際、星空撮影を始めた方から「ピント合わせがうまくいかない」というご相談をよく伺います。
オートフォーカスが使えれば便利ですが、一部の機種には星空AF機構が搭載されているものの、 極めて明るいレンズを使う必要があったりと、まだ一般的ではありません。 そのため、今でも星空撮影では、マニュアルフォーカスがやはり基本となります。
ライブビューにして、MFでピントを合わせるのが一般的
以下に、私が実際に行なっている、星空撮影時のピント合わせ手順をまとめました。 なお、液晶モニターの像を拡大するルーペを用意すると便利です。 私は、「液晶画面確認用ルーペ」という製品を使用して、 ピントの最終チェックを行っています。
1.まずデジカメを三脚に固定します。
2.デジカメのモードをマニュアルモードにして、レンズの絞りは開放、マニュアルフォーカスに設定しましょう。
3.ISO感度を、常用できる最大のISO感度まで上げましょう(例:ISO6400)。
4.レンズのピントリングを、無限大(∞)の位置にあわせます。
5.ファンダーを覗き、夜空で輝く星の中で、1〜2等星の明るい星を視野内に入れます。
6.星がファンダー内に入ったら、デジカメのライブビューモードを立ち上げます。
7.拡大ボタンを押して、液晶モニターに写った星を拡大します。
8.ピントリングを回しながら、 星の像が一番小さくなるように調整します。
9.液晶モニターに拡大ルーペを当てて、星像がより小さくなるようにピントを追い込みます。
以上が、私のピント合わせの方法です。 ピントが合ったら、撮影中に誤ってフォーカスリングを回してしまわないように、 フォーカスリングをテープで固定しておきましょう。
なお、EDレンズなどが用いられた高性能レンズは、温度によってピント位置が大きく変わるので、 気温が大きく変化したらピントを合わせなおしましょう。
デジカメの設定
ピント合わせができたら、いよいよ撮影です。 まずカメラのモードをマニュアル、又はバルブに設定します。
デジカメの感度は、ISO3200を基本にしましょう。 そしてレンズの絞り値を開放絞り(F値が最も小さくなる絞り)に合わせます。
設定が終わったら、シャッター速度30秒で星空を試写してみましょう。 試写した画像が暗すぎる場合は、露出時間を延ばします。 逆に明るすぎる場合には、露出時間を短くしましょう。 星空の綺麗な場所なら、絞りF2でシャッター速度60秒前後が適正露出になると思います。
その場所での適正な露出の組み合わせがわかったら、撮影目的に応じて、シャッター速度と絞り値を変更して撮影していきます。 レンズ収差のため、画像の端の星が大きく流れるときは、レンズを一段絞ると改善します。
また、デジタル一眼レフカメラには、長時間露出のノイズを低減するノイズリダクション機能があります。 画像処理のため、撮影に2倍の時間がかかりますが、撮影画像にノイズが目立つ場合は、オンにしておくとよいでしょう。
高感度ノイズの低減という機能があるデジカメをお使いの場合は、「標準」、もしくは「弱く」に設定しましょう。 ノイズ低減を「強く」に設定すると、せっかく写った星までかき消されてしまう恐れがあります。
撮影する方向と構図
全天に広がる天の川の中でも、いて座の天の川が最も明るく、写真栄えします。 まずは、いて座が輝く南方向の星空を狙ってみましょう。
カメラは、特に意図がない限りは、水平を保つようにします。 デジカメにデジタル水準器が装備されていれば、その指標を目安にして水平を合わせましょう。 横構図だけでなく、縦構図でも撮影しておくと、 また違った印象の天の川の写真になるので、縦横2バージョンを撮影するようにするとよいでしょう。
次に構図です。レンズの焦点距離によって拡大率が異なりますが、 例えば24ミリの横構図で撮影する場合、さそり座といて座を画面の両側に入れることを心がけると、 バランスの撮れた画面構成になるでしょう。
超広角レンズ(14ミリ前後)で撮影する場合は、わし座やはくちょう座の天の川まで入ってくるため、 ファンダーを覗いただけでは、構図合わせが難しいと思います。 テスト撮影を何度か繰り返して、 構図を微調整をしていくと、バランスの良い構図に仕上がると思います。
天の川とレンズの画角
レンズの焦点距離の違いによって、天の川の写る範囲は大きく異なります。 実際に、異なるレンズで撮影した天の川の写真を、以下に掲載しましたので、 撮影前やレンズ購入前に画角を確認しておきましょう。
なお、撮影に使用したのは、35ミリフルサイズ一眼レフカメラです。 APS-Cサイズのデジカメや、マイクロフォーサーズ機をお使いの場合は、 レンズの焦点距離を換算してご覧ください。
焦点距離 8mmの魚眼レンズによる天の川の作例
焦点距離8ミリの魚眼レンズは、全天星空撮影を撮りたい方に需要があります。 ただ何度も撮影するものではないので、あまり持っている方は少ないレンズです。
単焦点の8ミリレンズは使用頻度が低いので、キヤノンとニコンから発売されている、 超広角魚眼ズームレンズ(例:ニコンAF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm f/3.5-4.5E ED)が便利に使えてお勧めです。
焦点距離 10mmの魚眼レンズによる天の川写真
10〜14ミリ前後の魚眼レンズは、日本から見える夏の天の川の主要な星を画角に入れることができるので、 昔から人気があります。星空撮影用として、シグマの15ミリフィッシュアイレンズが人気がありました。
焦点距離 15mmの超広角レンズによる天の川の作例
最近の広角ズームレンズの短焦点側は14〜16ミリ前後のことが多く、 15ミリ前後の焦点距離は、星を撮影されない方でも、使うことが多い画角だと思います。
15ミリ前後のレンズで、広がりのある風景と夏の天の川を一緒に撮影すると、 ダイナミックな一枚に仕上がります。 星空撮影に使いやすいので、そろえておきたい画角です。
星空撮影用としては、ズームレンズで十分ですが、15mm前後で開放F値が明るい単焦点レンズは、 流れ星の撮影時に重宝します。 流星群の撮影にも使用したい場合は、明るい単焦点レンズも検討してみてもよいでしょう。
焦点距離 20mmの広角レンズによる天の川の作例
上は20ミリの単焦点レンズの作例ですが、20ミリの単焦点レンズを所有している方は、天体写真ファンでも少ないと思います。 画角の広さと明るさが必要な流れ星の撮影時は単焦点は便利ですが、 それ以外はズームレンズで代用できると思います。
焦点距離 24mmの広角レンズによる天の川の作例
焦点距離24ミリの広角レンズは、銀塩フィルムが星空撮影の主流だった頃から、 夏の天の川銀河撮影の定番レンズと言われてきました。
理由としては、天の川銀河の中心方向(いて座の方向)にレンズを向けると、 さそり座の尻尾の下から、たて座のスモールスタークラウドと呼ばれる、天の川の濃い部分が、 ちょうどよいバランスで収まるためでしょう。
最近は、超広角レンズに性能の良い製品が出てきたので、 人気が押され気味ですが、24ミリレンズは一本持っていると重宝する定番レンズです。
焦点距離 35mmの広角レンズによる天の川の作例
焦点距離35ミリのレンズは、人間が見ている範囲に近く、ファインダーを覗いたときに違和感が少ないレンズと言われています。
天の川の撮影に使用すると、さそり座といて座がバランスよく収まり、 夏の天の川の迫力ある姿を写し出すことができます。 35ミリぐらいの焦点距離になると、天の川銀河の中で輝く、星雲や星団が判別できるようになってきます。
超広角レンズに比べて設計に無理がないためなのでしょう、 35ミリ前後の単焦点レンズは周辺星像がよく、星空撮影に向いた明るいレンズが多いように思います。 星空撮影に頻繁に使用するレンズではありませんが、スナップ撮影でも重宝するので、 揃えておくと便利なレンズと思います。
焦点距離 50mmの標準レンズによる天の川の作例
焦点距離50ミリレンズは標準レンズと呼ばれていて、明るいレンズが手頃な価格で購入できるのが魅力です。
50ミリレンズで天の川を撮影すると、さそり座からいて座にかけての主要な星雲を一枚に写しこむことができます。 天の川の星景写真と言うよりも、星雲星団の写真と言えそうですね。 小さなポータブル赤道儀に載せて、星雲や星団の撮影を楽しむのに便利なレンズと思います。
露出時間の違いと星の流れ
星は日周運動をしていますので、露出時間を延ばすほど、星が流れて線状に写ります。 24ミリ前後の広角レンズの場合、30秒くらいまでの露光時間なら、 星の流れはそれほど目立ちませんが、60秒を超えると星が流れているのがわかるようになります。
ISO感度とレンズの絞りを変更すれば、露出時間を短くすることができますので、 天の川を撮影する際は、いくつかの組み合わせで撮影しておくとよいでしょう。
また、一般的にISO感度を上げて、短い露光時間で撮影するのが人気ですが、 逆にISO感度を下げ、長時間露光して星を線で表現した写真も趣深い一枚になると思います。
下の写真は、焦点距離20ミリのレンズを使い、ISO800、10分露出で撮影した夏の天の川の写真です。 線状に写った星々の間に、ぼんやりと天の川が浮かび上がった写真になりました。
追尾撮影で天の川を撮る
ポータブル赤道儀を使用すると、星の動きを追尾して撮影できるので、 より暗い星まで写し出すことができます。 また、星が点像に写るため、肉眼で見たときと同じような印象の写真に仕上げることができます。
ポータブル赤道儀を使って天の川を撮影する場合は、 固定撮影のときよりもISO感度を低めにして、絞りも少し絞って写した方がよいでしょう。
このような設定で撮影すると、適正な濃度が得られるシャッター速度は長くなってしまいますが、 赤道儀が星を追尾してくれますので、星が流れて写る心配はありません。 せっかく赤道儀を使用するのですから、クオリティを重視して天の川を写しましょう。
なお、ポータブル赤道儀にはいろいろな種類があり、 手のひらに乗るコンパクトな赤道儀もあります。 しかし、そのような機材にフルサイズ一眼レフを載せるのは無理があります。 ご自身が使用する機材の重さを考慮に入れて、最適な一台を選びましょう。 赤道儀を選ぶ際には、ポータブル赤道儀の比較ページもご参照ください。
天の川を撮影するベスト時期
夏の天の川ですから、夏休みの頃に撮影するものと一般的と思われていますが、 より美しい夏の天の川を撮影するなら、経験上、5月がベストシーズンだと感じています。
その理由は、光害の影響と夜空の透明度です。 残念ながら日本は都市部の照明が明るく、都市部から離れた山奥でも大都市の光害から完全に逃れることはできません。 しかし、午前0時を過ぎると都市部も暗くなるため、 夜空が暗くなり、天の川がよりはっきり見えるようになります。
次に夜空の透明度ですが、8月は気温と湿度が高く、透明度が高い夜は希です。 一方、5月は4月に多い黄砂の影響もほぼなくなり、透明度の高い夜が期待できます。 透明度の面では、冬型の気圧配置が続く2月末から3月も狙い目ですが、 いて座が南中する前に薄明が始まってしまうため、5月頃が撮影しやすいと思います。
なお、天の川の中心部が位置するいて座は、8月上旬だと21時頃に南中しますが、 5月中旬だと午前1時頃に南中します。 月齢と天候をチェックして、5月の真夜中にクリアな天の川の写真を狙ってみましょう。
夏以外の天の川
天の川と言えば、夏の南天で輝く「いて座付近の天の川」という印象が強いですが、 秋や冬の天の川も繊細で綺麗です。 夏の天の川を撮影できたら、それ以外の季節の天の川も是非撮影してみましょう。
お勧めは冬の天の川です。 星空の綺麗な場所でオリオン座の東側を眺めると、 うっすらとした白い帯のようなものが天頂から左下へと流れているのがわかります。 これが冬の天の川の輝きで、デジカメで撮影すると、右上のような写真に写ります。
秋の天の川は、北天で輝くカシオペア座付近を流れています。 夏や冬と比べて淡いため、夜空が暗くて透明度が良くないと見ることができません。 北天に大きな光害がない場所で撮影するとよいでしょう。
天の川の撮影方法のまとめ
最後に天の川の撮影の要点をまとめてみます。
@天の川が見える星空のきれいな場所で撮影する
Aデジタル一眼レフ(ミラーレス一眼)と明るい広角ズームレンズが使いやすい
Bピント合わせは、ライブビューモードを使用
C感度はISO3200を基本にして撮影
D横構図だけでなく、縦構図も撮っておく
Eポータブル赤道儀があれば、長時間露光でも星を点像に保てる
天の川の写真撮影というと、特殊で難しい分野と思われるかもしれませんが、 決してそんなことはなく、どなたでも撮影を楽しめる被写体です。
東の空から上ってきたときは横倒しだった天の川が、時間が経つと共に夜空に立ち上がり、 そして天を横切るように頭上を流れる様は、何度見ても感動的です。 満天の星空を楽しみながら、天の川の撮影にもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
2018年8月 写真追加・構成変更
2019年6月 追記・編集