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星空撮影時のデジカメ設定

最新のデジタルカメラには、様々な機能が設けられています。 通常の風景や人物の撮影では、オートに合わせておけば、ほぼ問題なく綺麗な写真が撮れますが、 星空を撮影する際は、オートではなく、撮影者が星空撮影に適した設定を行う必要が出てきます。

このページでは、星空撮影に適したデジカメの設定について、初心者の方向けに紹介しています。 なお、主にデジタル一眼レフカメラやミラーレスカメラを使った場合の設定方法を説明しています。


カメラの基礎知識

デジカメの設定に入る前に、まずカメラの基礎的な知識を身につけておきたいところです。 カメラはレンズで集めた光をフィルムもしくはデジタル撮像素子に投影し、 それを記録するための機器です。 その記録を適切に行うために、カメラには絞りやシャッター速度の調整機構、 オートフォーカス機能が付いています。

シャッター速度と絞り

シャッター速度 撮像素子やフィルムに当たる光の量は、レンズに設けられた絞りとシャッター速度を変更することによって調整します。 使用するフィルムやデジカメのISO感度によって最適な光の量が変わってきますので、 これらの点も考慮して、適切なシャッター速度と絞りを設定する必要があります。

昔は、撮影者の勘を頼りに最適な絞り値とシャッター速度を選んでいましたが、 現在のカメラは自動で最適な組み合わせを割り出してくれます。 この適切な露出を自動的に割り出す機能を「AE機能」と呼んでいます。

AE機能が登場した頃は1種類のAEモードしかありませんでしたが、 現在のカメラには、絞り優先モードやシャッター速度優先モードなど、数種類のモードが用意されています。 また、露出を割り出す測光方法にも、多分割測光やスポット測光などが用意され、 撮影者の意図する撮影に最適な設定を選べるようになっています。

オートフォーカス機能

AF機能スイッチ オートフォーカスは、カメラのピントを自動で合わせる機能で、AF機能とも呼ばれています。 現在では当たり前のAF機能ですが、昔はレンズのピントリングを手で回して、 撮影者が撮影の都度、手動でピントを合わせる必要がありました。

一口にオートフォーカスと言っても、その動作方式には様々な方式があります。 一般的に、デジタル一眼レフカメラにはパッシブ方式という方式が用いられ、 コンパクトデジカメにはアクティブ方式が用いられる傾向があります。 方式によって、得意不得意な場面があります。 例えば、パッシブ方式は暗い場所でのピント合わせが苦手という側面があります。

登場した頃は測距点が一点のみだったオートフォーカス機能も、時代と共に進化してきました。 現在のデジタル一眼レフカメラでは、動作モードを数種類から選ぶことができ、 ファインダー内の測距点も多数用意されているのが一般的でしょう。 このような高度なAF機能は、電車など動く被写体を撮影する場合に大変重要になってきます。


星空撮影とデジカメ設定

ここからは、星空撮影時のデジカメの設定についての話題です。

星空が綺麗に見える郊外に出かけて夜空を見上げていると、目が暗闇に慣れるにつれて、 見える星々の数が増えてきます。 明るい星は、より一層輝きを増してくるはずです。

「これだけ明るく輝いているなら、簡単に撮れそう・・・」と思って、 デジカメを夜空に向けてシャッターを押すと、ストロボが光り、シャッター音が響きます。 しかし、デジカメの液晶モニターに映し出された画像は真っ暗。 このような経験はないでしょうか。

星空は私たちが考える以上に暗いため、現在のデジカメの性能では、手持ちで星空を撮影することはまず不可能です。 最低でも10秒前後の露出時間が必要なため、カメラ三脚にデジカメを固定して撮影する必要があります。 では、これから具体的なデジカメの各種設定に移ります。


ストロボはオフで

ポップアップストロボ 暗い場所でデジカメを使って撮影すると、自動的にストロボが光って、足りない光を補おうとします。 しかしストロボの光が届くのは、せいぜい10メートル前後。 星空は果てしなく遠いので、ストロボの光が届くはずもありません。 星空を撮る場合には、ストロボ機能をオフにしておきましょう。

デジタル一眼レフカメラをお使いなら、撮影モードをマニュアルにすれば、内蔵ストロボ機能はオフになるはずです。 星空が綺麗な場所でストロボが光ると、周りの天文ファンの迷惑にもなりかねません。 星空撮影ではストロボはオフに、と覚えておくとよいと思います。

ところで、星空撮影はデジタル一眼レフカメラで行うもの、というイメージが従来はありましたが、 最近のコンパクトデジカメの中には、星空撮影モードを備えた機種もあります。 さらに、ミラーレスカメラも星空撮影によく使われるようになり、 星空撮影に使える機種が一気に増えてきました。 これから天体撮影のためにデジカメを購入されるなら、いろいろな選択肢から、 ご自分に合った機種を選ぶことができると思います。


オートフォーカス機能をオフ

上記のオートフォーカス機能の箇所でも記載したとおり、デジタル一眼レフカメラのAF機能は、暗いところが苦手です。 そのため、星空の下ではAF機能はたいていの場合働きません。 オートフォーカス機能はオフにして撮影するのが基本となります。

ピント合わせはマニュアルで行います。 明るい星を視野内に入れ、ライブビューモードを使って合わせると行いやすいと思います。 詳しい方法は、天体写真のピントの合わせ方ページをご覧下さい。

ところで、明るいレンズとデジタル一眼レフカメラを組み合わせて、 極めて明るい星(1等星)や月などを使えば、AF機能が働くことがあります。 このような場合は、一度AFでピントを合わせてから、マニュアルに戻す方法もあります。 ただ、AF機能を使って合わせた場合、後からよく確認するとピントがずれていることがあります。 ですので、こうした機能を使う場合は、 撮影後にモニターで画像を確認して、ピントがしっかりと合っているかチェックするようにするとよいでしょう。


手ブレ防止機能をオフ

最近のレンズには手ブレ防止機能が付けられています。 この機能は一般撮影では便利ですが、カメラ三脚に固定して撮影する星空撮影では、 不要な機能です。 それどころか、手ブレ機能がオンになっていると、誤動作を起こして星が流れたように写ってしまうこともありますので、 必ずオフにして撮影するようにします。


記録画質の変更

記録画質の変更設定 一般的なコンパクトデジカメには、JPEGモードしか用意されていませんが、 デジタル一眼レフカメラやミラーレスカメラには、何種類かの記録モードが用意されています。

星空は淡く、撮影後に画像処理を施すことがあるため、 星空撮影には、RAWモードで撮影することをお勧めします。

記録メディアの容量に余裕があれば、JPEG画質の撮影画像も保存しておくと安心でしょう。 具体的には、「RAW+JPEGモード(FINE)」に設定しておくと、撮って出しの画像も見れて便利です。

星空撮影を始めたばかりの頃は、JPEG画質だけでも問題ありませんが、 上達するにつれて、より綺麗な星空写真に仕上げたくなってきます。 そのようなときに、昔撮影した画像がRAWで記録されていれば、 上達した技術で、より一層美しい写真に仕上げることができると思います。


撮影モードの設定

デジタルカメラには、絞り優先オートをはじめ、数種類の撮影モードが用意されています。 星空の撮影では、カメラ任せのAE機能が働かないので、撮影モードをマニュアルに合わせておきます。

撮影モードをマニュアルに合わせたら、シャッター速度をバルブ(Bulb)に設定しましょう。 バルブに合わせると、シャッターボタンを押している間、ずっとシャッターが開いて光が撮像素子に当たり続けます。 たいていのデジタル一眼レフカメラの最長露出時間は30秒ですので、 それ以上露出をかける必要がある星空撮影の場合には、バルブに合わせておきます。

なお、デジタルカメラの機種によっては、 操作ダイアルにバルブ(B)という独立したモードが備え付けられている製品があります。 こうした場合には、そのバルブに合わせて撮影を行います。


絞りの選択

星空撮影時の絞り設定 カメラレンズには、撮像素子に当たる光の量を調整する絞りが取り付けられています。 絞りの値は、F4やF5.6というように、Fと数字で表示されます。 例えば、EF50ミリF1.4レンズの絞りの値は、「F1.4、F2、F2.8、F4、F5.6、F8、F11・・・」 というようになっています。

この絞りの値は√2の乗数になっていて、一段絞る毎に、レンズを通る光の量がおよそ半分になります。 最近はカメラ側で絞り値を操作するので、半絞りの値もデジカメの操作ディスプレイに表示されます。 Fの数値が小さいほど通る光の量が多くなり、全く絞らない状態(F値が最も小さい状態)を『開放絞り』と呼んでいます。

星空は暗いので、レンズの絞りは開放で撮影するのが基本です。 最初は開放絞りにして、星空を撮影してみましょう。 その画像を見て、周辺減光や周辺星像の悪化が目立つ場合には、1段ほど絞りを絞ってみるとよい結果が得られると思います。

なお、レンズの開放絞りの値は、レンズの種類によって異なっています。 開放絞り値が小さいレンズは明るいレンズと呼ばれ、レンズ自体は大きく高価になります。


ホワイトバランスの設定

ホワイトバランスは、太陽光や蛍光灯など様々な光源で照らされた物体の色を、 正確に表現するために備えられている機能です。簡単に言えば、白いモノを白として写し取るための機能です。

このホワイトバランスには、光源に応じて様々な種類が用意されていますが、通常はオートで大丈夫です。 星空撮影の場合も、まずはオートで撮影してみるとよいでしょう。

なお、フィルター換装した天体写真用デジタルカメラを使用する場合、 ホワイトバランスをオート設定で星空を撮影すると、 赤色カブリしたような画像になってしまいます。 撮影後にRAW現像ソフトで補正することも可能ですが、この場合は、 プリセット(マニュアル)に合わせて、事前にホワイトバランスを取っておくと、 後の処理が楽になります。


ISO感度の設定

星空撮影時のISO感度の設定 星空は暗いため、通常の撮影よりもISO感度を上げて撮影を行います。 最近のデジタル一眼レフカメラなら、高感度ノイズが減っているため、ISO1600〜3200を一つの目安にしてみてください。

どのくらいのISO感度が適当かは、星空の撮影方法によって異なります。 デジカメをカメラ三脚に固定して撮影する固定撮影で、星を点像で写したい場合には、 露出時間が限られるため、ISO感度は3200程度に上げておくとよいでしょう。

一方、ポータブル赤道儀を使用した追尾撮影なら、赤道儀が星を追いかけてくれますので、 ISO感度は800前後に下げ、クオリティの高い写真を狙いたいところです。 シチュエーションや撮りたい写真に合わせて、ISO感度を柔軟に調整して撮影してみてください。


色空間

我々が見ている物体の色は、個人によって見え方が若干異なっています。 それを定量的に表すために考え出されたのが、色空間(カラースペース)という考え方で、 デジタルカメラはRGB色空間に基づき、色情報を操作・保存しています。

デジタル一眼レフカメラの色空間設定画面を表示させると、「sRGB」と「AdobeRGB」という二つの色空間を選べるようになっています。 一般的に、AdobeRGBの方が表現できる色の範囲が広く、画像処理に向いているとされています。

どちらに合わせるかは撮影者の好みにもよりますが、撮影したJPEG画像を他人に渡す場合は、 一般的なsRGBの方がよいと思います。 画像処理を施す場合は、AdobeRGBに設定しておくと広い色空間が使用できるので有利です。 ただ現在のところ、AdobeRGB空間を表示できるディスプレイはごくわずかの機種に限られています。


ピクチャースタイル

星空撮影時のピクチャースタイル設定 最近のデジタルカメラには、ピクチャースタイルとかピクチャーコントロールと呼ばれる設定が用意されています。 これは、色相やシャープネス、コントラストに加えて、フィルター効果までをデジタルカメラ内で行うための機能です。

ピクチャースタイルの設定画面を開けると、ポートレートやネイチャーなどの項目が表示され、 それぞれの被写体に応じた設定を、撮影者が手軽に選ぶことができるようになっています。

星空撮影の場合は、シャープネスなどがかからない、ニュートラルや忠実設定をお勧めします。 しかし、画像処理を施さずに仕上げたい場合には、ニュートラルだと色味が寂しい場合もあります。 そのようなときは、ネイチャーモードで撮ってみてはいかがでしょうか。 いろいろ試して、ご自分の好みの設定を見つけてください。

※RAW画像のピクチャースタイルは撮影後、RAW現像ソフトで変更できます。


ノイズリダクション機能

デジタルカメラによる撮影では、露出時間が長くなるにつれて、画像にノイズが増えてきます。 これは長時間ノイズと呼ばれていますが、CCDやCMOSを撮像素子に使っているデジカメでは避けられない問題です。

この長時間ノイズを低減するために、ノイズリダクションという機能が用意されています。 ノイズリダクションをオンにすると、本撮影後にカメラは自動的にシャッターを閉じて、同じ時間だけ露出を開始します。 そして、本撮影からシャッターを閉じて撮影した画像を減算することによって、本撮影画像のノイズを減少させます。

長時間露出する星空撮影ではノイズリダクションは有効な機能ですので、通常はオンで撮影します。 しかし、撮影時間が倍かかってしまうため、天体撮影に慣れた人は、全ての撮影が終わってからノイズ画像だけを別に撮影して、 画像処理ソフトで減算するという方法をとっています。 この方法をダーク減算処理と呼んでいます。 詳しくは画像処理の基礎ページをご覧下さい。


高感度ノイズ低減機能

星空撮影時の高感度ノイズ低減機能の設定 長時間ノイズ以外にも、ISO感度を上げることで生じる高感度ノイズがあります。 これを目立たなくするため、デジカメには高感度ノイズを低減する機能が設けられています。 この低減度合いは、メニューから選択することができます。

星空撮影ではISO感度を通常より上げて撮影するので、この低減機能を「強め」に設定したいところですが、 ノイズ低減のアルゴリズムによっては、星までかき消されてしまう場合があります。 ですので、通常は「弱め」又は「標準」で撮影し、 カメラの特性に応じて調整するのがベストです。


まとめ

長々とデジカメの設定について説明してきましたが、撮影地で最適な設定を忘れたときでも、 星空は暗いということを前提に考えれば、自ずと適した設定が見つかると思います。

デジタルカメラが進化するにつれ、今後も新しい機能が付加されるようになることでしょう。 天体撮影に役立つ新しい機能が見つかったら、こちらのページに追加していきたいと思います。

なお、具体的な星空の撮影方法については、他のページで詳しく説明しています。 左のメニューバーから、ご希望のページを選んでご覧いただければ幸いです。

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