ガイド鏡の支持方法
ガイド撮影を行うときには、赤道儀の追尾状況を監視するガイド鏡が必要になります。 撮影用鏡筒と共にガイド鏡を赤道儀に同架する必要があるのですが、載せ方が悩ましいところです。 ここでは、私や天文仲間のガイド鏡の同架方法を紹介しています。 何かの参考になれば幸いです。
望遠鏡を上下に載せる方法
一番シンプルなのが、右のように望遠鏡を上下に載せる方法です。 下側が撮影に使う主望遠鏡で、上側がガイド鏡です。 人によっては親子亀方法と呼ぶ人もいます。
海外では最も多く用いられている方法で、ほとんどの方がこの方法で撮影しています。 日本でも多くの方が利用している同架方法ですが、 銀塩フィルム時代は下の並列同架方法の方が人気がありました。
この同架方法の欠点としては、ガイド鏡が赤道儀の中心軸から離れるため、 モーメントが大きくなってしまうことです。 そのため、バランスウェイトが余分に必要になり赤道儀への負担が増します。 ですから、ガイド鏡はなるべく軽い製品を使う必要があります。
また、この同架方法には、ガイドマウントを使いづらいという欠点があります。 感度の高い冷却CCDカメラを利用したオートガイダーなら問題ありませんが、 その他のWebカメラを利用したオートガイダーの場合は、星を探すためにガイドマウントが大抵必要となります。 そのような用途では、下の並列同架の方が使い易くなります。
並列同架方法
大きな汎用マッチプレートを使用して、望遠鏡を左右に載せるタイプです。 載せる鏡筒は2本が一般的ですが、人によっては3本以上の望遠鏡を載せることがあります。 1本をガイド鏡に使って、後の2本は撮影に使おうという訳です。 効率的な撮影方法ですが、使用しているデジカメやレンズの明るさが違うと撮影中に混乱することもあります。
日本では以前から人気のある同架方法で、銀塩フィルム時代から天体写真を撮っていた方に人気があります。 私も以前は利用していた同架方法なのですが、最近は上の上下同架方式を利用することが多くなりました。
赤道儀の中心軸からの位置が変わらないことがメリットです。 しかし、望遠鏡左右のバランスが取りづらく、赤緯軸回りで追尾エラーが出ることもあります。 こうしたデメリットを克服するため、 左右にスライディングしてバランスをとり易くしたスライディングプレートも発売されています。
プレートにガイド鏡を取り付けるので、ガイドマウントを操作しやすいという点が、この同架方法の利点です。 Webカメラを使ったオートガイダーで撮影する方に人気がある同架方法です。
その他の同架方法
ガイド鏡の同架方法は、上の二通りが一般的ですが、その他にも皆さん工夫を凝らしてガイド鏡を載せてられます。 その幾つかをご紹介させて頂きましょう。
左の撮影システムでは、バイザック望遠鏡の下に、ガイド鏡を取り付けてらっしゃいます。 こんなところにガイド鏡が付くんだ、と驚きの発想です。 取付にはビクセン製のアリガタ金具を用いていらっしゃいました。
この写真では、ガイドマウントを併用されていますが、感度の高いオートガイダーならアリガタ・アリミゾで直付けも可能でしょう。 これなら赤道儀の回転軸からの距離が減少するため、バランスウェイトは少なくてすみますね。
こちらはガイド鏡と撮影望遠鏡を並列に載せた並列同架方法ですが、 ガイド鏡の視野移動にガイドマウントを使わず、イメージシフト装置を用いています。
イメージシフト装置というのは、望遠鏡の接眼部に取り付けて、視野をシフトする装置のことです。 一般的にオートガイダーの撮像素子は、屈折望遠鏡のイメージサークルに比べてとても小さいので、 オートガイダーの写野内にガイド星がみつからなくても、ガイド鏡の視野内には適当なガイド星があることがあります。 そのガイド星を接眼部をずらすことで、オートガイダーの写野に入れるための装置がイメージシフト装置です。 私も銀塩フィルム時代に使用していた方法です。
ガイド鏡を載せるガイドマウントには微動装置が取り付けられているため、どうしてもガタが発生してしまいます。 こうした時にイメージシフト装置を使えれば、ガタがなくなるので、追尾の失敗が少なくなるというわけです。 イメージシフト装置なら、親子亀方式でもWebカメラオートガイダーを使い易いと思います。
オフアキシスガイドとは
ガイド鏡の同架方法と若干話が逸れますが、オフアキシスガイドと呼ばれているガイド方式もあります。 これは一本の天体望遠鏡だけで、撮影もオートガイドも行ってしまう方法です。 撮影用望遠鏡の写野の隅に写った星をオートガイドに使うので、「Off Axis Guiding(オフアキシスガイド)」という呼び名があります。
オフアキシスガイドを実現するためには、撮影用望遠鏡の光路を撮影用とガイド用に分けなければなりませんので、 光路を分割するアダプターを接眼部に取り付ける必要があります。 このアダプターは、オフアキシスガイダーと呼ばれていて、 右上の写真のような形をしています(下側にデジタル一眼レフカメラ、右側にオートガイダーを取り付けています)。 オフアキシスガイダーの中には、光路を分割するための小さなミラーもしくはプリズムが端部分に入っていて、 これで視野周辺の光を拾って、オートガイダーに光を導いています。
オフアキシスガイドのよい点は、ガイド鏡を用いる必要がないため、赤道儀に載せる機材を軽量化できることです。 また、撮影とガイドに同じ望遠鏡を使うため、ガイドマウントのガタなどの影響がない正確なガイドが見込めるという利点もあります。
魅力的なオフアキシスガイドですが、問題もあります。 まず、オフアキシスガイダーを取り付けためには、撮影望遠鏡にある程度の光路長(いわゆるバックフォーカス)が要求されます。 ですので、どんな望遠鏡でもオフアキシスガイドできるわけではありません。 また、撮影用カメラとオートガイダーのピントを、同時に正確に出るように接眼部の長さを調整する必要があり、 これが思った以上に大変です。
その他、撮影望遠鏡のF値が暗い場合、感度の低いオートガイダーを使うと、ガイド星を見つけるのが困難になります。 光路長が必要なので、レデューサーなどのコンバーションレンズが使えない場合が多いなど、 オフアキシスガイドの実現までにはいろいろな課題があります。
ガイドマウントとは
ガイド撮影のページで紹介していた「ガイドマウント」という装置は、右のようなものです。 カメラ三脚の雲台に微動装置を取り付けたようなもので、この上面にガイド用望遠鏡を取り付けられるようになっています。 上の写真をよく見ると、ガイド鏡の取り付け部分に、このマウントが使われているのがわかると思います。
ガイドマウントは、ガイド鏡の方向を調整するために使用します。ガイド鏡を振って、ガイドに使う星を見つけるわけです。 便利な道具ですが、この部分の強度が低いと、撮影中に動いてしまうことがあります。 ガイド鏡ではしっかり星をガイドしているつもりが、ガイド鏡自体が動いてしまっているということが希に起こります。 こうなると、どんなに正確にガイドしても、撮影した画像では星が流れて写ってしまいます。
これを根本的に改善するには、ガイドマウントを強度の高いものに変えるか、ガイドマウントの使用をやめてしまうしかありません。 残念ながらガイドマウントの選択肢は少ないので、ガイドマウントの使用を中止するのが現実的です。 ガイドマウントを使わず、望遠鏡をプレートに直接取り付けてしまうわけです。 こうなると、ガイドマウントに起因するガタは防げますが、ガイド星を望遠鏡を振って見つけられません。 それをできるようにしたのが、イメージシフト装置というわけです。
なお、オートガイダーに高感度タイプのものを使用し、かつ、F値の明るめの望遠鏡やカメラレンズをガイド鏡に使えば、 イメージシフト装置が無くても大抵ガイド星は見つかります。 これは、現在主流の高感度タイプのオートガイダーは、以前オートガイダーに使われていたWebカメラタイプよりも感度が高いためです。