流星の撮影方法

星空を眺めていると、サッと星が流れることがあります。 流れ星を見ることが出来ただけで、なんだか得をした気分になり、 「流れ星が輝いている間に3回願い事をすると願いが叶う」というジンクスがあるのもうなずけます。

流れ星の撮影は、銀塩フィルム撮影が主流だった頃は難しい面もありましたが、 デジタルカメラの性能向上と共に簡単になってきました。 このページでは、デジタル一眼レフカメラを使った流星の撮影方法を中心に、 簡単な画像処理の方法も含めて紹介しています。


流星とは

流れ星 流星は、宇宙空間を漂う小さな塵や石のようなものが地球の引力に引かれて大気圏に突入し、 それが上層の空気と反応して発光する天体です。 夜空で輝く恒星が流れるわけではありません。

流星の明るさは様々で、特に明るく輝くものは火球と呼ばれます。 また、たいていの流星は上空で燃え尽きてしまいますが、中には物体が大きかったために燃え尽きずに地上まで落ちてくるものもあります。 これらは隕石と呼ばれます。

毎年決まった時期に起こる流星群では、多くの流れ星が見られるので、流星観測・撮影には最適です。 流星群では、ある天空の一点を中心に、そこから流星が四方に飛ぶように見えます。 この点は放射点、もしくは輻射点と呼ばれ、この点が含まれている星座から、流星群の名前が付けられます。 例えば、毎年11月に極大を迎えるしし流星群では、しし座の中から流れ星が飛んでくるように見えます。

いろいろな流星群がありますが、特に有名な流星群は三大流星群と呼ばれています。 三大流星群は、しぶんぎ座流星群、ペルセウス座流星群、そしてふたご座流星群です。 しぶんぎ座という星座は20世紀になくなりましたが、今でも流星群の名前に使われています。


流れ星を撮影する機材

流れ星は、固定撮影で使用しているデジタル一眼レフカメラで撮影することができます。 しかし、流れ星は星と違って輝いている時間が短いため、それに対応した装備や心構えが必要になります。


流れ星は写りにくい

カメラの設定 流れ星は夜空をサッと駆け抜けるので、光っている時間はごく僅かです。 そのため、肉眼で流れ星が見えても、写真には写っていないことが多々あります。

少しでも多くの流れ星を写真に捉えるためには、デジタル一眼レフカメラの感度を上げ、レンズも開放絞り近くで撮影することが必要です。 使用するレンズは、開放F値の明るい広角レンズが理想的です。 もし暗い流れ星まで数多く撮影しようと思えば、開放F値が2より明るいレンズを用意しておきたいところです。

使用するカメラは、明るいレンズが豊富なデジタル一眼レフカメラが入門者に使いやすいでしょう。 最近は、センサーサイズの大きなミラーレスカメラの人気も出てきました。 高価な機種は必要ありませんが、できるだけノイズの少ない機種を用意するとよいでしょう。


ポータブル赤道儀があれば

ポータブル赤道儀 カメラやレンズの他に必要なものは、カメラ三脚です。 カメラ三脚があれば、カメラを固定して流れ星を撮影することができます。

流れ星の撮影では、ISO感度を上げて、開放絞りで撮影することがほとんどです。 そのため、露出時間は30秒前後に収まることが多いので、固定撮影でも星はほぼ点像に写るでしょう。

しかし、流星撮影に小型赤道儀やポータブル赤道儀が利用できれば理想的です。 赤道儀にカメラを載せて星空を撮影すれば、カメラは星を追いかけて動くので、何枚も同じ星座を写すことができます。 流星群では放射点から流れ星が飛ぶことが多いので、ある夜空の一点を構図の中心にして連続撮影することができます。

その他にも、赤道儀を使用すれば、画像処理時に流星を重ね合わせて、一枚の作品に仕上げることができます。 これは固定撮影でも可能ですが、赤道儀を使った追尾撮影の方がより綺麗に仕上がります。 本格的に流れ星の撮影をするなら、ポータブル赤道儀を一台用意してみてはいかがでしょう。


その他に必要な装備

固定撮影や追尾撮影と同じように、レンズフードとカメラのレリーズは用意しておきましょう。 その他に、レンズの曇りを防ぐ夜露防止用のヒーターも欲しいアイテムです。 以下に流れ星撮影に必要な装備をまとめてみます。

カメラ:デジタル一眼レフカメラ、ミラーレス一眼
レンズ:明るい広角レンズ
架 台:カメラ三脚(ポータブル赤道儀があればベスト)
その他:レンズフード、レリーズ、夜露よけヒーター

もちろん、キットレンズでも明るい流れ星なら撮影することができますので、 まずは、お手持ちの機材で撮影してみてはいかがでしょう。 一度実際に撮影してみれば、自ずと必要な機材がわかってくると思います。


いつ流れ星を撮るか

星空の綺麗なところで一晩中星空を見上げていれば、たいていは数個の流れ星を観察することが出来ます。 ですので、晴れていればいつでも流れ星を撮影するチャンスはありますが、 やはり狙い目は流星群の時期です。

毎年ある決まった時期になると、地球が彗星の残したチリの帯を横切るので、 いつもより多くの流れ星を観測することができます。 それが「流星群」と呼ばれている流れ星の時期です。

下の表に流星がたくさん見られる主な流星群をまとめました。 この時期に撮影に行けば、流星を撮影できるチャンスが大きいでしょう。

流星群の名称 極大日 出現期間 出現数(1時間)
しぶんぎ座流星群 1月4日頃 1月1日〜1月7日前後 40前後
みずがめ座η流星群 5月6日頃 4月25日〜5月15日前後 10前後
ペルセウス座流星群 8月13日頃 7月17日〜8月24日前後 50前後
オリオン座流星群 10月21日頃 10月2日〜10月30日前後 40前後
しし座流星群 11月18日頃 11月10日〜11月25日前後 15前後
ふたご座流星群 12月14日頃 12月5日〜12月20日前後 80前後

上の表はあくまで一般的な情報で、流星群の出現数は年によって大きく変わってきます。 例えば2001年のしし座流星群では、1時間に1000個を超える流星が観測されました。 流星群の元となる彗星の動きによって、流れ星の数や見える時期は変わります。 観測の際には、最新の情報を手に入れるようにしましょう。

経験からすると、流星群の極大日を含めた前後3日間が、流星を撮影しやすい時期です。 ただこの時期に月明かりがあると、夜空が明るくなるため、観測・撮影できる流れ星の数が減少します。 月明かりの影響が少ない流星群を狙って、星空の綺麗な場所に出かけると良いでしょう。


デジカメの設定

デジカメの設定 現地に着いてデジタル一眼レフカメラをカメラ三脚に取り付けたら、 カメラの撮影設定を確かめましょう。

星空撮影と同じようにカメラのモードをマニュアル、シャッター速度はバルブに設定します。 次にデジカメのISO感度は、古いデジカメならISO3200、最新の高感度ノイズが少ないカメラなら、ISO6400〜12800に設定しましょう。 レンズの絞り値は、開放絞り(F値が最も小さくなる絞り)に合わせます。

設定が終わったら、ピントを合わせてシャッター速度15秒で星空を試写してみましょう。 試写した画像が暗すぎたら、露出時間を延ばします。 逆に明るすぎる場合には、露出時間を短くします。 星空の綺麗な場所なら、ISO6400、絞りF2で、シャッター速度15秒前後が適正露出になると思います。

撮影場所での適正露出がわかったら、そのシャッター速度と絞り値の組み合わせで撮影しましょう。 なお、デジタル一眼レフカメラには、長時間露出のノイズを低減するノイズリダクション機能がありますが、 流れ星を撮影する際にはオフにしておきましょう。 流れ星はいつ夜空を流れるかが分かりませんので、できるだけ連続して撮影した方が、 流れ星を捉えられる可能性が高くなるためです。

高感度ノイズの低減という機能があるデジカメをお使いの場合は、 「標準」、もしくは「弱く」に設定しておきましょう。 ノイズ低減を「強く」に設定すると、写っている星までもがかき消されてしまう恐れがあります。 以下に、流れ星撮影の設定をまとめます。

画質モード:RAW+JPEG(FINE)
シャッター速度:バルブ(もしくは15秒)
レンズ絞り:開放絞り(星像悪化が気になる場合は1段絞る)
ISO感度:ISO6400〜12800
高感度ノイズ低減:弱
長時間ノイズ低減:オフ


撮影する方向

流れ星が際だった活動をする流星群の時は、流れ星は放射点を中心にして飛ぶように見えます。 そのため基本的には、放射点を中心としてカメラの構図を合わせるとよいでしょう。

ただこのように放射点を中心とした構図にすると、流れ星の見かけ上の長さが短くなり、 迫力に欠けることがあります。 放射点を構図の中心から若干ずらした方が、長い流れ星を捉えられる可能性が高くなります。

と言っても、どこにどれぐらいの明るさの流れ星が流れるかは予測できません。 流れ星を写真に収められるかどうかは、撮影者の運次第とも言えるのです。 カメラの台数が増えれば、それだけ確率が上がるので、2台並べて撮影することも希ではありません。 場合によっては、数台のカメラを一台の赤道儀に載せて写すこともあります。


固定撮影で風景を入れる

固定撮影 地上風景と流れ星を一緒に撮影するなら、カメラ三脚を使った固定撮影が適しています。 気に入った景色を画面下部に入れて構図を決定し、シャッターを切って流れ星が写って来るのを待ちます。

この撮影方法なら最小限の機材で行うことができるので、どなたでも気軽に始めることができます。 ただ星は日周運動しているため、ある一定の星座の方向を長時間連続して撮影する場合には固定撮影は向きません。 このような撮影には赤道儀を使った追尾撮影の方がよいでしょう。

流れ星の固定撮影は、地上風景が印象的でその風景と流れ星を一緒に収めたい場合に最も適していると言えます。


追尾撮影で流星群を撮る

ポータブル赤道儀 追尾撮影には赤道儀が必要になりますが、星を点像で撮影できるので、 流れ星の線が写真の中で目立ちやすく、また、流れ星を肉眼で見たときと同じような印象の写真に仕上げることができます。

追尾撮影を使った流れ星の撮影方法は、星空を写すときと同じです。 ただ、普段よりもISO感度を高めにして、絞りも開放付近で写した方がよいでしょう。 もしカメラを複数台お持ちなら、赤道儀にそれらを載せて、 異なった方向を撮影しておくと流れ星を捉えられる確率が上がります。

1台の赤道儀に複数台のカメラを載せると、いいかげんな構図で撮影してしまいがちですが、 撮影後に見たときに不自然に感じないよう、星々のバランスを考えて構図取りしましょう。 構図合わせの際は、星座の形がよい目安になります。

ペルセウス流星群なら、ペルセウス座と秋の天の川をファインダー内に配置するとバランスがよいと思います。 流れ星はどこに飛ぶか分かりませんが、流れ星が写らなくても星野写真として綺麗に撮ることを心がけることをお薦めします。

赤道儀にはいろいろな種類がありますが、手軽な流星撮影にはポータブル赤道儀が最適です。 もしカメラを2台、3台と載せる場合には、強度が高いポータブル赤道儀を選びましょう。 メーカーによっては、カメラを複数台載せるためのオプションパーツを販売していますので、 このような機器を利用するのもよいと思います。


数多くの流星を撮影する方法

流星雨 2001年のしし座流星群のように、一定時間あたり流星の出現数が非常に多い現象を「流星雨」と呼んでいます。 星空から何本もの流星が降ってくる様子は圧巻で、誰もがこの印象的なシーンを写真に収めたいと思うでしょう。

流星を一枚の写真にたくさん写したいと思ったとき、普通に考えると露出時間をある程度長くした方が、 シャッターが開いている時間が長くなるため、カメラが捉えられる流星の数が増えそうです。 1分よりも10分の露出時間にした方が、その間に流れる流星の数は増えるでしょう。

しかし、高いISO感度のままで、露出時間だけをのばすと、背景が露出オーバーになってしまいます。 それを防ぐには、ISO感度を下げたり、絞り絞って撮影することになりますが、 そうすると、ISO感度が高いときや、絞り開放のときに写っていた暗い流星が、写らなくなってしまいます。 ジレンマですね。

この対策としては、タイマーリモートコントローラーやインターバル撮影機能を使って、連続撮影とよいでしょう。 露出時間を短くしたままで連続撮影を行います。 そして、撮影した後にパソコン上で撮影画像を重ね合わせて、一枚の写真に仕上げます。 これならISO感度や絞り値は同じままですので、暗い流星まで捉えることができます。


パソコン上で重ね合わせる

パソコン上で撮影画像を重ね合わせるというと難しく感じますが、この流れ星の画像処理は簡単です。 画像処理の概念としては下の図の通りで、流れ星が写っているコマを選び、それを画像処理ソフト上で重ね合わせます。

比較明合成

重ね合わせるときは、画像の重ね合わせモードを「比較明」にします。 比較明モードを選ぶと、重ね合わせた各画像の明るい部分だけが最終画像として表れるので、 それぞれの画像に写っている流れ星が最終画像に表れます。 なお、重ね合わせる時には、星の位置がずれないように注意しましょう。

このような重ね合わせによる星空の表現方法は、「比較明合成による星空写真」と呼ばれています。 以前は、Photoshopで一枚一枚画像処理作業していましたが、この撮影方法が広まるにつれ、 比較明合成を自動で行ってくれるフリーソフトウェアが登場しました。

インターネットで検索して、ご自分の好みに合うフリーソフトを探してみてはいかがでしょう。 なお、市販ソフトでこの機能が搭載されているものとしては、アストロアーツ社のステライメージ8があります。


流星痕を忘れずに

流星痕 流星痕は、明るい流れ星が通った後に見られる発光物質です。 この物質は、流れ星が大気の中を通ったときに残した物質が光っているものと考えられています。 右はその流星痕を写した写真です。

この流星痕は毎回見られるものではなく、火球と呼ばれる特に明るい流星が通った後、希に発生します。 発生直後が最も明るく、時間が経つにつれて大気の流れにかき消されてだんだんと見えなくなります。

しかし、流星痕は長いときには数分以上も夜空で輝いていることがありますので、 出現すれば比較的撮影しやすい現象です。 流星を観測しているときに、火球クラスの流星が見えた時は、 その跡に流星痕が残っていないか注意してみてみましょう。


流星撮影のまとめ

最後に流星撮影の要点をまとめてみます。

@デジタル一眼レフカメラと明るい広角レンズがベスト
A固定撮影でも楽しめるが、ポータブル赤道儀があればなおよい
BISOは高めで、レンズの絞りは開放近くにして撮影
C毎年起こる流星群の極大期が流れ星の撮影に最適
D構図は星座の形を目安にする
E数多くの流星を一枚の写真で表現したいときは連続撮影して比較明合成

満天の星空に流れ星が流れると、いつもは静止している星空が動き出したように感じられます。 何人かで「流れ星!あっちに流れたよ〜!」と流星を観測するのも楽しいことでしょう。 野山は夏でも肌寒いことが多いので、防寒対策をしっかりして、 流星の観測と撮影を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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