くじら座 Cetus
くじら座は大きな星座で、秋の南天にどっかりと広がっています。 一等星こそないものの、変光星ミラという天文学上珍しい恒星を持っているので、 天文ファンや天文学者の間では有名な星座です。
くじら座のモチーフになっているクジラは、私たちが普段目にしたり食べたりする鯨とは違っていて、 エチオピアのアンドロメダ王女を食べ殺すために海の神が送った化けクジラのことです。 中世の絵画にこの様子がよく描かれていますが、このクジラの口元には2本の牙があり、大きなライオンのような 顔をしています。爪のある前脚も大きく発達していて、クジラとは別の生き物に見えます。
古くから親しまれていた星座ですので、プトレマイオスの48星座の中にも加えられています。
ギリシア神話の中でのくじら座
古代エチオピアのカシオペア王妃は、娘のアンドロメダ姫の美貌をしきりに自慢します。 あるとき海の神の娘よりも美しいと言ってしまったため、悲劇を生むことになります。
アンドロメダ姫は生け贄として海岸の岩にくくりつけられます。それを襲いに来たのが、このくじら座になった化けクジラです。
化けクジラが海から出現してアンドロメダ姫まであと少しというところまで来たとき、メデューサを退治した帰り道の 勇者ペルセウスが通りかかります。彼は袋からメデューサの首を取り出して化けクジラに見せ、クジラを石に変えてしまいます。 その石になったクジラを哀れに思って空に上げたと言うことです。
くじら座の主な星
メンカル
くじら座のα星がメンカルです。くじら座の鼻先にある星で、3等星の明るさがあります。 星座の中ではβ星のデネブ・カイトスの方が明るいのですが、なぜかα星となっています。
デネブ・カイトス
くじら座の中で最も明るい恒星です。くじら座の尾の場所で輝いている恒星で、「クジラの尾」という 意味があります。天体観測時の目印によく使われる星ですので、覚えておくと便利でしょう。
ミラ
くじら座のo星がミラです。とても有名な長期変光星でミラとは「不思議な星」という意味です。 この星は一年足らずの周期で、肉眼でもよく見える2等星から全く見えない9等星へと明るさの変化を 繰り返します。昔からこの不思議な明るさの変化は気づかれていましたが、初めてその変更の様子が 記されたのは16世紀になってからです。ドイツのアマチュア天文家ファブリシウスが観測したと 言われています。
M77銀河
くじら座の首筋δ星の約1度南東にある明るい銀河で、小口径の望遠鏡でも明るい中心部がよくわかります。 大きな口径の望遠鏡で見ると、周りに淡い光芒が取り巻いているのがわかります。このような小さな 輝いた核を持つ銀河を、セイファート銀河とよんでいます。
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