天体写真の世界 > 神話と星座 > はくちょう座

はくちょう座 Cygnus

はくちょう座の写真 はくちょう座は、夏を代表する星座の一つです。 明るい星も多く、南中すると天頂付近で輝くので、都会の夜空でよく目立つ星座です。

はくちょう座のα星はデネブで、夏の大三角の星にも選ばれている一等星です。 デネブから、白鳥のクチバシで輝くアルビレオへと続く十文字の星の並びは、 南半球で輝く南十字星と似ていることから、「北十字」と呼ばれ、親しまれています。

はくちょう座は、その十字の形から、キリスト教でもしばしば取り上げられる星座で、 「キリストの十字架」と呼ばらることもあります。 また、北十字は、宮沢賢治の物語「銀河鉄道の夜」でも登場しています。 はくちょう座の十字の星の並びは、昔から多くの人の目に留まったということでしょう。

はくちょう座はプトレマイオスの48星座の中にも登場しています。


ギリシア神話でのはくちょう座

はくちょう座になった白鳥は、ギリシア神話の中では、大神ゼウスが変身した姿と言われたり、 エリダヌス川に落ちた親友を探す、キクヌスの姿だと伝えられたりしています。

スパルタの王妃レダは、たいへん美しい女性として知られていました。 そのレダに惹かれた大神ゼウスは、白鳥になってレダへと近づき、想いを成就させます。 この時の白鳥が天に上げられ、はくちょう座になったということです。

ところで、ゼウスがレダの元を去った後、レダは二つの卵を産み落とします。 この二つの卵からは、それぞれ双子が生まれます。

一つの卵からは、ふたご座となったカストルとポルックスの兄弟が生まれました。 そしてもう一方の卵からは、後にトロイア戦争の原因になった美女、ヘレネとクリュテムストラの姉妹が生まれました。 ゼウスがレダの元に行かなければ、トロイア戦争も勃発しなかったのかもしれません。


はくちょう座の主な星

デネブ

デネブは、はくちょう座のα星で1.3等級の白い星です。 一等星の中では明るい星ではありませんが、実際は太陽の約20倍の大きさを持つ、とても巨大で明るい星です。

夏の大三角を構成している他の星(こと座のベガ、わし座のアルタイル)と比べると、 デネブは特に大きく、明るく感じられませんが、これはデネブが他の二つの星よりもずっと遠くに存在しているためです。 もしデネブをベガと同じ距離に持ってくると、 約マイナス7等級となり、金星よりもずっと明るく輝くと言われています。

アルビレオ

アルビレオは、はくちょう座のクチバシで輝く2重星です。 肉眼では二つの星を分離できませんが、天体望遠鏡で覗くと、 オレンジ色の星とエメラルド色の星が並んで輝いているのがわかります。

アルビレオの輝きは天上の宝石とも呼ばれ、宮沢賢治の銀河鉄道の夜でも登場しています。 是非機会があれば、天体望遠鏡でアルビレオをご覧になってください。


双眼鏡や天体望遠鏡で見るはくちょう座

北アメリカ星雲

はくちょう座は夏の天の川の中に位置しているため、数多くの散光星雲が輝いています。 中でも有名なのが、北アメリカ星雲です。 写真に撮ると、北アメリカの形そっくりに写ることから天体写真ファンに人気がある天体です。

写真写りは良好な星雲ですが、人間の眼の感度が低い波長で輝いているため、 肉眼ではほとんど確認することができません。 観望よりも写真撮影が面白い天体と言えます。

ペリカン星雲

北アメリカ星雲の直ぐ隣で輝いているのがペリカン星雲です。 その名の通り、ペリカンそっくりな形をした星雲で、天体写真撮影の被写体として人気があります。 淡いため肉眼では見えませんが、機会があれば是非撮影してみてはいかがでしょうか。

M29 散開星団

はくちょう座には、21個の散開星団がありますが、メシエ天体に選ばれているのは、M29とM39だけです。 M29は、はくちょう座のγ星の直ぐ隣に位置している散開星団です。 双眼鏡で見ると、星がボンヤリ集まったように見えます。 天体望遠鏡を使うと10個ほどの星が集まっている様子が確認できますが、 小型の星団のため、少々寂しい眺めです。

M39 散開星団

M39はM29に比べて大きな散開星団のため、双眼鏡でも天の川の微恒星を背景にして、 星が集まっている様子が分かり、なかなか美しい眺めを楽しめます。 天体望遠鏡を使うと30個ほどの星が見えてきて、一層興味を引き立てられます。

星座写真ギャラリーのはくちょう座の写真のページへ